法人破産の手続きと流れを解説|費用・期間・注意点まで
自社の経営状況が悪化し、会社の存続が困難になったとき、冷静に次の行動を判断するためには法的な手続きに関する正確な知識が不可欠です。会社の倒産には、事業を清算する方法と再建を目指す方法があり、それぞれに複数の選択肢が存在します。この記事では、会社の倒産手続き全体の種類と特徴を整理し、特に選択されることの多い「法人破産」について、その具体的な流れや費用、注意点を8つのステップで詳しく解説します。
会社の倒産手続きの種類と選択肢
会社の財産を清算する「清算型」手続き(破産・特別清算)
会社の事業再建が困難な場合に、会社の財産をすべて現金化して債権者に分配し、最終的に会社を消滅させる手続きを清算型倒産手続きといいます。これには、主に「破産手続」と「特別清算手続」の2種類があります。
| 手続き | 根拠法 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 破産手続 | 破産法 | 全ての法人・個人 | 裁判所が選任した破産管財人が財産を管理・換価し、債権者に公平に配当します。倒産手続きの基本形です。 |
| 特別清算手続 | 会社法 | 解散した株式会社 | 破産より簡易・迅速な手続きですが、協定案などについて債権者の同意が必要です。同意が得られない場合は破産へ移行します。 |
破産手続は、支払不能または債務超過の状態にあるすべての債務者が利用できる基本的な手続きです。一方、特別清算手続は、解散した株式会社に限定され、債権者の協力が得られる場合に、より簡易かつ低コストで手続きを進められる点が特徴です。
事業の再建を目指す「再建型」手続き(民事再生・会社更生)
事業を継続しながら会社の立て直しを目指す手続きを再建型倒産手続きといい、「民事再生手続」と「会社更生手続」が代表的です。清算型とは異なり、会社の財産を維持しつつ負債を圧縮し、経営の再建を図ります。
| 手続き | 根拠法 | 主な対象 | 経営陣の処遇 | 担保権の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 民事再生手続 | 民事再生法 | 中小企業 | 原則として経営を継続します(DIP型)。 | 整理の対象外であり、権利行使を制限できません。 |
| 会社更生手続 | 会社更生法 | 大規模な株式会社 | 原則として退任し、更生管財人が経営権を掌握します。 | 整理の対象となり、権利行使が制限されます。 |
民事再生手続は、従来の経営陣が主体となって再建を進める柔軟な手続きですが、担保権者の権利を制限できないという制約があります。これに対し、会社更生手続は、裁判所が選任した更生管財人が主導する強力な手続きで、担保権を含むすべての債権を整理の対象とすることができます。
破産と民事再生の選択における判断基準
破産と民事再生のどちらを選択するかは、事業の再建可能性や資金繰りの状況などを総合的に考慮して決定されます。最も重要な基準は、事業を清算するよりも再建した方が、債権者に対してより多くの返済が見込めるかという事業の継続価値の有無です。
以下に、民事再生を選択する場合の主な判断要素を挙げます。
- 事業に収益性があり、債務が圧縮されれば黒字化が見込めること
- 再建計画の実現可能性が高いこと
- 経営者に事業再建への強い意欲と能力があること
- 手続き中の運転資金(スポンサー支援など)を確保できる見込みがあること
- 手続きに必要な高額の予納金を準備できること
一方で、以下のような状況では、事業継続が困難と判断され、破産手続きを選択せざるを得ないことが多くなります。
- 恒常的な赤字で事業の継続価値が見いだせない場合
- 債権者の数が多く、再建計画への同意を得ることが困難な場合
- 既に訴訟や強制執行が多発し、債権者との信頼関係が破綻している場合
最終的な判断は、会社の状況や経営者の意向を踏まえ、専門家である弁護士と相談の上、客観的に行うことが重要です。
法人破産手続きの具体的な流れ【8ステップで解説】
ステップ1:弁護士への相談と受任契約
会社の経営状況が悪化し、支払不能または債務超過に陥った場合、できる限り早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。早期の相談は、財産の散逸や取引先への被害拡大を防ぎ、適切な手続きを選択するために不可欠です。
相談を円滑に進めるため、以下の資料を準備しておくとよいでしょう。
- 直近2~3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書など)
- 資産と負債の状況がわかる一覧表
- 商業登記簿謄本や定款
- 従業員名簿や賃金台帳
- 主要な契約書(不動産賃貸借契約書、リース契約書など)
弁護士と方針が合意できれば、委任契約を締結します。契約後、弁護士は直ちに全債権者に対して受任通知(介入通知)を発送します。この通知により、債権者からの直接の取り立ては通常停止し、経営者は精神的な負担から解放され、破産申立ての準備に専念できます。また、受任通知の発送は、会社が支払いを停止したことを外部に表明する「支払停止」となり、債権者への支払いはストップします。
ステップ2:破産申立ての準備(書類作成と取締役会決議)
受任通知の発送後、裁判所への破産申立てに向けた本格的な準備が始まります。この段階では、事業の停止や従業員の解雇、申立書類の作成などを並行して進める必要があります。
- 事業活動の全面的な停止
- 全従業員への事情説明と解雇通知
- 賃借物件(オフィス、工場など)の明け渡し交渉
- 裁判所へ提出する申立書類の収集・作成
- 破産申立てに関する取締役会での決議または取締役の同意書の取得
裁判所に提出する申立書類は多岐にわたりますが、主に以下のもので構成されます。これらの書類は、会社の状況を正確に反映する必要があり、虚偽の記載は詐欺破産罪に問われる可能性があるため、誠実に作成しなければなりません。
- 破産手続開始申立書
- 陳述書(報告書)
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 取締役会議事録または取締役の同意書
法人破産は会社の消滅という重大な決定であるため、取締役会設置会社では取締役会の決議が、非設置会社では取締役全員の同意が、法的に必要となります。
ステップ3:管轄裁判所への破産手続開始申立て
申立書類の準備が整ったら、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に破産手続開始の申立てを行います。申立ては代理人弁護士が行うのが一般的です。申立ての際には、以下の費用を裁判所に納付する必要があります。
- 申立手数料: 収入印紙で納付します(法人破産は1,000円)。
- 官報公告費: 破産手続の公告を官報に掲載するための費用です。
- 予納郵券: 債権者などへの通知に使われる郵便切手代です。
- 予納金(引継予納金): 破産管財人の報酬や手続き費用に充てられる費用で、費用の大部分を占めます。
特に予納金は、期限までに納付されないと申立てが却下されるため、事前に準備しておく必要があります。弁護士が代理人となることで、手続きが簡易に進められる「少額管財事件」として扱われ、予納金が最低額の20万円程度に抑えられる可能性が高まります。
ステップ4:破産審尋の実施と破産手続開始決定
破産申立て後、裁判所は申立て内容を審査し、破産手続を開始する要件を満たしているかを確認します。この過程で、裁判官が会社の代表者や代理人弁護士から直接事情を聴取する「審尋(しんじん)」が行われることがあります。
ただし、弁護士が代理人として申立てを行い、書類が十分に整っている場合、審尋は省略されることもあります。東京地方裁判所など一部の裁判所では、弁護士との信頼関係を前提に、申立て当日に裁判官と代理人が面談する「即日面接制度」が運用されており、迅速な手続き進行が図られています。
審査の結果、以下の要件が満たされていると判断されると、裁判所は「破産手続開始決定」を下します。
- 支払不能または債務超過という破産原因が存在すること
- 申立てが誠実に行われていること(破産手続きの濫用でないこと)
- 裁判所への予納金が納付されていること
この決定により、正式に破産手続きがスタートし、その事実は官報に公告されます。
ステップ5:破産管財人の選任と財産管理の開始
破産手続開始決定と同時に、裁判所は「破産管財人」を選任します。破産管財人には、破産者や債権者と利害関係のない中立的な立場の弁護士が選任されます。破産管財人が選任されると、会社の財産(破産財団)を管理・処分する権利は、会社の代表者から破産管財人に全面的に移ります。これにより、代表者は会社の財産を自由に処分できなくなります。
破産管財人の主な役割は以下の通りです。
- 破産財団に属する財産の調査、確保、管理
- 管理する財産の換価処分(現金化)
- 債権の有無や優先順位を調査し、債権額を確定させること(債権調査)
- 否認権を行使し、不当に流出した財産を破産財団に回収すること
- 換価によって得られた金銭を債権者に公平に配当すること
会社の代表者には、破産管財人の調査に協力し、財産状況などについて正直に説明する説明義務が課せられます。この義務に違反すると、罰則が科される可能性もあるため、誠実な対応が求められます。また、会社宛ての郵便物はすべて破産管財人に転送され、財産調査のために内容が確認されます。
ステップ6:破産財団の管理・換価と債権調査
破産管財人は、会社の財産(破産財団)を確保し、これを現金化(換価処分)する作業を本格的に開始します。破産財団には、会社名義のほぼすべての資産が含まれます。
- 不動産(土地、建物)
- 車両、機械設備
- 在庫商品、原材料
- 預貯金、売掛金、貸付金
- 有価証券(株式、社債など)
- 生命保険の解約返戻金
- 知的財産権(特許権、著作権など)
換価の過程で、破産管財人は、申立て前に行われた不当な財産処分や、特定の債権者にだけ返済する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」がなかったかを調査します。もしそのような行為が見つかれば、破産管財人は「否認権」を行使して、流出した財産を破産財団に取り戻します。
並行して、債権の調査も行われます。債権者は、定められた期間内に債権の内容を裁判所に届け出ます。破産管財人は、その届出内容と会社の帳簿などを照合し、各債権の金額や優先順位を確定させ、配当の準備を進めます。
ステップ7:債権者集会の開催と債権者への配当
破産手続開始決定から通常、約3ヶ月後を目安に、裁判所で「債権者集会」が開催されます。これは、破産管財人が債権者に対して、破産に至った経緯や財産の換価状況、今後の配当の見込みなどを報告するための場です。集会には、裁判官、破産管財人、会社の代表者などが出席し、代表者の出席は義務付けられています。
会社の資産の換価が完了し、配当に充てる資金(配当原資)が確保できた場合、配当の手続きに移ります。配当は、法律で定められた優先順位に従って、公平に行われます。
- 1. 財団債権: 破産管財人の報酬、税金、従業員の未払給与の一部など、手続き全体の利益のために支出される費用。他の債権に先立ち、配当手続きを経ずに随時弁済されます。
- 2. 優先的破産債権: 財団債権に該当しない税金や従業員の給与など、法律で優先的に扱われる債権。
- 3. 一般破産債権: 金融機関からの借入金や取引先の買掛金など、優先権のない一般的な債権。
- 4. 劣後的破産債権: 手続き開始後の利息や損害金など、他の債権がすべて弁済された後に配当される債権。
実務上、財団債権や優先的破産債権を支払うと配当原資が残らず、一般破産債権への配当が全く行われないケースも少なくありません。財産の換価が終わらない場合は、数ヶ月後に第2回の債権者集会が開かれます。
ステップ8:破産手続の終結と法人格の消滅
すべての手続きが完了すると、破産手続きは「終結」または「廃止」によって終了します。これにより、会社の法人格は消滅します。
| 終了事由 | 意味 | 主なケース |
|---|---|---|
| 破産手続終結 | 債権者への配当が完了し、破産の目的が達成されたことによる手続きの終了。 | 破産財団から費用を支弁し、債権者へ配当が実施できた場合。 |
| 破産手続廃止 | 破産財団が手続き費用を賄うのに不足し、配当の見込みがないことによる手続きの終了。 | 換価できる財産がほとんどなく、配当原資を形成できなかった場合。(法人破産では異時廃止が一般的) |
「破産手続終結決定」または「破産手続廃止決定」が確定すると、裁判所書記官が法務局に破産手続終結の登記を嘱託し、会社の登記記録は閉鎖されます。法人格の消滅に伴い、会社が負っていた借入金や買掛金、滞納していた税金などの債務も原則としてすべて消滅します。
法人破産手続きにかかる期間と費用
破産手続開始申立てから終結までの期間の目安
法人破産手続きにかかる期間は、事案の規模や複雑さによって異なりますが、弁護士に相談してから手続きが完了するまで、全体で半年から1年程度が一般的な目安です。期間は大きく2つに分けられます。
- 申立て準備期間: 弁護士への依頼から裁判所への申立てまで。通常3ヶ月~6ヶ月程度かかります。
- 裁判所での手続き期間: 破産手続開始決定から終結・廃止まで。通常3ヶ月~1年程度かかります。
申立て準備期間は、必要書類の収集・作成に時間を要します。裁判所での手続き期間は、不動産の売却が難航したり、訴訟が絡んだりすると長期化する傾向があります。弁護士を代理人として「少額管財事件」として扱われる場合、手続きが簡素化されるため、通常の管財事件よりも期間が短縮されやすくなります。
裁判所への予納金の金額と内訳
法人破産を申し立てる際、裁判所に「予納金」を納付する必要があります。これは破産管財人の報酬や手続きの実費に充てられる費用で、期限までに納付できないと申立てが却下されてしまいます。予納金の主な内訳は以下の通りです。
- 申立手数料(収入印紙代)
- 官報公告費
- 予納郵券(郵便切手代)
- 引継予納金(破産管財人の報酬等)
予納金の大部分を占める引継予納金の額は、事件の種類によって大きく異なります。
| 事件の種類 | 条件 | 予納金の目安 |
|---|---|---|
| 少額管財事件 | 弁護士が代理人となり、事案が比較的単純な場合 | 20万円~ |
| 通常管財事件 | 債務額が大きい、事案が複雑な場合 | 70万円~(負債総額に応じて変動) |
弁護士に依頼することで、費用負担の少ない少額管財事件として扱われる可能性が高まります。裁判所によっては予納金の分納が認められる場合もありますが、全額を納付しない限り破産手続開始決定は下りません。
弁護士費用の種類と目安
法人破産を弁護士に依頼する場合、裁判所に納める予納金とは別に、弁護士費用がかかります。費用体系は法律事務所によって異なりますが、主な内訳は以下の通りです。
- 相談料: 法律相談時に発生する費用(初回無料の場合も多い)。
- 着手金: 事件の依頼時に支払う費用で、結果にかかわらず返金されないのが原則です。
- 報酬金: 事件終了時に成果に応じて支払う費用(法人破産では発生しないことも多い)。
- 実費: 交通費、郵便費、印紙代など、手続きに実際にかかる費用。
- 日当: 弁護士が裁判所への出廷などで事務所を離れる際に発生する費用。
法人破産の弁護士費用は、会社の規模や負債額、事案の複雑さによって変動しますが、中小企業の場合、着手金として50万円から100万円程度が相場とされています。代表者個人の自己破産も同時に依頼する場合は、さらに費用が加算されます。費用の支払いが困難な場合は、分割払いに応じてもらえる事務所も多いため、相談時に確認してみましょう。
会社破産を検討する際の主な注意点
従業員への解雇通知と未払賃金の扱い
会社が破産する場合、事業を停止するため、全従業員を解雇する必要があります。解雇にあたっては、原則として30日以上前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。しかし、資金的に支払いが困難な場合が多いため、実務上は弁護士からの受任通知発送と同時に解雇を通知することが一般的です。
従業員の未払賃金(給与や退職金)は、破産手続きにおいて優先的に扱われます。
- 破産手続きでの扱い: 財団債権や優先的破産債権として、他の一般債権より優先的に支払われます。
- 支払いが困難な場合: 従業員は国の「未払賃金立替払制度」を利用し、未払額の一部(上限あり)を立て替えてもらえる可能性があります。
従業員が失業手当を速やかに受給できるよう、会社または破産管財人は離職票の発行手続きに協力する必要があります。
取引先への通知と債務支払停止の時期
取引先への通知は、弁護士が全債権者へ発送する「受任通知」によって行われます。この通知により、会社への直接の取り立ては停止し、同時に会社はすべての債務の支払いを停止します。これを「支払停止」といい、破産原因の一つである支払不能の状態にあると推定されます。
受任通知を発送するタイミングは慎重に判断する必要があります。早期に通知すると、取引先による商品の引き揚げや銀行口座の凍結などで混乱が生じる可能性があるためです。そのため、申立ての準備を水面下で進め、事業停止の直前または同時に通知を発送する「密行型の破産申立て」が選択されることもあります。
受任通知発送後、一部の債権者にだけ優先的に返済する「偏頗弁済」は、債権者平等の原則に反するため固く禁じられています。偏頗弁済を行うと、後日、破産管財人によってその効力が否定され(否認権の行使)、返済を受けた相手方に迷惑をかけることになるため、絶対に避けるべきです。
代表者個人の連帯保証債務への影響
中小企業が金融機関から融資を受ける際、代表者個人が会社の債務を連帯保証していることがほとんどです。会社と個人は法律上別人格ですが、連帯保証によってその関係は密接に結びついています。
- 会社の破産によっても、代表者個人の連帯保証債務は消滅しません。
- 債権者(金融機関など)は、会社の代わりに代表者個人へ残債務の一括返済を請求してきます。
- 返済が不可能な場合、代表者個人も自己破産などの債務整理手続きを申し立てる必要が生じます。
このため、法人破産と代表者個人の自己破産は、同時に申し立てるのが一般的です。これにより、手続きが効率的に進み、代表者自身の経済的再出発もスムーズになります。また、「経営者保証に関するガイドライン」を活用することで、一定の資産を残しながら保証債務を整理できる可能性もあります。
弁護士への相談前に整理しておくべき情報と資料
弁護士に相談する際は、事前に情報や資料を整理しておくことで、相談が円滑に進み、より的確なアドバイスを受けられます。最低限、以下のものを準備しておくとよいでしょう。
- 会社の基本情報: 商業登記簿謄本、定款、株主名簿など
- 財務状況に関する資料: 直近2~3期分の決算書、試算表など
- 資産に関する資料: 不動産登記簿謄本、預金通帳、車検証、保険証券など
- 負債に関する資料: 全ての債権者の名称、住所、債権額、担保の有無をまとめた一覧表
- 従業員に関する資料: 従業員名簿、賃金台帳など
- 経緯をまとめたメモ: 経営が悪化した経緯などを時系列でまとめたもの
相談時には、たとえ自社に不利な情報であっても、隠さずに正直に話すことが重要です。弁護士には守秘義務が課せられており、すべての事実を正確に伝えることが、最善の解決策を見つけるための第一歩となります。
申立て準備期間における資産の保全と偏頗弁済のリスク
破産申立ての準備期間中は、会社の財産を不当に減少させない「資産の保全」と、特定の債権者だけを優遇しない「債権者平等の原則」を厳守する必要があります。特に以下の行為は厳しく禁じられています。
- 財産隠し・不当な処分: 会社の財産を代表者名義に移したり、不当に安く売却したりする行為。悪質な場合は詐欺破産罪に問われる可能性があります。
- 偏頗弁済(へんぱべんさい): 親族や特定の取引先など、一部の債権者にだけ優先的に返済する行為。破産管財人の否認権行使の対象となります。
これらの行為は、破産手続きの公正性を害するだけでなく、代表者個人の自己破産において免責不許可事由に該当する可能性もあります。資産の処分や債務の支払いについては、必ず弁護士の指示に従ってください。
法人破産に関するよくある質問
会社の破産で、経営者の個人資産はどうなりますか?
法律上、会社と経営者は別人格のため、原則として会社の破産が直接経営者の個人資産に影響することはありません。しかし、多くの中小企業では、経営者が会社の借入れについて連帯保証人になっています。この場合、会社が破産しても連帯保証の義務はなくならず、債権者は経営者個人に残りの債務の返済を請求します。多額の保証債務を個人で返済することは困難なため、結果的に経営者自身も自己破産を選択することが多く、その場合は自宅や預貯金などの個人資産が処分の対象となります。
破産管財人とはどのような役割の人ですか?
破産管財人とは、破産手続開始決定と同時に裁判所から選任される弁護士です。その役割は、特定の債権者や破産者の味方ではなく、中立公正な立場から、債権者全体の利益のために破産手続きを進めることです。具体的には、破産会社の財産を調査・管理・換価(現金化)し、法律のルールに従って債権者に公平に配当します。破産管財人が選任されると、会社の財産の管理処分権はすべて破産管財人に移り、会社の代表者はその業務に協力する義務を負います。
従業員の未払いの給与は支払われますか?
従業員の未払い給与は、破産手続きにおいて「財団債権」や「優先的破産債権」として、取引先への買掛金などの一般債権よりも優先的に支払われることになっています。ただし、会社の財産が乏しく、破産管財人の報酬など、さらに優先順位の高い費用を支払うと残額がない場合は、給与が全額支払われない可能性もあります。その場合の救済措置として、国が未払賃金の一部を立て替えて支払う「未払賃金立替払制度」を利用できる場合があります。
破産手続きを自社だけで進めることはできますか?
法律上は、弁護士に依頼せず会社自身で破産を申し立てることも可能です。しかし、法人破産の手続きは極めて複雑で専門性が高いため、現実的には自社だけで進めるのは非常に困難です。弁護士に依頼せずに申し立てると、裁判所に納める予納金が数十万円から数百万円と高額になる「通常管財事件」として扱われます。弁護士に依頼すれば、予納金が原則20万円からとなる「少額管財事件」として扱われる可能性が高く、結果的に費用を抑え、手続きを円滑に進めることができます。
破産手続き後に、元代表者が再度起業することは可能ですか?
可能です。破産したことを理由に、再度起業することが法律で禁止されることはありません。ただし、再起業にはいくつかの現実的なハードルがあります。
- 法律上の制限: 破産を理由に起業が禁止されることはありません。
- 信用情報: 代表者個人が自己破産した場合、約5~7年間は信用情報機関に事故情報が登録され(いわゆるブラックリスト)、金融機関からの融資やクレジットカードの作成が困難になります。
- 資金調達: 上記の理由から、新たな事業資金の調達方法を工夫する必要があります。
- 資格制限: 自己破産の手続き中に一部の資格(弁護士、警備員など)が制限されますが、手続きが終了すれば復権し、再びその資格で業務を行えます。
破産手続きを誠実に乗り越え、その経験を糧に再び事業で成功を収める経営者は少なくありません。
まとめ:会社の倒産手続きを正しく理解し、専門家への早期相談を
本記事では、会社の倒産手続きの種類と、特に法人破産の具体的な流れや注意点について解説しました。倒産手続きには事業を清算する「破産」と再建を目指す「民事再生」などがあり、事業の継続価値の有無が選択の大きな分かれ目となります。法人破産は、弁護士への相談から始まり、裁判所への申立て、破産管財人による財産管理・換価、債権者への配当を経て法人格が消滅する、という厳格なプロセスで進められます。手続きには半年から1年程度の期間と、予納金や弁護士費用といったコストがかかり、また代表者個人の連帯保証債務や従業員への対応も重要な課題です。これらの手続きは極めて専門性が高く、判断を誤ると関係者に多大な影響を及ぼす可能性があります。経営状況が悪化した際は、独断で進めずにできる限り早い段階で弁護士に相談し、自社の状況に最も適した道筋を見出すことが、円滑な処理と経営者自身の再起に向けた第一歩となります。

