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敵対的買収の失敗パターンとは?事例でわかる原因・防衛策と両社への影響

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敵対的買収を検討している、あるいは仕掛けられている企業の経営者やM&A担当者にとって、過去の失敗事例は重要な教訓となります。失敗の原因を理解せずに買収を進めたり、不適切な防衛策を講じたりすると、財務的な損失だけでなく企業ブランドにも深刻なダメージを与えかねません。失敗のパターンを学ぶことで、より現実的なリスク管理が可能になります。この記事では、国内外の著名な敵対的買収の失敗事例を分析し、その主要因、有効な防衛策、そして当事者企業に与えた影響について実務的な視点から解説します。

目次

敵対的買収が失敗する主要因

買収価格・条件の不備

敵対的買収が失敗する最も直接的な要因は、買収側が提示する価格や条件に魅力がないことです。公開買付け(TOB)価格が対象企業の企業価値を適切に反映していない場合、株主は株式の売却に応じません。敵対的買収では、現経営陣よりも高い経済的利益を株主に提供できることを価格で証明する必要があります。

買収価格が不十分と見なされる主なケース
  • 提示されたTOB価格が、市場株価や企業の本源的価値に対して低すぎる。
  • 独自の技術力、ブランド価値、顧客基盤といった無形資産を過小評価している。
  • 買収プロセス中に対象企業の株価が上昇し、TOB価格を上回ってしまう。
  • 買収対価が株式交換の場合、買収側の株価下落により実質的な価値が低下する。

買収側は、デューデリジェンス(資産査定)の機会が限られる中で、公開情報から精度の高い企業価値評価を行い、株主が納得するだけのプレミアム(上乗せ幅)を提示するという困難な課題を乗り越えなければなりません。

対象企業による強力な防衛策

対象企業が講じる買収防衛策は、買収のコストを増大させたり、手続きを複雑化させたりすることで、買収を断念させる主要因となります。これらの防衛策は、平時から導入されている場合と、買収を仕掛けられた有事に発動される場合があります。

代表的な買収防衛策
  • ポイズンピル(毒薬条項): 買収者が一定の株式を取得した際に、他の株主が新株を安価に取得できるようにし、買収者の持株比率を希薄化させる。
  • ホワイトナイト(友好的な第三者)の確保: 敵対的買収者より有利な条件を提示する友好的な企業に、対抗TOBや第三者割当増資の引受を依頼する。
  • クラウンジュエル(焦土作戦): 買収者が狙う魅力的な事業や資産を第三者に売却し、買収のメリット自体を失わせる。

これらの防衛策は、買収側にとって時間的・金銭的な負担を増やすだけでなく、買収後のシナジー効果を毀損するリスクも伴います。買収側は、対象企業の防衛策を突破する法的根拠や資金力、そして株主を説得する材料がなければ、計画の遂行は困難になります。

既存株主からの支持不足

敵対的買収を成功させるには、議決権の過半数以上を確保する必要があり、既存株主からの支持が不可欠です。株主は、提示された買収価格だけでなく、買収後の経営方針や企業価値の向上策も厳しく評価します。

株主の支持が得られない要因
  • 買収側が提示する経営ビジョンが不明確、または現経営陣の戦略より劣ると判断される。
  • 創業家、取引先、従業員持株会といった安定株主が結束して反対する。
  • 機関投資家や議決権行使助言会社が、買収提案に否定的な見解を示す。
  • 買収後の統合プロセスが円滑に進まず、企業価値が毀損されると懸念される。

株主は単なる経済合理性だけでなく、企業の将来性や安定性も重視します。買収側は、高い株価を提示するだけでなく、買収後の具体的な成長戦略を示し、株主の信頼を勝ち取らなければなりません。

規制当局による介入・法規制

規制当局による介入や法規制は、買収計画そのものを頓挫させる強力な外部要因です。特に、独占禁止法外資規制、安全保障関連の法律は、買収の成否を左右する大きなハードルとなります。

買収の障壁となる主な法規制
  • 独占禁止法(競争法): 市場の寡占化が進むと判断された場合、公正取引委員会などが買収の差し止めや事業譲渡などの措置を命じることがある。
  • 外資規制・安全保障関連法: クロスボーダーM&Aにおいて、安全保障上の脅威と見なされると買収が不許可となる。
  • 金融商品取引法: TOB規制やインサイダー取引規制に違反した場合、買収プロセスが停止されるリスクがある。

これらの法規制は買収側がコントロールできない要素を含んでおり、計画段階での綿密な法的リスク分析が不可欠です。規制当局の見通しが甘いと、法的な壁によって買収は失敗に終わります。

買収側の資金調達の失敗

敵対的買収には、株式の買付資金のほか、アドバイザー報酬や長期戦に備えた運転資金など、莫大な費用が必要です。これらの資金を確保できなければ、買収は物理的に実行不可能です。

資金調達が失敗する主な原因
  • 買収規模が自社の財務体力を大幅に超えている。
  • 金融機関からの融資確約(コミットメントレター)が得られない。
  • 買収合戦で価格が高騰し、当初の予算を上回る追加資金を調達できない。
  • 買収側の業績悪化や市場の急変により、信用力が低下し融資が受けられなくなる。

豊富な資金力は敵対的買収を成功させるための大前提です。資金計画の破綻は即座に買収の失敗を意味するため、盤石な財務基盤と金融機関との強固な信頼関係が求められます。

【国内】敵対的買収の失敗事例

ライブドア対ニッポン放送(2005年)

2005年、ライブドアによるニッポン放送への敵対的買収は、日本のM&A史に大きな影響を与えた象徴的な事例です。ライブドアの真の狙いは、ニッポン放送を通じてその親会社であるフジテレビジョンの経営権に影響を及ぼすことでした。

ライブドア対ニッポン放送の経緯
  1. ライブドアが、東京証券取引所の時間外取引(ToSTNeT-1)を利用し、ニッポン放送の株式約35%を奇襲的に取得
  2. ニッポン放送側は、フジテレビに新株予約権を発行する防衛策(ポイズンピル)を発表。
  3. ライブドアは新株予約権の発行差止を求めて提訴し、東京地裁はこれを認める司法判断を下す。
  4. フジテレビ側がホワイトナイトとしてソフトバンク・インベストメントと提携し、ライブドアの支配権掌握を阻止。
  5. 社会的な批判や孤立も深まり、最終的にライブドアはフジテレビと和解し、保有株式をすべて売却して撤退。

この事例は、法的な奇襲が一時的に成功しても、対象企業の徹底的な防衛や社会的な支持の欠如によって最終目的が阻まれる典型例となりました。また、これを契機に日本企業で買収防衛策の導入が加速しました。

王子製紙対北越製紙(2006年)

2006年、製紙業界首位の王子製紙が同6位の北越製紙に仕掛けた敵対的TOBは、大手事業会社同士の初の本格的な事例として注目されましたが、北越製紙の巧みな防衛により失敗しました。王子製紙の狙いは、規模の拡大によるグローバル競争力の強化でした。

王子製紙対北越製紙の経緯
  1. 王子製紙が北越製紙経営陣の同意を得ないまま、TOB(株式公開買付け)を発表。
  2. 北越製紙は即座に反対を表明し、ホワイトナイトとして三菱商事に支援を要請。
  3. 北越製紙は三菱商事を引受先とする第三者割当増資を実施し、王子製紙の買収ハードルを大幅に引き上げる。
  4. 業界2位の日本製紙も北越製紙の安定株主として防衛側を支援。
  5. 王子製紙はTOBの成立が困難と判断し、買収を断念。

この事例は、対象企業が迅速にホワイトナイトを確保し、第三者割当増資という伝統的かつ強力な防衛策で対抗した成功例です。業界内の力学や、安定株主工作の重要性が浮き彫りになりました。

コクヨ対ぺんてる(2019年)

2019年、文具最大手のコクヨが非上場企業であるぺんてるに仕掛けた敵対的買収は、ぺんてる側の強固な抵抗により失敗に終わりました。ぺんてるの独立性と企業文化を守るための防衛策が注目されました。

コクヨ対ぺんてるの経緯
  1. コクヨが投資ファンド保有の株式を取得し、ぺんてるの筆頭株主となる。
  2. ぺんてる経営陣はコクヨの提案を「一方的」と拒絶し、ホワイトナイトとして同業のプラスと資本業務提携を締結。
  3. コクヨとプラスによるぺんてる株式の争奪戦が勃発。
  4. ぺんてるは非上場であり、従業員・OB株主などの「顔の見える株主」が結束してコクヨへの株式譲渡を拒否。
  5. コクヨは過半数の株式を取得できず、経営権の掌握を断念。

この事例は、非上場企業における敵対的買収の難しさを示しています。特に、譲渡制限株式の存在や、従業員・OBといったステークホルダーとの信頼関係が、強力な防衛手段となることを証明しました。

【海外】敵対的買収の失敗事例

マイクロソフト対ヤフー(2008年)

2008年、マイクロソフトがヤフーに仕掛けた約446億ドルの敵対的買収は、インターネット市場の覇者グーグルに対抗するための巨大連合を目指したものでしたが、価格交渉の決裂により失敗に終わりました。

マイクロソフト対ヤフーの経緯
  1. マイクロソフトが、ヤフーの株価に約62%のプレミアムを上乗せした巨額の買収案を提示。
  2. ヤフーの取締役会は、提案を「会社を著しく過小評価している」として拒否。
  3. ヤフーは、防衛策としてライバルのグーグルとの広告提携を模索し、マイクロソフトを牽制。
  4. マイクロソフトは買収価格を一部引き上げたものの、ヤフーが要求する価格との溝は埋まらず。
  5. マイクロソフトはこれ以上の価格引き上げは自社の株主利益を損なうと判断し、買収提案を正式に撤回。

買収失敗後、ヤフーの業績は低迷を続け、最終的にはマイクロソフトの提示額をはるかに下回る価格で売却されました。この事例は、経営陣の判断が長期的な株主価値に与える影響の大きさを示唆しています。

クラフト・ハインツ対ユニリーバ(2017年)

2017年、米食品大手クラフト・ハインツが英蘭系ユニリーバに提案した約1430億ドルの超大型買収は、提案公表からわずか2日で撤回されるという異例の結末を迎えました。失敗の主因は、企業文化の根本的な不一致でした。

買収が早期に頓挫した要因
  • 経営モデルの衝突: コスト削減を徹底するクラフト・ハインツに対し、ユニリーバは持続可能性(サステナビリティ)を重視する長期的な経営を掲げた。
  • 社会・政治的な反発: ユニリーバの本拠地である英国の政財界や労働組合から、大規模なリストラや企業文化の破壊を懸念する声が上がった。
  • 迅速な拒否姿勢: ユニリーバ経営陣が即座に、かつ断固として提案を拒否したため、友好的な交渉の余地がないと判断された。

この事例は、M&Aにおいて買収価格だけでなく、企業文化や経営理念といった非財務的な要素が決定的な障壁となり得ることを示しています。

ゼロックス対HP(2020年)

2019年から2020年にかけて、米事務機器大手ゼロックスが、自社より規模の大きいパソコン・プリンター大手HPに仕掛けた敵対的買収は、新型コロナウイルスのパンデミックという予期せぬ外部要因によって頓挫しました。

ゼロックス対HPの経緯
  1. ゼロックスが、統合によるコスト削減を狙い、HPに対して総額約335億ドルの買収を提案。
  2. HP取締役会は、提案価格が「HPを著しく過小評価している」として繰り返し拒否。
  3. ゼロックスは敵対的TOBと委任状争奪戦に移行し、強硬な姿勢を見せる。
  4. 2020年に入り、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で金融市場が混乱し、経済の先行きが極度に不透明になる。
  5. ゼロックスは市場環境の激変を理由に、巨額の負債を伴う買収の遂行は困難と判断し、提案を撤回。

この事例は、M&Aが市場環境とタイミングに大きく左右されることを示す教訓となりました。どれほど戦略的合理性があっても、予期せぬマクロ環境の変化が前提を覆し、計画を不可能にすることがあります。

失敗事例に学ぶ有効な買収防衛策

新株予約権の発行(ポイズンピル)

新株予約権の発行(通称:ポイズンピル)は、敵対的買収者が一定割合以上の株式を取得した際に、買収者以外の既存株主に市場価格より安価で新株を取得する権利を与える防衛策です。これにより、買収者の持株比率を強制的に希薄化させ、買収コストを大幅に引き上げることで、買収意欲を削ぎます。ブルドックソース事件では、この防衛策の適法性が最高裁で認められました。ただし、発動には株主総会の承認を得るなど、手続きの公正性が求められ、株価下落のリスクも伴う「劇薬」とされています。

友好的な買収者(ホワイトナイト)の確保

ホワイトナイト(白馬の騎士)は、敵対的買収を仕掛けられた企業を救済するため、より友好的な条件で買収してくれる第三者のことです。対象企業は、現経営陣の方針に理解のあるホワイトナイトに対抗TOBや第三者割当増資を依頼し、敵対的買収者を撃退します。王子製紙に対する北越製紙の防衛や、コクヨに対するぺんてるの防衛で成功例が見られます。成功の鍵は、平時から業界内外に信頼できるパートナーを確保しておくことです。

主要事業の売却(焦土作戦)

焦土作戦(クラウン・ジュエル)は、買収者が最も魅力を感じている事業部門や資産(王冠の宝石)を、買収が成立する前に意図的に第三者へ売却してしまう防衛策です。これにより、買収の目的そのものを失わせ、買収を断念させます。しかし、この策は自社の企業価値を大きく毀損する諸刃の剣であり、実行すれば取締役の善管注意義務違反を問われる法的リスクが非常に高いです。そのため、実際に実行されることは稀で、交渉上の牽制として使われることがほとんどです。

株主・社会への広報戦略(PR)

株主や社会に対して、買収者の提案の不当性や、現経営陣の戦略の正当性を訴え、世論を味方につける広報(PR)活動も有効な防衛策です。買収者の問題点を指摘し、自社の将来性や株主還元策を具体的に示すことで、株主の支持固めを図ります。また、従業員や取引先、地域社会といったステークホルダーに買収の悪影響を訴え、買収反対の機運を醸成することも重要です。ただし、情報発信は客観的な事実に基づき、論理的に行う必要があります。

平時からの備えが重要:IR活動と株主構成の把握

敵対的買収に対する最も効果的な防衛策は、平時から買収されにくい企業体質を作っておくことです。具体的には、日頃からのIR(インベスター・リレーションズ)活動を通じて株主との対話を深め、信頼関係を構築することが不可欠です。

平時から行うべき備え
  • 経営方針や成長戦略を丁寧に説明し、安定株主(ファン株主)を増やす。
  • 企業価値に見合った適正な株価水準を維持し、割安感をなくす。
  • 実質株主判明調査などにより、自社の株主構成を常に正確に把握・分析する。

これらの地道な活動が、いざという時に経営の安定を支える土台となります。

買収失敗が両社に与えるその後の影響

買収側:財務負担とブランドイメージ低下

敵対的買収に失敗した企業は、多大な損失を被る可能性があります。財務面では、アドバイザー報酬や調査費用などがすべて埋没費用となり、多額の損失を計上します。ブランドイメージの面では、「強引な乗っ取り屋」という評判が立ち、本業の顧客離れや採用活動に悪影響が及ぶリスクがあります。さらに、株主から「無謀な経営判断で会社の資産を浪費した」として、経営責任を追及されることもあります。

対象側:経営陣の刷新と戦略見直し

買収を防衛した企業も、無傷ではいられません。敵対的買収を仕掛けられたこと自体が、市場から「現経営陣の経営に問題がある」と見なされた証左だからです。防衛に成功した後、株主からの圧力で経営陣が交代したり、事業売却や株主還元強化などの戦略見直しを迫られたりするケースが少なくありません。ホワイトナイトを招き入れた場合は、その企業の傘下に入り、実質的に経営の独立性を失うこともあります。

共通:従業員の動揺と人材流出リスク

買収騒動は、買収側・対象側双方の従業員に大きな不安と動揺を与えます。特に、対象企業の従業員は、買収後のリストラや処遇の変化を恐れ、優秀な人材が流出するリスクが高まります。買収側の従業員も、自社の評判悪化や財務状況への懸念から、モチベーションが低下することがあります。プロセスそのものが組織の求心力を弱め、人的資本を毀損するリスクを双方が負うことになります。

市場:株価の乱高下と投資家からの評価

敵対的買収が報じられると、対象企業の株価はTOB価格への期待から急騰しますが、失敗に終わると一転して急落します。高値で株式を取得した投資家は大きな損失を被る可能性があります。その後、市場は「防衛に成功した経営陣が、自力で企業価値を向上できるか」を厳しく監視します。防衛策によって財務体質が悪化したと見なされれば株価は低迷し、逆に潜在価値が再認識されれば株価が上昇することもあります。

失敗後の関係修復と事業への影響を最小化する対応

買収に失敗した後、特に同業者間や取引先との争いであった場合、早期の関係修復が事業への悪影響を最小化するために重要です。感情的なしこりを残さず、ビジネス上の判断の違いとして冷静に対応し、将来的な業務提携などの可能性を探る姿勢が求められます。社内に対しては、速やかに通常業務へ復帰することを宣言し、従業員の不安を払拭するとともに、中断していた事業活動を再開させるリーダーシップが必要です。

敵対的買収に関するよくある質問

敵対的買収は違法行為ではないのですか?

結論として、敵対的買収そのものは違法ではありません。日本の会社法や金融商品取引法は、対象企業の経営陣の同意がない株式取得やTOBを禁止しておらず、むしろ株主の権利を実現する正当な経済活動と位置づけています。企業の所有者は株主であり、株主が自らの利益のために株式を売却するのは自由です。

ただし、その手法が法に触れる場合はあります。インサイダー取引、株価操縦、大量保有報告義務違反といった行為は明確に違法です。したがって、「敵対的であること」が問題なのではなく、「法律で定められたルールを守らないこと」が違法となります。

一度失敗したら、再度の買収は不可能ですか?

法的に再度の買収が不可能になるわけではありませんが、実務上のハードルは非常に高くなります。一度失敗すると、対象企業は防衛策を強化し、株主の警戒心も強まるため、同じ方法での成功は困難です。また、TOBを撤回した後は、一定期間、同じ企業への買付けが制限される場合もあります。

しかし、対象企業の業績が悪化したり、経営陣が交代したりと状況が大きく変化すれば、再挑戦の機会が生まれる可能性はあります。友好的なアプローチに切り替えたり、他の企業と共同で買収を仕掛けたりと、戦略を練り直すことで道が開けることもあります。

敵対的買収を仕掛けられやすい企業の特徴は?

敵対的買収のターゲットとなりやすい企業には、いくつかの共通した特徴があります。これらは買収者にとって「価値があるにもかかわらず、割安で手に入れやすい」と映ります。

買収ターゲットになりやすい企業の特徴
  • 割安な株価: 保有資産に対して株価が著しく低い(例:PBR1倍割れ)。
  • 豊富なキャッシュ: 多額の現金を保有しているが、有効な投資や株主還元に活用できていない。
  • 不安定な株主構成: 安定株主が少なく、浮動株や外国人投資家の比率が高い。
  • 魅力的な非効率事業: 優れた技術やブランドを持つが、経営効率が悪く、改善の余地が大きい。

これらの特徴を複数持ち、かつ有効な買収防衛策を導入していない企業は、特に狙われやすいと言えます。

防衛策を発動した場合の株主代表訴訟リスクは?

防衛策の発動、特に株主の権利を制限する可能性があるポイズンピルなどは、株主代表訴訟のリスクを伴います。株主から「経営陣が自らの地位を守るために、株主全体の利益を害した」として、取締役の善管注意義務違反を問われる可能性があります。

このリスクを避けるためには、過去の司法判断で示された基準を満たすことが重要です。

防衛策の正当性が認められるための要件
  • 買収者が企業価値を毀損する「濫用的買収者」であると合理的に判断できること。
  • 発動する防衛策が、その脅威に対抗するために必要かつ相当な範囲であること。
  • 株主総会の承認や社外取締役からなる独立委員会の判断など、手続きの公正性が確保されていること。

これらの要件を満たさずに防衛策を強行し、会社に損害を与えた場合、取締役個人が賠償責任を負うリスクがあります。

まとめ:敵対的買収の失敗事例から学ぶリスク管理と防衛策

本記事で解説したように、敵対的買収の失敗は、不適切な買収価格、対象企業の強力な防衛策、株主からの支持不足など、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。国内外の事例からは、法規制や企業文化の違い、予期せぬ市場環境の変化といった外部要因も成否を大きく左右することがわかります。買収を仕掛ける側も防衛する側も、単なる資金力だけでなく、株主や従業員、社会からの支持を得られるかという視点が極めて重要です。自社が当事者となる可能性に備え、平時から株主構成を把握し、IR活動を通じて株主との良好な関係を築いておくことが、最も効果的な防衛策の基礎となります。敵対的買収や防衛策の実行は、高度な法的・財務的判断を要するため、具体的な検討にあたっては必ず弁護士やM&Aアドバイザーなどの専門家に相談してください。

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