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DV被害から身を守る接近禁止命令とは?申立ての要件と手続きの流れを解説

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配偶者等からの暴力や脅迫に直面し、ご自身の安全を確保するために裁判所の「接近禁止命令」を検討している方もいるでしょう。この強力な法的措置は、加害者のつきまとい等を禁じ、平穏な生活を取り戻すための重要な手段ですが、申立てには厳格な要件や手続きが定められています。どのような証拠を集め、どう手続きを進めればよいのか、不安を感じることもあるかもしれません。この記事では、接近禁止命令の申立てが認められる条件、具体的な手続きの流れ、必要な準備、そして命令の実効性を高めるポイントまでを網羅的に解説します。

接近禁止命令の基本

接近禁止命令とは何か

接近禁止命令とは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」に基づき、裁判所が加害者に対して被害者への接近を法的に禁じる強制的な命令です。この命令は、身体的暴力や生命・身体への脅迫から被害者の安全を守り、平穏な生活を取り戻すことを目的としています。自宅や勤務先付近のつきまといや徘徊を禁止し、違反した場合には刑事罰が科されるため、加害者に対する強い抑止力として機能します。

保護命令との関係性と位置づけ

接近禁止命令は、裁判所が発令する「保護命令」という制度の枠組みに含まれる、最も中核的な命令です。保護命令は被害者の安全を確保するための複数の命令の総称であり、接近禁止命令はその基本となります。他の命令は、接近禁止命令が発令されていること、または同時に発令されることを前提として付随的に出される仕組みになっています。

保護命令の種類
  • 被害者への接近禁止命令(すべての命令の基本)
  • 被害者への電話等禁止命令
  • 被害者の同居の子への接近禁止命令
  • 被害者の親族等への接近禁止命令
  • 住居からの退去等命令

命令によって禁止される行為の種類

接近禁止命令によって禁止される行為は、加害者が被害者の生活圏内に物理的に近づくことです。これにより、被害者に与える恐怖や精神的苦痛を取り除き、安全を確保します。一方で、電話やメールといった非物理的な接触を防ぐには、別途「電話等禁止命令」などを申し立てる必要があります。

接近禁止命令で禁止される主な行為
  • 被害者の住居や勤務先、その他通常所在する場所の周辺をはいかいすること
  • 被害者の進路に立ちふさがったり、尾行したり、執拗につきまとうこと

申立てが認められる要件

申立てができる対象者(配偶者・恋人等)

接近禁止命令の申立ては、法律上の配偶者に限らず、事実婚や同棲していた交際相手など、生活の本拠を共にしていた関係も対象となります。婚姻届の有無にかかわらず、密接な関係性における暴力を広く防止するためです。

申立ての対象となる関係性
  • 法律上の配偶者(別居後の元配偶者を含む)
  • 事実婚の相手方(関係解消後の元相手方を含む)
  • 生活の本拠を共にする交際相手(同棲していた恋人など)

※同棲経験のない交際相手からの暴力は対象外となり、ストーカー規制法など別の法的手段を検討する必要があります。

認められるための2つの法的要件

接近禁止命令が裁判所に認められるには、以下の2つの法的要件を客観的な証拠に基づいて満たす必要があります。これは、相手方の行動の自由を制限する強力な命令であるため、厳格な審査が行われるからです。

認められるための2つの法的要件
  1. 過去に配偶者等から身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた事実があること。
  2. 今後、さらなる暴力等によって生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められること。

警察等への事前の相談実績

接近禁止命令を申し立てる際は、原則として、事前に警察や配偶者暴力相談支援センターへ被害について相談しておくことが求められます。公的機関への相談実績は、被害の深刻性や切迫性を裏付ける客観的な証拠となり、裁判所の判断を後押しします。緊急の事情で事前相談ができなかった場合は、公証人が認証した申述書を代わりに提出する必要がありますが、時間と費用がかかります。したがって、事前相談は手続きを円滑に進める上で非常に重要です。

申立て手続きの具体的な流れ

①専門機関への相談

まず、警察の生活安全課や、各自治体が設置する配偶者暴力相談支援センターへ相談します。この相談記録は、申立ての要件を満たすだけでなく、緊急時の安全確保に関する助言や支援を受ける上でも重要です。

②裁判所への申立て

次に、管轄の地方裁判所へ接近禁止命令の申立書と証拠を提出します。管轄は、相手方の住所地、申立人の住所地、または暴力が行われた場所のいずれかです。申立書には暴力の状況や危険性を具体的に記載し、診断書や写真などの客観的証拠を添付します。

③審尋(相手方の意見聴取)

申立てが受理されると、原則として裁判所が相手方を呼び出し、言い分を聞く審尋が行われます。これは、相手方にも反論の機会を与えるための手続きです。被害者の安全に配慮し、申立人が審尋に同席する必要はなく、加害者と顔を合わせることはありません。緊急性が非常に高い場合は、審尋を経ずに命令が発令されることもあります。

④保護命令の発令

審理の結果、要件を満たすと裁判所が判断すれば、相手方に対して接近禁止命令が発令されます。命令は、相手方に決定書が送達された時点、または審尋期日で直接言い渡された時点から直ちに効力を生じます。発令と同時に警察にも通知され、被害者の安全確保体制が強化されます。

申立てに必要な準備

申立てに必要となる書類

申立てにあたっては、申立書に加えて、被害の事実を客観的に証明する書類を準備することが不可欠です。裁判所は提出された書面証拠に基づいて判断するため、証拠の説得力が結果を大きく左右します。

主な必要書類の例
  • 接近禁止命令申立書(正本・副本)
  • 当事者の関係を証明する書類(戸籍謄本、住民票など)
  • 暴力や脅迫を立証する証拠(診断書、怪我の写真、録音データ、メールなど)
  • 警察や支援センターへの相談実績を証明する資料
  • (事前相談がない場合)公証人が認証した申述書
  • (子や親族への接近禁止も求める場合)その子や親族の同意書

申立てにかかる費用の目安

申立て自体にかかる費用は比較的少額ですが、手続きを弁護士に依頼する場合は別途費用が発生します。経済状況に応じて、法テラスの民事法律扶助制度を利用することも検討できます。

費用の種類 内容と目安
裁判所実費 収入印紙代(1,000円)、予納郵便切手代(数千円程度)など。合計で1万円未満が一般的です。
弁護士費用 相談料、着手金、報酬金など。総額で数十万円程度が目安となります。
申立て費用の内訳と目安

命令の効力と期間

命令の有効期間と更新手続き

接近禁止命令の有効期間は、発令日から6ヶ月間と定められています。ただし、被害者の申立てにより、最長1年間まで更新することができます。これは、被害者が生活を再建するための時間を確保しつつ、加害者の行動の自由を無期限に制限することを避けるための期間です。期間が満了すると効力は自動的に失われるため、危険が続く場合は期間満了前に延長のための手続きを検討する必要があります。

再申立てによる期間延長

1年間の有効期間が経過した後も危険が続く場合、再度の申立てを行うことで、実質的に期間を延長できます。自動更新の制度はないため、新たな申立てとして再び裁判所の審査を受ける必要があります。その際は、最初の命令発令後も危険が継続していることを示す新たな証拠を提出し、改めて警察などへの相談実績を作ることが重要です。命令の効力に空白期間が生じないよう、計画的に手続きを進めることが求められます。

命令の取消し手続き

発令後、状況の変化により命令の必要性がなくなった場合は、申立てによって取り消すことが可能です。申立人(被害者)はいつでも取消しを申し立てられます。一方、相手方(加害者)から取消しを求めるには、申立人が取消しに同意している場合や、発令から3か月以上経過していることなど、厳格な条件を満たす必要があり、加害者の一方的な意思で取り消すことはできません。

命令違反への対処法

違反した場合の罰則

接近禁止命令に違反した加害者には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という重い刑事罰が科されます。この罰則は、命令の実効性を確保し、加害者の危険な行動を強力に抑止するためのものです。実際に命令違反で逮捕・起訴されるケースは少なくありません。

違反を発見した際の対応方法

万が一、加害者が命令に違反して接近してきた場合は、冷静かつ迅速に行動することが命を守る上で極めて重要です。絶対に直接対峙してはいけません。

命令違反を発見した際の対応手順
  1. 直ちにその場を離れ、店舗や交番など安全な場所に避難する。
  2. 躊躇なく警察に110番通報し、保護命令が出ている事実と現在の状況を伝える。
  3. 安全が確保された状況であれば、違反行為の様子をスマートフォンなどで撮影・録画し、証拠を確保する。

命令の実効性を高めるための警察との連携

命令の発令後も、所轄の警察署と緊密に連携することが実効性を高める鍵となります。命令が発令されたことを被害者自身からも警察に伝え、緊急連絡先や加害者の車両情報などを共有しておくことで、自宅周辺のパトロール強化など、より効果的な安全確保措置を講じてもらいやすくなります。

申立て前に知るべき注意点

証拠の収集と準備の重要性

申立てを成功させるには、暴力や脅迫の事実を裏付ける客観的な証拠を、事前にどれだけ収集・準備できるかが決定的に重要です。裁判所は申立人の主張に加え、証拠に基づいて危険性を判断します。

収集すべき証拠の具体例
  • 暴行による怪我の診断書
  • あざや傷跡など、怪我の状態を撮影した写真(日付がわかるように)
  • 脅迫的な内容が記録された音声データ動画
  • 脅迫や暴言を含むメール、LINE等のメッセージ履歴
  • 壊された家具や衣服などの写真

相手に現住所を知られない工夫

申立て手続きにおいて、避難先である現在の住所を加害者に知られないよう、細心の注意が必要です。申立書の副本は相手方にも送られるため、不用意に現住所を記載すると危険を招きます。申立書には元の同居時の住所や住民票上の住所を記載し、証拠書類に含まれる現住所は黒塗り(マスキング)して提出します。また、住民票の閲覧制限の手続きも併せて行っておくべきです。

申立てが認められにくいケースと対策

客観的証拠が乏しい場合や、最後の暴力から長期間が経過している場合は、現在の危険性が低いと判断され、申立てが認められにくくなることがあります。このような状況を避けるための対策が必要です。

認められにくいケース 対策
暴力等を裏付ける客観的証拠が乏しい 診断書や写真、録音データなど、あらゆる客観的証拠を可能な限り収集・提出する。
最後の暴力から長期間が経過している 直近に受けた脅迫的な言動や、つきまとい行為など、危険性が現在も継続していることを示す証拠を追加で提出する。
申立てが認められにくいケースとその対策

よくある質問

離婚後でも元配偶者に申立てできますか?

はい、離婚後でも申立ては可能です。法律では、婚姻中の暴力に起因し、離婚後も引き続き危害を加えられる危険がある被害者も保護の対象としています。婚姻中の暴力の事実と、離婚後の現在も重大な危害を受けるおそれが高いことを証明できれば、元配偶者に対しても命令は発令されます。

街で偶然会った場合も違反になりますか?

いいえ、街中などで本当に偶然遭遇しただけでは、直ちに命令違反とはなりません。命令が禁じているのは、加害者が意図的につきまとったり、はいかいしたりする行為です。ただし、偶然の遭遇をきっかけに後を追ってきたり、話しかけてきたりした場合は、その時点で意図的なつきまとい行為とみなされ、命令違反に該当します。

相手の意思で命令は取り下げられますか?

いいえ、加害者側の一方的な意思で命令を取り下げることはできません。命令の取消しは、被害者である申立人の安全が確保されることが大前提です。加害者から取消しを求めるには、申立人本人が取消しに明確に同意しているなど、法律で定められた極めて厳格な条件を満たす必要があり、加害者の都合で自由に解除できる仕組みにはなっていません。

まとめ:接近禁止命令の申立てで、ご自身の安全を確保するために

この記事では、DV防止法に基づく接近禁止命令について、その要件から手続き、実効性に至るまでを解説しました。この命令は、加害者の接近を法的に禁じ、被害者の安全と平穏な生活を守るための非常に強力な制度です。申立てが認められるためには、過去の暴力や脅迫の事実と、将来にわたる危険性を客観的な証拠で示すことが不可欠となります。判断の軸となるのは、診断書や録音データなどの証拠をどれだけ準備できるかと、警察など公的機関への事前相談です。もしご自身の状況で申立てを検討しているなら、まずは安全を確保した上で、最寄りの警察や配偶者暴力相談支援センターに相談することから始めてください。法的手続きに不安がある場合は、弁護士などの専門家の助力を得ることが、確実な解決への近道となります。

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