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日本政策金融公庫と信用保証協会の違いとは?融資の仕組み・条件・選び方を解説

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事業資金の調達を検討する際、政府系の日本政策金融公庫と、民間の融資を支える信用保証協会はどちらも重要な選択肢ですが、その役割や仕組みの違いを正確に理解するのは難しいものです。両者は公的な機関という点で共通していますが、融資を直接行うか、あくまで保証人に徹するかという点で根本的に異なります。この記事では、日本政策金融公庫と信用保証協会の基本的な違いから、金利や審査などの具体的な融資条件、さらには両制度の併用についてまで、体系的に解説します。自社にとって最適な資金調達方法を見極めるための判断材料としてご活用ください。

目次

日本政策金融公庫と信用保証協会の基本的な違い

日本政策金融公庫の役割:政府系の「直接融資」機関

日本政策金融公庫(以下、公庫)は、政府が100%出資する政策金融機関です。その主な役割は、銀行などの民間金融機関では対応が難しい分野の資金調達を支援し、国民生活の向上に貢献することにあります。特に、創業期の企業や業績が一時的に悪化した中小企業、小規模事業者、農林水産業者などへの融資を積極的に行い、セーフティネットとしての機能を果たしています。

融資の形態は、公庫が自ら審査を行い、事業者の口座へ直接資金を振り込む「直接融資」です。これにより、手続きが比較的シンプルで迅速に進むという特徴があります。

日本政策金融公庫の主な事業内容
  • 国民生活事業: 個人企業や小規模企業向けの小口融資を扱います。
  • 中小企業事業: 中小企業向けの長期事業資金の融資を担当します。
  • 農林水産事業: 農林漁業者や食品産業事業者向けの資金を供給します。

信用保証協会の役割:民間融資における「公的な保証人」

信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が民間金融機関から融資を受ける際に、その債務を保証する公的機関です。信用保証協会が自ら資金を貸し付けるのではなく、あくまで「公的な保証人」として機能します。全国に51の協会があり、地域に密着した運営を行っています。

この仕組みにより、金融機関は貸し倒れリスクを大幅に軽減できるため、実績が少ない企業や担保力が弱い企業にも融資を行いやすくなります。万が一、事業者が返済不能に陥った場合、信用保証協会が金融機関に代わって返済(代位弁済)を行いますが、事業者の返済義務がなくなるわけではありません。その後は、事業者が信用保証協会に対して返済を続けていくことになります。

融資の仕組みを比較:直接融資と保証付き融資(制度融資)の流れ

日本政策金融公庫と信用保証協会では、融資の仕組みが大きく異なります。公庫は事業者と直接契約する二者間取引ですが、信用保証協会が関わる融資は、金融機関や自治体も含む三者または四者間の取引となり、手続きの流れも複雑になります。

項目 日本政策金融公庫(直接融資) 信用保証協会付き融資(制度融資)
融資形態 公庫が直接、事業者に資金を融資する 民間金融機関が融資し、信用保証協会がその債務を保証する
主な関係者 申込者、日本政策金融公庫 申込者、民間金融機関、信用保証協会(制度融資では自治体も加わる)
特徴 関係者が少なく、手続きが比較的スピーディー 複数の機関が関わるため、審査や手続きに時間を要する傾向がある
契約関係 申込者と公庫の二者間で金銭消費貸借契約を締結 申込者・金融機関間、申込者・保証協会間などで複数の契約が必要
融資の仕組み比較

【項目別】日本政策金融公庫と信用保証協会の融資条件を比較

金利(利率)の違いと特徴

日本政策金融公庫の金利は、原則として全期間固定金利です。融資実行時の金利が完済まで変わらないため、返済計画が立てやすいというメリットがあります。金利水準は国の政策に基づき低めに設定されており、特に創業支援やセーフティネット関連の融資では、さらに優遇された特別利率が適用されることもあります。

一方、信用保証協会付き融資の金利は、融資を行う各民間金融機関が設定します。ただし、都道府県や市区町村が設ける「制度融資」を利用する場合、自治体による利子補給(利息の一部または全部を補助する制度)を受けられるケースが多く、実質的な金利負担を公庫よりも低く抑えられる可能性があります。

保証料の有無と負担の違い

融資を受ける際の総コストに大きく影響するのが、信用保証料の有無です。

  • 日本政策金融公庫: 直接融資であり、保証の仕組みを利用しないため、信用保証料は一切かかりません。事業者が負担するのは、元本と金利のみです。
  • 信用保証協会付き融資: 金融機関へ支払う金利とは別に、保証人である信用保証協会に対して信用保証料を支払う必要があります。保証料率は、融資金額、期間、企業の財務状況などに応じて決まります。ただし、自治体の制度融資では、この保証料の一部または全額を補助する制度が用意されている場合が多く、利用者の負担を軽減できます。

審査の観点と期間の目安

審査のプロセスや期間は、両者で大きく異なります。一般的に、関係機関が少ない公庫の方がスピーディーです。

項目 日本政策金融公庫 信用保証協会付き融資
審査プロセス 公庫による単独審査 「金融機関の審査」と「信用保証協会の審査」の二段階
期間の目安 申し込みから約1か月~1か月半 申し込みから約2か月~3か月
主な審査観点 事業計画の妥当性、自己資金の形成過程、経営者の資質 決算書に基づく財務内容、返済能力、保証要件への適合性
審査の観点と期間の比較

担保・保証人の要件

日本政策金融公庫では、特に創業時や小規模事業者向けの融資において、無担保・無保証人で利用できる制度が非常に充実しています。「新創業融資制度」などの特例を利用すれば、代表者個人の連帯保証すら不要となる場合があります。

対照的に、信用保証協会付き融資では、原則として法人代表者の連帯保証が必要とされてきました。ただし、近年は「経営者保証に関するガイドライン」の運用が進み、一定の要件を満たせば経営者保証を不要とする取り扱いも増えています。担保については、無担保で利用できる保証限度額(通常8,000万円)までは原則不要です。

申し込みから融資実行までの手続き

日本政策金融公庫への申し込みは、窓口、郵送、インターネットから直接行えます。一方、信用保証協会付き融資は、金融機関や自治体を経由して手続きを進めるのが一般的です。

日本政策金融公庫の融資手続きフロー
  1. 支店窓口、郵送、またはインターネットで申し込みを行う。
  2. 必要書類を提出し、公庫の担当者と面談する。
  3. 審査が承認され次第、契約手続きに進む。
  4. 契約書類を返送後、数営業日で指定口座に資金が振り込まれる。
信用保証協会付き融資(制度融資)の融資手続きフロー
  1. (制度融資の場合)自治体の窓口で制度利用の認定を受け、認定書などを取得する。
  2. 金融機関の窓口で融資を申し込み、信用保証協会への保証を依頼する。
  3. 金融機関と信用保証協会がそれぞれ審査を行う。
  4. 保証が承認されると、信用保証書が金融機関に発行される。
  5. 金融機関と金銭消費貸借契約、信用保証協会と保証委託契約を締結する。
  6. 金融機関から指定口座に資金が振り込まれる。

事業の状況に応じた融資制度の選び方

創業時・起業直後の資金調達

創業期においては、スピードを重視するか、コストを最優先するかで選択肢が変わります。

  • スピード重視の場合: 日本政策金融公庫の「新規開業資金」が適しています。審査期間が比較的短く、無担保・無保証人で利用しやすい点が大きなメリットです。事業計画の相談にも乗ってもらえます。
  • コスト削減を最優先する場合: 自治体の「創業支援融資(制度融資)」が有効です。金利や保証料の補助により、総返済額を抑えられる可能性があります。ただし、融資実行までに時間がかかるため、資金需要期から逆算して余裕を持ったスケジュールで申し込む必要があります。

小規模事業者や個人事業主の場合

小規模な資金需要には、日本政策金融公庫の「国民生活事業」が対応しています。小口融資が中心で、無担保・無保証人の取り扱いも柔軟です。また、商工会議所などの経営指導を受けている場合は、さらに低金利な「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」も選択肢となります。

信用保証協会付き融資においても、地域の信用金庫や信用組合と日常的な取引があれば、窓口で相談することでスムーズに手続きが進む可能性があります。

追加融資や事業拡大を目指す場合

事業が軌道に乗り、追加融資や事業拡大のための資金が必要になった際は、信用保証協会付き融資の利用を積極的に検討すべきです。公庫からの借入だけではいずれ限度額に達する可能性があるため、民間金融機関との取引実績を作っておくことが将来の安定的な資金調達につながります。

保証付き融資で着実に返済実績を積むことは、金融機関からの信用を高め、将来的に保証協会を通さない「プロパー融資」を受けるための重要なステップとなります。

将来のプロパー融資を見据えた金融機関との関係構築

プロパー融資は、金融機関が100%リスクを負うため、企業との強固な信頼関係がなければ実行されません。その信頼を築くためには、まず保証付き融資から始めるのが定石です。

金融機関との信頼関係を築くためのポイント
  • 定期的に試算表や事業報告書を提出し、経営状況を報告する。
  • 融資担当者と密にコミュニケーションを取り、事業の将来性を理解してもらう。
  • 約束通りに返済を続け、良好な取引実績を積み重ねる。

日本政策金融公庫と信用保証協会の併用は可能か

結論:両制度の併用は可能

日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資は、それぞれ審査機関や資金の原資が異なるため、制度上の併用は可能です。実際に、創業資金を確保するために、公庫と制度融資の両方から融資を受けるケースは少なくありません。

また、公庫と民間金融機関が連携して一つの事業計画に対し融資を行う「協調融資」というスキームも存在します。ただし、同一の設備資金など、同じ資金使途で二重に借り入れることは過剰融資と見なされる可能性があるため、運転資金と設備資金で使い分けるなどの計画性が重要です。

併用するメリット:資金調達の選択肢拡大とリスク分散

両制度を併用することには、いくつかのメリットがあります。

併用の主なメリット
  • 単独では難しい高額な資金でも、組み合わせることで調達できる可能性が高まる。
  • 公庫と民間金融機関の両方と取引実績を築き、将来の資金調達チャネルを増やせる。
  • 取引先を複数持つことで、特定の金融機関の方針変更などに備えるリスク分散になる。
  • 一方の審査に通った実績が、もう一方の審査で有利に働くことがある。

併用時の注意点:総借入額と返済計画の管理

併用する際は、メリットだけでなく注意点も理解しておく必要があります。

併用時の注意点
  • 借入総額が増えるため、月々の返済負担が重くなりキャッシュフローを圧迫する。
  • 事業計画で想定した利益を上回る返済額になると、資金繰りが悪化する恐れがある。
  • 返済能力を超えた過剰な借入は、経営破綻のリスクを高める。
  • 申し込み手続きや書類準備がそれぞれに必要となり、事務的な負担が増加する。

片方の審査に落ちた場合の選択肢と影響

公庫と信用保証協会の審査は独立しているため、片方の審査に落ちたからといって、もう一方も必ず否決されるわけではありません。逆もまた然りです。

しかし、審査に落ちたという事実は、事業計画や財務状況に何らかの懸念点があることを示唆します。その原因を分析・改善せずに他の金融機関に申し込んでも、同じ結果になる可能性が高いでしょう。また、信用情報機関には申し込み履歴が記録されるため、短期間に複数の申し込みを繰り返すと多重申込と判断され、かえって審査に通りにくくなる可能性があります。一度否決された場合は、少なくとも半年程度は期間を空け、事業計画を見直してから再挑戦するのが賢明です。

日本政策金融公庫と信用保証協会に関するよくある質問

Q. 信用保証協会を通す融資(制度融資)はどこに申し込むのですか?

申し込み窓口は、取引のある、または希望する民間金融機関(銀行、信用金庫など)です。制度融資の場合は、先に自治体の担当窓口(商工課など)で認定を受ける必要がある場合もあります。いずれの場合も、信用保証協会へ直接申し込むのではなく、金融機関や自治体を経由して手続きが進められます。

Q. 自己資金が少ない場合、どちらの融資が有利ですか?

一般的に、日本政策金融公庫の方が有利とされています。特に「新規開業資金」の特例措置では、自己資金要件が「創業資金総額の10分の1以上」と緩和されています。ただし、自己資金がどのように蓄積されたかを通帳などで確認されるため、一時的に用意した「見せ金」は認められません。計画的に準備してきたことを示すことが重要です。

Q. すでに民間の銀行から融資を受けていますが、公庫から追加融資は可能ですか?

はい、追加融資を受けることは可能です。公庫は民間金融機関を補完する役割を担っているため、既存の借入があること自体が障害にはなりません。ただし、審査においては、既存の借入を含めた総額を返済していけるかどうかが厳しく見られます。返済能力が十分にあることを、事業計画書や資金繰り表で具体的に示す必要があります。

まとめ:自社の状況に合わせた最適な資金調達戦略を

この記事では、日本政策金融公庫と信用保証協会の仕組みや融資条件の違いを解説しました。公庫は政府系の「直接融資」機関として迅速な資金提供に強みを持ち、信用保証協会は民間融資の「公的な保証人」として金融機関との取引を円滑にします。創業期でスピードを求めるなら公庫、コストを抑えたいなら自治体の制度融資、将来のプロパー融資を見据えるなら保証協会付き融資で取引実績を積むなど、自社の状況に応じた使い分けが重要です。両制度の併用も可能であり、資金調達の選択肢を広げる有効な手段ですが、総借入額が増えるため綿密な返済計画が不可欠となります。それぞれの特徴を正しく理解し、自社の事業フェーズや将来の展望に照らし合わせて、最適な資金調達戦略を立てましょう。

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