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訴訟告知の費用は誰が負担?法務担当者が知るべき内訳と対応の流れ

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自社が関わる訴訟で「訴訟告知」の通知を受けた、あるいは実施を検討している企業の担当者にとって、関連する費用は重要な関心事です。この手続きにかかる費用や誰が負担するのかを正確に理解しないまま進めると、予期せぬコストが発生したり、将来的な法的リスクを見過ごしたりする可能性があります。この記事では、訴訟告知の手続きにかかる実費や弁護士費用、さらには訴訟参加に伴う費用負担の原則について、告知する側と受ける側の両方の視点から詳しく解説します。

訴訟告知とは?目的と法的効果

訴訟告知制度の目的と概要

訴訟告知とは、訴訟の当事者が、その訴訟の結果に利害関係を持つ第三者へ訴訟が係属中であることを通知する制度です。この制度は、二重敗訴のリスク回避という当事者の利益保護と、関連する紛争を一度に解決することを目的としています。

訴訟告知制度の主な目的
  • 利害関係を持つ第三者に訴訟へ参加する機会を与える
  • 告知者が敗訴した場合に生じる不利益(二重敗訴)を回避する
  • 関連する紛争を統一的かつ効率的に解決する

具体例として、保証人が債権者から保証債務の履行を求められた際に、主債務者へ訴訟告知をするケースが挙げられます。もし保証人が敗訴して支払った後、主債務者に求償しようとしても、主債務者から「主債務は存在しない」と主張されると、保証人は二重の不利益を被ります。訴訟告知は、このような事態を防ぐための法的な仕組みです。

対象となる利害関係者と要件

訴訟告知の対象は、訴訟の結果について法的な利害関係を有する第三者に限定されます。無関係な第三者を訴訟に巻き込むことはできません。 訴訟告知を行うためには、以下の要件を満たす必要があります。

訴訟告知の主な要件
  • 現在の訴訟が裁判所に係属中であること
  • 告知者が訴訟の当事者、独立当事者参加人、補助参加人などであること
  • 被告知者が、訴訟の結果によって自己の法的な地位に影響を受ける可能性があること

例えば、不動産の買主が、真の所有者を名乗る第三者から所有権の返還を求める訴訟を起こされたとします。この場合、買主が敗訴すれば売主に対して損害賠償を請求する可能性があるため、売主は法的な利害関係者に該当します。

主要な法的効果「参加的効力」とは

訴訟告知の最も重要な法的効果は、被告知者に対して「参加的効力」が生じることです。参加的効力とは、告知者が敗訴した場合、その判決の効力が被告知者にも及ぶという強力な拘束力を意味します。 この効力は、被告知者が実際に訴訟に参加したかどうかにかかわらず発生します。訴訟に参加する機会が与えられた以上、参加しなかったとしても法的には「参加できたのにしなかった」と見なされるためです。これにより、後日、告知者と被告知者との間で新たな訴訟が起きた際に、被告知者は前訴の判決が不当であると主張することができなくなります。この効力は、判決の主文だけでなく、その結論を導き出す上で重要な事実認定や法律判断にも及びます。 この参加的効力により、告知者は二重敗訴のリスクを回避できる一方、被告知者にとっては、訴訟告知を放置すると将来の裁判で極めて不利な立場に置かれるリスクがあります。

訴訟告知の手続きと申立費用

申立てから通知までの手続きフロー

訴訟告知は、告知者が裁判所に書面を提出し、裁判所を通じて被告知者に通知されるという公的な手続きで進められます。これにより、通知の事実と時期が客観的に証明され、法的な効果が確実に発生します。

訴訟告知の申立てから通知までの流れ
  1. 告知者は「訴訟告知書」の正本(裁判所用)、副本(被告知者用)、謄本(相手方当事者用)を作成する。
  2. 作成した訴訟告知書を、訴訟が係属している管轄の裁判所に提出する。
  3. 裁判所は提出された書面を審査し、要件を満たしているか確認する。
  4. 裁判所書記官が、被告知者に対して訴訟告知書の副本を「特別送達」という郵便で送達する。
  5. 同時に、相手方当事者にも訴訟告知書の謄本が送付される。

申立書作成と提出時のポイント

訴訟告知書を作成する際は、被告知者が訴訟への参加の要否を適切に判断できるよう、告知の理由訴訟の程度を具体的かつ明確に記載することが重要です。

訴訟告知書に記載すべき重要事項
  • 告知の理由: 現在の訴訟内容と、その結果によって告知者と被告知者間にどのような法的紛争が生じる可能性があるかを明記します。(例:敗訴した場合は損害賠償請求を行う予定である旨など)
  • 訴訟の程度: 訴訟が係属している裁判所、事件番号、現在の審理段階、次回期日の予定など、訴訟の進行状況を記載します。

実務上、訴状に対する答弁書が提出され、ある程度争点が明確になった段階で提出するのが効果的です。

申立てにかかる実費(印紙・郵券代)

訴訟告知の申立て自体に、裁判所へ支払う手数料(収入印紙)は不要です。これは、訴訟告知が新たな訴えの提起ではなく、係属中の訴訟に付随する手続きと位置づけられているためです。 ただし、裁判所が被告知者へ書類を送達するための実費として、郵便切手(予納郵券)を納める必要があります。費用は被告知者の人数などによって異なりますが、一般的には数千円程度です。手続きを円滑に進めるため、事前に管轄の裁判所のウェブサイトや電話で必要な郵便切手の金額と金種を確認しておくとよいでしょう。

訴訟告知手続きを弁護士に依頼する場合の費用

すでに訴訟代理を依頼している弁護士に訴訟告知手続きを依頼する場合、多くは追加の着手金なしで対応してもらえます。訴訟告知は、本案訴訟を遂行する上での付随的な活動と見なされることが多いためです。 ただし、事案が複雑で、利害関係者の調査に別途手間がかかる場合など、当初の委任契約の範囲を超えると判断されれば、数万円から十数万円程度の追加費用が発生する可能性もあります。いずれの場合も、書類送達のための郵便切手代などの実費は別途請求されます。依頼する際は、事前に弁護士との委任契約の内容を確認し、追加費用の有無を明確にしておくことが重要です。

立場別の対応と費用リスク

【告知者側】行うメリットと判断基準

訴訟告知を行う最大のメリットは、二重敗訴のリスクを回避し、将来の求償や損害賠償請求を確実にすることです。しかし、デメリットも存在するため、総合的な判断が求められます。

項目 内容
メリット 参加的効力により、後の訴訟で有利な立場を確保できる。
関連紛争を一度に解決できる可能性がある。
後訴での立証活動の負担が軽減される。
デメリット 被告知者が補助参加すると、訴訟の進行が複雑化・長期化する可能性がある。
(リスク) 被告知者が提出した証拠が、自社に不利に働くことがある。
取引先である被告知者とのビジネス上の関係が悪化する懸念がある。
訴訟告知のメリットとデメリット(告知者側)

訴訟告知を行うかどうかの判断は、これらのメリットとデメリットを比較衡量し、第三者への責任追及の可能性やビジネス上の影響などを総合的に考慮して決定すべきです。

【被告知者側】受けた場合の対応と選択肢

訴訟告知を受けた場合、法的に参加を強制されるわけではありませんが、参加的効力が及ぶため、慎重な対応が求められます。主な選択肢は「訴訟に参加する」か「参加しない」の2つです。

選択肢 メリット デメリット(リスク)
訴訟に参加する 自己に有利な主張や証拠を提出し、敗訴を防ぐ活動ができる。 弁護士費用や実費などのコストが発生する。
(補助参加) 将来、責任を追及されるリスクを低減できる。 参加した結果、かえって不利な事実が認定される可能性がある。
参加しない 当面の費用や労力の負担がない。 告知者が敗訴した場合、その不利な結果をそのまま受け入れることになる。
(静観する) 後日、求償などを受けた際に前訴の判決内容を争うことができない。
訴訟告知を受けた場合の選択肢と影響

どちらを選択するかは、自己の責任が問われる可能性の高さや、参加によって判決を覆せる見込みなどを冷静に分析し、決定する必要があります。

訴訟参加が費用負担に与える影響

被告知者が補助参加人として訴訟に参加する場合、それに伴う費用は自己負担が原則です。 主な費用として、弁護士に依頼するための着手金や報酬金、裁判所に提出する書面作成の費用などが挙げられます。これらの費用は、原則として相手方や告知者に請求することはできません。 さらに、参加した側が最終的に敗訴した場合は、相手方が負担した訴訟費用(印紙代や郵券代など)の一部を負担するよう、裁判所から命じられるリスクもあります。訴訟参加は、将来のリスクを回避するための有効な手段ですが、確実な費用負担と追加のリスクを伴うことを理解した上で決断する必要があります。

訴訟告知が取引先との関係に与える影響と配慮

取引先に対して法的手続きである訴訟告知を行うことは、ビジネス上の信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。裁判所から公式な書面が届けば、相手は警戒心や不信感を抱きかねません。 法的なリスク回避を優先するあまり、コミュニケーションを怠ると、一方的に責任を押し付けられたと受け取られるおそれがあります。可能であれば、訴訟告知を行う前に、なぜこの手続きが必要なのかを丁寧に説明し、理解を求める配慮が重要です。法務的な判断と、ビジネスパートナーシップの維持とのバランスを取ることが求められます。

訴訟費用負担の基本原則

訴訟費用と弁護士費用の違い

民事訴訟で発生する費用は、「訴訟費用」と「弁護士費用」に大別されます。両者は性質や負担ルールが異なるため、正確に区別して理解することが重要です。

項目 訴訟費用 弁護士費用
定義 裁判手続きの利用に直接必要な公的な費用 代理人弁護士に支払う私的な報酬
主な内容 収入印紙代、郵便切手代、証人の日当・旅費など 着手金、報酬金、相談料、日当など
負担原則 敗訴者負担が原則 各自自己負担が原則
訴訟費用と弁護士費用の違い

訴訟費用の主な内訳と目安

訴訟費用は、訴訟の目的価額(請求額)や当事者の数などに応じて変動します。

訴訟費用の主な内訳
  • 収入印紙代: 訴状に貼付する手数料。請求額に応じて金額が決まります。(例:請求額300万円の場合2万円)
  • 郵便切手代(予納郵券): 訴状などの書類送達費用。被告1名の場合で6,000円前後が目安です。
  • 証人の日当・旅費: 証人尋問を行う場合に発生する実費です。
  • その他: 書類の作成提出費用や鑑定費用などがかかる場合もあります。

これらの費用は、原則として訴訟を提起する原告が最初に予納する必要があります。

敗訴者負担の原則と例外ケース

日本の司法制度では、訴訟費用は敗訴者が負担し、弁護士費用は各自が自己負担するのが大原則です。 訴訟費用については、裁判で負けた側に負担させるのが公平と考えられていますが、弁護士費用まで敗訴者負担にすると、費用の懸念から裁判を起こすことをためらう人が増えかねないためです。一部のみ勝訴した場合は、裁判所が判断して負担割合を定めます。 ただし、例外として、交通事故や労働災害といった不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では、損害額の1割程度を目安に、弁護士費用の一部を損害として相手方に請求することが認められる場合があります。

訴訟告知に関するよくある質問

Q. 訴訟告知を受けたら、必ず参加すべきですか?

訴訟に参加する法的な義務はありません。参加するかどうかは、被告知者の自由な判断に委ねられています。 ただし、参加しなかった場合でも、告知者が敗訴すればその判決の効力(参加的効力)はあなたに及びます。その結果、後日、告知者から損害賠償などを請求された際に、前訴の判決内容を争うことができなくなるという重大な不利益が生じる可能性があります。

Q. 訴訟告知を無視するとどうなりますか?

訴訟告知を無視すると、あなたが持っている有利な証拠や主張が裁判所に提出されないまま、告知者に不利な形で審理が進む可能性があります。 その結果、告知者が敗訴すると、参加的効力によってあなたもその判決に拘束されます。後日、告知者から求償訴訟を起こされた際に、「前の裁判の判断は間違っていた」と反論することが一切できなくなり、極めて不利な立場に置かれることになります。

Q. 手続きを弁護士に依頼した費用は請求できますか?

原則として請求できません。訴訟告知への対応や訴訟参加のために弁護士に支払った費用は、自己の権利を守るためのコストとして、各自が負担するのが日本の法制度の原則です。 不法行為に基づく損害賠償請求など、ごく一部の例外的なケースを除いて、弁護士費用を相手方や告知者に請求することは認められていません。

Q. 訴訟に参加した場合の費用負担について教えてください。

補助参加人として訴訟に参加した場合、まず自身の弁護士費用が自己負担で発生します。それに加えて、手続きに必要な訴訟費用(印紙代、郵券代など)も生じます。 さらに、参加した側が最終的に敗訴した場合は、相手方が負担した訴訟費用の一部を負担するよう裁判所から命じられるリスクもあります。参加によって得られる利益と、発生するコストやリスクを比較検討することが重要です。

まとめ:訴訟告知の費用と対応を理解し、法的リスクを回避する

訴訟告知は、二重敗訴のリスクを回避するための重要な法的手続きです。申立て自体に手数料はかかりませんが、郵便切手代などの実費や、対応を弁護士に依頼する費用が発生し、告知を受けた側が訴訟に参加する場合も原則としてその費用は自己負担となります。訴訟告知を行うか、あるいは受けた場合にどう対応するかは、参加的効力による将来の法的リスクと、発生する費用、そして取引先とのビジネス上の関係性を総合的に比較検討して判断することが肝要です。訴訟告知を検討している、または通知を受けた場合は、まず自社の法的な利害関係や潜在的なリスクを整理し、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。本記事で解説した内容はあくまで一般的な原則であり、個別の事案に応じた最適な対応については、必ず専門家にご相談ください。

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