法人破産ができない4つのケースと、認められない場合のリスク・対処法
会社の経営状況が悪化し、法人破産を検討する中で、費用が足りない、要件を満たしているか分からないなど、手続きが認められない可能性に不安を感じていませんか。法人破産の申立てには、費用の納付や法律で定められた要件を満たす必要があり、これらがクリアできないと手続きを開始できません。この記事では、法人破産の申立てが認められない主要なケースと、そのリスク、そして状況を打開するための具体的な対処法について詳しく解説します。
法人破産が申し立てられても認められない4つの主要ケース
ケース1:破産手続きの費用(予納金)が支払えない
法人破産を申し立てるには、裁判所に予納金を納付することが法律で定められています。この予納金が支払えない場合、手続きを開始するための要件を満たさないため、申立ては棄却されます。
予納金は、破産管財人の報酬や官報公告費用などに充てられるお金です。特に法人破産では、会社の財産を調査・換価する破産管財人が必ず選任される「管財事件」となるため、その報酬にあたる引継予納金が高額になる傾向があります。
| 負債総額 | 予納金額 |
|---|---|
| 5,000万円未満 | 70万円~ |
| 5,000万円以上1億円未満 | 100万円~ |
| 1億円以上5億円未満 | 200万円~ |
ただし、弁護士が代理人となることで、手続きを簡易・迅速に進める少額管財制度を利用できる場合があります。この制度が適用されると、予納金は最低20万円程度まで抑えることが可能です。いずれにせよ、この費用を捻出できなければ破産手続きは開始できません。
ケース2:破産の要件である「支払不能」または「債務超過」に該当しない
法人破産が認められるためには、会社が「支払不能」または「債務超過」という破産原因に該当している必要があります。これらの状態にないと裁判所が判断した場合、申立ては認められません。
「支払不能」とは、会社の財産、信用、稼ぐ能力のいずれをもってしても、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に支払えない客観的な状態を指します。一時的に資金が不足しているだけでは、支払不能とは見なされません。
一方で「債務超過」とは、会社の負債総額が資産総額を上回っている状態のことです。これは法人のみに認められる破産原因です。たとえ債務超過の状態でも、資金繰りが回っており事業を継続できている場合は、支払不能には該当しないこともあります。しかし、債務超過を解消する見込みがなければ、破産を選択せざるを得ません。
ケース3:不当な目的での破産申し立てと裁判所に判断される
破産の申立てが不当な目的で行われたと裁判所に判断された場合、申立ては棄却されます。これは、破産制度の悪用を防ぐための規定です。
- 資産を隠したり別会社に移したりして、債権者を害する目的で破産を申し立てる(偽装破産)。
- 最初から返済する意思なく多額の借金をし、踏み倒す目的で破産を申し立てる(計画倒産)。
- 特定の債権者への返済だけを免れる目的で、意図的に支払いを停止して破産を申し立てる。
このような行為は、申立てが棄却されるだけでなく、詐欺破産罪などの刑事罰の対象となる可能性もあります。裁判所や破産管財人は、申立ての目的や財産状況について厳格な調査を行います。
ケース4:民事再生など他の法的整理手続きがすでに開始されている
法人破産は、会社の資産をすべて清算し、法人格を消滅させる最終的な手続きです。そのため、会社の再建を目指す手続きや、より簡易な清算手続きがすでに始まっている場合、破産の申立ては認められません。
- 民事再生手続:事業を継続しながら再建を目指す「再建型」の手続き。
- 会社更生手続:主に大企業を対象とした「再建型」の手続き。
- 特別清算手続:解散した株式会社を対象とする、破産より簡易な「清算型」の手続き。
これらの手続きが先行している場合、再建の可能性や、より円滑な清算が優先されるため、破産手続きは開始されないか、開始されても中止されることになります。
法人破産ができない場合に想定される事業上・経営上のリスク
債権者からの督促や資産の差し押さえが継続する
法人破産の手続きが開始されない限り、会社の債務は法的に整理されず、債権者からの督促や取り立ては続きます。支払いができない状態を放置すると、債権者は訴訟や支払督促といった法的措置に踏み切ります。
裁判で債権者の請求が認められると、債権者は会社の財産を強制的に差し押さえる「強制執行」が可能になります。差押えの対象は預貯金、売掛金、不動産など多岐にわたります。特に売掛金や銀行口座が差し押さえられると、事業の継続がさらに困難になり、会社の信用も失墜します。督促や差押えは、経営者にとって大きな精神的負担となります。
代表者個人の連帯保証債務の返済義務が残る
中小企業が融資を受ける際、多くの場合、代表者個人が会社の債務の連帯保証人になっています。法人が破産できなければ、会社の債務はなくならないため、代表者個人の返済義務もそのまま残ります。
連帯保証人は、会社と同等の返済義務を負います。そのため、会社が支払不能になると、債権者は直ちに代表者個人に対して債務全額の返済を請求できます。通常の保証人と異なり、連帯保証人には以下の権利が認められていません。
- 催告の抗弁権:「先に主債務者(会社)に請求してほしい」と主張する権利。
- 検索の抗弁権:「先に主債務者(会社)の財産を差し押さえてほしい」と主張する権利。
この結果、代表者個人の資産(自宅、預貯金など)が差押えの対象となるリスクが生じます。多くの場合、会社の債務を個人で返済することは困難なため、代表者自身も自己破産を検討せざるを得ない状況に追い込まれます。
返済が滞ることで遅延損害金がさらに加算される
返済が滞ったまま法人破産もできずにいると、元金に対して遅延損害金が日々加算されていきます。遅延損害金は返済遅延に対するペナルティであり、通常の利息よりも高い利率(上限は年20%)が設定されています。
滞納が長期化すると、遅延損害金によって借金総額は雪だるま式に膨れ上がります。さらに、多くの契約では、滞納が2ヶ月程度続くと「期限の利益」を喪失し、残っている債務全額を一括で返済するよう求められます。この状態を放置すれば、訴訟や強制執行のリスクは一層高まります。
破産手続きを進められない状況を打開するための具体的な対処法
未回収の売掛金回収や資産売却で費用を捻出する
破産手続きに必要な予納金や弁護士費用が足りない場合、会社の資産を現金化して費用を捻出する方法があります。具体的には、未回収の売掛金を回収したり、会社が所有する資産を売却したりします。
売掛金を回収するための手順は以下の通りです。
- 回収対象の売掛金をリストアップし、契約内容や支払条件を再確認する。
- 支払いに応じない取引先に対し、内容証明郵便で正式に支払いを督促する。
- それでも支払われない場合は、訴訟や支払督促、差押えなどの法的手段を検討する。
また、社用車や機械設備、不動産、在庫品などの資産を売却して現金を得ることも有効です。ただし、これらの資産を不当に安い価格で売却したり、回収した現金を特定の債権者への返済に充てたりすると、後の破産手続きで問題になる可能性があるため、弁護士の助言のもとで慎重に進める必要があります。
弁護士に相談し、自社の状況に最適な手続きを検討する
会社の経営状況が悪化したら、破産できるかどうかに関わらず、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。弁護士は、会社の財務状況を分析し、破産だけでなく民事再生など他の選択肢も含めて、最適な解決策を提案します。
弁護士に依頼することで、以下のような多くのメリットが得られます。
- 会社の状況を法的に分析し、最適な債務整理手続きを提案してもらえる。
- 弁護士が「受任通知」を送付することで、債権者からの直接の督促や取り立てが停止する。
- 督促が止まっている間に、返済資金を破産費用として積み立てることができる。
- 弁護士が代理人となることで、予納金が低額になる「少額管財」が利用しやすくなる。
- 複雑な書類作成や裁判所とのやり取りをすべて任せることができ、精神的負担が軽減される。
法人破産以外の債務整理も選択肢に入れる
法人破産が難しい場合でも、債務問題を解決するための他の法的整理手続きがあります。自社の状況に合わせて、これらの手続きを検討することも有効です。
- 民事再生:事業の継続を前提に、裁判所の監督下で会社の再建を目指す「再建型」の手続き。
- 特別清算:解散した株式会社を対象に、破産よりも簡易・迅速に会社を清算する「清算型」の手続き。
- 私的整理(任意整理):裁判所を介さず、債権者と直接交渉して債務の減額や返済猶予を求める方法。
どの手続きが最適かは会社の状況によって異なるため、専門家である弁護士と相談して決定することが重要です。
資産売却で費用を捻出する際の注意点と法的リスク
破産費用を捻出するために会社の資産を売却する際には、法的なリスクに注意が必要です。特に、倒産直前に資産を不当に安い価格で売却する行為は、債権者全体の利益を損なう詐害行為と見なされる可能性があります。
このような行為は、破産手続きが開始された後、破産管財人によって「否認」されることがあります。否認権が行使されると、その売却行為は法的に無効とされ、売却された資産は会社(破産財団)に取り戻されます。資産の売却は、必ず適正な価格で行う必要があります。
- 資産は適正な市場価格で売却し、不当に安売りしない。
- 親族や知人など、特定の関係者に有利な条件で売却しない。
- 売却で得た資金の使途を明確にし、記録を残しておく。
- 弁護士に相談し、法的に問題のない方法で進める。
法人破産の代替となる主な法的整理手続き
会社の状況によっては、破産以外の法的整理手続きを選択することが適切な場合があります。ここでは、代表的な「民事再生」と「特別清算」について解説します。
| 手続きの種類 | 目的 | 経営陣の処遇 | 対象となる法人 |
|---|---|---|---|
| 法人破産 | 清算(事業を終了させ法人格を消滅させる) | 原則として退任 | すべての法人 |
| 民事再生 | 再建(事業を継続させながら立て直す) | 原則として留任 | すべての法人 |
| 特別清算 | 清算(簡易な手続きで法人格を消滅させる) | 清算人として関与 | 解散した株式会社のみ |
民事再生|事業の継続を前提とした再建手続き
民事再生は、裁判所の監督のもとで事業を継続しながら会社の再建を目指す「再建型」の手続きです。最大の特長は、会社を消滅させずに存続させられる点にあります。
原則として現在の経営陣がそのまま経営を続けながら手続きを進めることができるため、事業の連続性を保ちやすいというメリットがあります。手続きの中では、債務の一部免除や返済期間の猶予などを盛り込んだ再生計画を作成し、債権者集会での可決と裁判所の認可を目指します。
- 出席した議決権者の過半数の同意があること。
- 議決権者の議決権総額の2分の1以上の同意があること。
手続きが開始されると、既存の債務の支払いが一時的に禁止されるため、資金繰りを安定させ、再建に集中できる環境を確保できます。
特別清算|解散した株式会社を対象とする清算手続き
特別清算は、債務超過の疑いがある解散済みの株式会社を対象とした「清算型」の手続きです。破産手続きと同様に会社を消滅させますが、より簡易かつ柔軟に進められる点が特徴です。
この手続きは、破産のように破産管財人が主導するのではなく、会社の清算人(多くは元の取締役)が主体となって進めます。そのため、破産に比べて費用を抑えやすく、会社のイメージダウンを最小限にしたい場合に選択されることがあります。
手続きでは、債権者と協議して弁済計画などを定めた「協定」を作成し、債権者集会での可決を目指します。
- 出席した議決権者の過半数の同意があること。
- 議決権者の議決権総額の3分の2以上の同意があること。
この要件を満たせず協定が可決されない場合、手続きは破産手続きに移行します。
法人破産に関するよくある質問
法人破産の費用が全くない場合でも、弁護士に相談すべきですか?
費用が全くない状況でも、すぐに弁護士に相談すべきです。問題を放置すると、債権者からの督促が激化し、最終的に会社の資産や代表者個人の給与などが差し押さえられるリスクが高まります。
弁護士に相談すれば、費用がなくても解決に向けた道筋を見つけることができます。
- 売掛金の回収や資産売却など、費用を捻出するための具体的な方法について助言をもらえる。
- 弁護士が受任通知を送付することで、債権者からの督促が止まり、その間に費用を準備できる。
- 多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いや後払いに対応している。
費用がないからと諦めず、まずは専門家である弁護士に現状を相談することが重要です。
会社の資産がほとんどなくても破産手続きはできますか?
はい、会社の資産がほとんどない場合でも、法人破産手続きは可能です。
法人破産は、原則として破産管財人が選任される「管財事件」として扱われます。会社の資産状況などを調査する必要があるためです。資産がほとんどない場合でも、弁護士が代理人として申立てを行うことで、予納金が低額に抑えられる「少額管財事件」として扱われることが多くあります。
少額管財の予納金は、裁判所にもよりますが最低20万円程度が目安です。資産がないからと手続きを諦めるのではなく、弁護士に相談し、費用の捻出方法や分割払いの可能性について検討することが大切です。
滞納した税金や社会保険料は、法人破産で支払いが免除されますか?
法人と個人で扱いが異なります。結論として、法人の滞納税金は消滅しますが、個人の滞納税金は免除されません。
- 法人の場合:破産手続きが完了すると法人格が消滅するため、滞納していた税金や社会保険料の支払い義務も消滅します。
- 個人の場合:自己破産をしても個人が消滅するわけではないため、税金や社会保険料は「非免責債権」とされ、支払い義務は免除されずに残ります。
ただし、法人が破産した場合でも、代表者が会社の税金について第二次納税義務を負っているケースなど、例外的に支払い義務が残ることがあるため注意が必要です。
法人破産と代表者個人の自己破産は同時に進めるべきですか?
会社の債務について代表者が連帯保証人になっている場合、法人破産と代表者個人の自己破産は同時に進めるのが一般的です。法人が破産しても、代表者個人の連帯保証債務は消えずに残ってしまうためです。
両方の手続きを同時に申し立てることには、多くのメリットがあります。
- 裁判所への申立てや手続きを一度に進められるため、時間や手間が省ける。
- 予納金が個別に申し立てるよりも低額になる可能性がある。
- 会社と個人の負債を一度に整理できるため、生活の再建を早く始められる。
通常、同時申立てを行うと、同じ破産管財人が選任され、法人と個人の手続きが関連事件として効率的に進められます。
まとめ:法人破産ができない状況を放置せず、早期に専門家へ相談を
この記事では、法人破産の申立てが認められない主なケースと、そのリスクや対処法を解説しました。破産費用が支払えない、あるいは「支払不能」といった法的要件を満たさない場合、手続きは開始されず、債権者からの督促や資産の差押えといったリスクに晒され続けます。状況を打開するには、資産売却で費用を捻出する方法もありますが、法的なリスクを伴うため独断は危険です。会社の状況によっては、民事再生や特別清算といった破産以外の選択肢が最適な場合もあります。どの手続きを選択すべきかを含め、最も確実なのは、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談することです。手遅れになる前に専門家の助言を仰ぎ、自社にとって最善の解決策を見つけましょう。

