セーフティネット保証5号とは?認定要件や手続き、必要書類を解説
業績の悪化や予期せぬコスト増により、資金繰りに不安を感じている経営者の方は少なくないでしょう。こうした厳しい経営環境を乗り越えるための一つの選択肢が、公的な融資保証制度であるセーフティネット保証5号です。この記事では、セーフティネット保証5号の認定を受けるための具体的な要件、申請手続きの流れ、必要書類について、令和6年12月からの制度変更点も踏まえて詳しく解説します。自社が対象となるかを確認し、資金調達の準備を進めましょう。
セーフティネット保証5号とは?制度の概要とメリット
経営の安定を支援するセーフティネット保証5号の目的と仕組み
セーフティネット保証5号は、中小企業信用保険法第2条第5項第5号に基づく制度で、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業の資金繰りを支援することを目的としています。経済環境の変化により売上などが減少している事業者が、市区町村長の認定を受けることで、信用保証協会の一般保証とは別枠での融資保証を利用できるようになります。
制度の基本的な流れは以下の通りです。
- 経済産業大臣が、業況が悪化している業種を「指定業種」として四半期ごとに公表します。
- 指定業種に属する事業を営む中小企業者が、本店所在地等の市区町村へ認定を申請します。
- 市区町村は、売上高の減少などの要件を満たすことを確認し、認定書を交付します。
- 事業者は認定書を金融機関へ提出し、信用保証協会付きの融資を申し込みます。
令和6年12月1日より制度運用が見直され、従来の売上高減少などに加え、為替変動や人手不足などを背景とした利益率の悪化も認定基準に追加されました。これにより、売上は維持しつつもコスト増で収益が圧迫されている事業者も支援対象となり、より実情に即した制度となっています。
認定を受けることによる融資条件上のメリット
セーフティネット保証5号の認定を受けることには、資金調達面で大きなメリットがあります。
- 保証限度額の別枠確保: 通常の保証枠(無担保8,000万円、普通保証2億円の合計最大2億8,000万円)とは別に、同額の保証枠が追加で利用可能になります。
- 高い保証割合: 借入額の80%を信用保証協会が保証するため、金融機関が融資を実行しやすくなります。
- 有利な保証料率: 通常の保証制度と比較して、信用保証料率が低減される場合があります。
- 借換への活用: 既存のプロパー融資や他の保証付き融治からの借り換えに利用でき、返済期間の延長や月々の返済負担軽減が図れます。
- 自治体による追加支援: 自治体によっては、認定事業者に対して独自の利子補給や保証料補助制度を設けている場合があります。
これらのメリットにより、すでに一般保証枠を使い切っている事業者でも追加融資の道が開けるほか、資金繰りの安定化や財務改善を図ることが可能となります。
認定の対象となる中小企業の要件
対象となる中小企業者の基本的な定義(法人・個人事業主)
セーフティネット保証5号の対象となるのは、中小企業信用保険法で定められた「中小企業者」です。業種ごとに資本金または従業員数のいずれかを満たす法人および個人事業主が該当します。
| 主な業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業など | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
申請を行うには、法人の場合は登記上の本店所在地、個人事業主の場合は主たる事業所の所在地がある市区町村で、実際に事業活動を行っていることが必要です。また、経済産業大臣が指定する業況の悪化している業種に属する事業を営んでいることが大前提となります。兼業の場合、営んでいる事業のうち少なくとも一つが指定業種に該当していることが前提となります。ただし、認定要件を満たすためには、企業全体および指定業種それぞれの売上高(または利益率)の減少が求められる点に注意が必要です。
自社が指定業種に該当するかの確認方法
自社の事業が指定業種に該当するかは、日本標準産業分類に基づいて正確に確認する必要があります。以下の手順で進めるのが一般的です。
- 中小企業庁のウェブサイト等で、最新のセーフティネット保証5号の指定業種リストを確認します。
- 自社の定款や確定申告書などを参考に、営んでいる事業が日本標準産業分類のどの細分類番号に該当するかを特定します。
- 特定した細分類番号が、指定業種リストに含まれているかを照合します。
- 業種名の注釈(「〇〇に限る」「〇〇を除く」など)を確認し、自社の事業が条件に合致するかを判断します。
- 判断が難しい場合は、申請先の市区町村担当課や最寄りの信用保証協会へ事前に相談します。
業種分類は一般的な呼称と異なる場合があるため、必ず分類の定義や内容例示まで確認することが重要です。
申請前に確認したい「指定業種」の判断でよくある誤解
指定業種の判断においては、形式的な情報だけで判断すると誤りを招くことがあります。申請前に以下の点を確認してください。
- 事業実態の重要性: 定款や登記簿に記載があっても、実際にその事業で売上が計上されていなければ認定の根拠にはなりません。
- 許認可との関係: 許認可証を持っているだけでは不十分で、その許認可に基づく事業活動の実績が必要です。
- 名称に惑わされない: 日本標準産業分類は統計上の分類であるため、自社の業種名と完全に一致しなくても、事業内容が分類の定義に合致していれば対象となります。
認定審査では、客観的な資料に基づき、事業の実態が重視されることを理解しておく必要があります。
セーフティネット保証5号の3つの認定基準(イ・ロ・ハ)
認定基準(イ):最近3か月間の売上高等が前年同期比5%以上減少
最も一般的に利用されるのが、売上高の減少を要件とする基準(イ)です。具体的には、直近3か月間の合計売上高等が、前年の同じ3か月間と比較して5%以上減少していることが必要です。創業して間もない事業者など、前年実績との比較が困難な場合には、比較対象期間を緩和する特例措置も設けられています。
令和6年12月以降、兼業者の申請様式が統一され、企業全体の売上高が5%以上減少していることに加え、指定業種の売上高も減少していることなどが要件となります。申請にあたっては、企業全体と指定業種それぞれの売上高を正確に算出し、減少率が基準を満たしていることを示す必要があります。
認定基準(ロ):製品等の価格転嫁が困難な状況(原油価格高騰など)
原油や石油製品の価格高騰により、コストは増加しているものの、それを販売価格に転嫁できず収益が圧迫されている事業者を対象とする基準です。認定を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 製品等の売上原価のうち、原油等の仕入価格が20%以上を占めていること。
- 最近1か月間の原油等の平均仕入単価が、前年同月比で20%以上上昇していること。
- 最近3か月間の売上高に占める原油等の仕入価格の割合が、前年同期を上回っていること。
この基準は、運送業や特定の製造業など、燃料費や原材料費の割合が高い業種で利用されることが多いです。申請には、仕入伝票や原価計算書など、各要件を証明する詳細な資料が必要となります。
認定基準(ハ):円高進行などによる売上高営業利益率の悪化
令和6年12月の制度見直しで新設された基準で、売上高が減少していなくても、利益率の悪化を理由に認定を受けられます。為替変動による原材料費の高騰や人件費の上昇といったコスト増により、本業の収益性が低下している事業者を支援するものです。
具体的な要件は、直近3か月間の月平均売上高営業利益率が、前年同期の月平均売上高営業利益率と比較して20%以上減少していることです。「売上は立っているが利益が出ない」という状況の事業者にとって、新たな資金繰り支援の選択肢となります。申請には、月次試算表など、営業利益の内訳が正確にわかる会計資料の提出が求められます。
認定要件における売上高等などの計算方法と注意点
売上高等の減少率を算出する際の基本的な計算方法
売上高等の減少率は、以下の計算式で算出します。
((前年同期3か月の合計売上高 ー 最近3か月の合計売上高) ÷ 前年同期3か月の合計売上高) × 100
「最近3か月」とは、原則として申請月の前月を含む3か月間を指します。売上高は、試算表や売上台帳などの客観的な資料に基づいた、消費税抜きの数値を記載します。
認定基準(ハ)で用いる売上高営業利益率の減少率は、以下の計算式で算出します。利益額ではなく「率」で比較する点に注意が必要です。
((前年同期の営業利益率 ー 最近3か月の営業利益率) ÷ 前年同期の営業利益率) × 100
計算結果の小数点以下の扱いは自治体によって異なるため、指定の様式や記載要領に従ってください。
創業1年未満など、前年実績がない場合の特例的な計算方法
創業から1年3か月未満の事業者など、前年同期の実績がない場合は、特例的な計算方法が認められています。例えば、最近1か月の売上高と、その直前の3か月間の月平均売上高を比較する方法などです。
このほか、店舗増加や事業譲受などにより、単純な前年比較が実態とそぐわない場合にも、運用緩和措置が適用されることがあります。これらの特例を利用する場合は、通常の様式とは異なる「創業者用」などの専用様式で申請する必要があり、創業時期を証明する開業届の写しなどを添付します。どの特例が適用可能か、事前に市区町村の窓口へ相談することが推奨されます。
計算時の注意点(比較対象期間や兼業の場合など)
認定要件の計算にあたっては、いくつかの注意点があります。誤った計算は認定の遅れや不受理につながるため、慎重に確認しましょう。
- 比較対象期間の正確性: 実績が確定している最新の月を基準に「最近3か月」を設定します。原則として申請月の前月または前々月を含める必要があります。
- 兼業者の売上区分: 企業全体の売上高と、指定業種に該当する事業の売上高を明確に分けて集計し、それぞれの数値を申請書に記載する必要があります。
- 売上高の範囲: 計算に用いる売上高は、本業による経常的な収入のみです。補助金収入や固定資産売却益などの営業外収益・特別利益は含めません。
- 数値の整合性: 申請書に記載する数値は、添付する試算表や売上台帳などの根拠資料と完全に一致している必要があります。
申請から認定書交付までの手続きの流れ
申請準備から認定書交付までの全体的なステップ
セーフティネット保証5号の認定手続きは、概ね以下の流れで進みます。
- 要件の確認: 自社が指定業種に属し、売上高減少などの認定基準を満たすか試算します。
- 必要書類の準備: 市区町村指定の申請書や売上高を確認できる資料、履歴事項全部証明書などを揃えます。
- 市区町村窓口への申請: 本店所在地(個人事業主は主たる事業所)の市区町村商工担当課へ書類を提出します。金融機関による代理申請も一般的です。
- 認定書の交付: 審査(通常、数日〜1週間程度)を経て、要件を満たすと判断されれば認定書が交付されます。
認定書は融資を確約するものではなく、あくまで保証申し込みの資格を証明するものです。認定書取得後、金融機関での融資審査が本格的に始まります。
申請窓口(市区町村の商工担当課など)と提出方法
申請窓口は、法人の本店所在地または個人事業主の主たる事業所がある市区町村の商工担当課などになります。提出方法は、窓口への持参が基本ですが、自治体によっては郵送や電子申請(SNポータル等)に対応している場合もあります。
融資を相談している金融機関に手続きを代行してもらう代理申請も可能です。その場合は、金融機関宛ての委任状が必要となります。代理申請を利用すると、書類作成のサポートを受けられたり、申請手続きの手間を省けたりするメリットがあります。事前に申請先の自治体のウェブサイトで、受付時間や提出方法、必要書類の詳細を確認しておきましょう。
認定書取得後の流れと金融機関への申込時の注意点
認定書を取得した後は、速やかに金融機関へ保証付き融資の申し込みを行う必要があります。その際には、以下の点に注意してください。
- 認定書の有効期間: 認定書の有効期間は発行日から30日間です。この期間内に信用保証協会への保証申し込みを完了させる必要があります。
- 別途行われる金融審査: 認定はあくまで保証利用の前提条件であり、融資の可否は金融機関と信用保証協会の審査によって最終的に判断されます。
- 申請内容との整合性: 認定申請時に提出した数値と、融資審査で提出する決算書等の数値に大きな乖離がないように注意が必要です。
有効期間内に手続きを進められるよう、認定書取得後はすぐに金融機関の担当者と連携し、融資申込手続きを進めることが重要です。
申請に必要な書類と準備のポイント
全ての申請で共通して必要な基本書類一覧
セーフティネット保証5号の申請には、どの認定基準で申請する場合でも共通して必要となる基本書類があります。
- 認定申請書: 市区町村が指定する様式(通常2部)。令和6年12月以降の新様式を使用します。
- 事業の実在・所在地確認書類: 法人は履歴事項全部証明書(3か月以内のもの)、個人事業主は直近の確定申告書の写しなど。
- 指定業種を営んでいることを疎明する書類: 許認可証の写し、取扱商品がわかるパンフレット、会社のウェブサイトのコピーなど。
- 委任状: 金融機関が代理申請する場合に必要です。
自治体によって必要部数や追加で求められる書類が異なる場合があるため、事前にウェブサイト等で確認してください。
認定基準(イ)の申請で追加となる書類(売上高比較表など)
売上高の減少を理由とする認定基準(イ)で申請する際は、基本書類に加え、売上高の減少を証明するための資料が必要です。具体的には、申請書に記入した数値の根拠となる、月別の売上高が確認できる試算表や売上台帳の写しなどが該当します。
多くの自治体では、企業全体の売上高と指定業種の売上高を分けて記入する「売上高比較表」などの補助様式の提出も求めています。令和6年12月以降の運用では、こうした売上高の根拠資料の提出が必須化されており、申請数値と資料の整合性が厳格に確認されます。
認定基準(ロ)または(ハ)で必要となる追加書類
原油高を理由とする基準(ロ)では、売上関係の資料に加え、原油等の仕入単価や仕入額を証明する資料(仕入伝票、請求書、原価計算書など)が必要です。各要件を満たしていることを客観的な数値で示す必要があります。
利益率の悪化を理由とする基準(ハ)では、営業利益の変動を証明する資料が不可欠です。具体的には、比較対象期間の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益が明記された月次損益計算書や試算表が必要となります。この基準では数値の信頼性が重視されるため、税理士が確認した試算表など、客観性の高い資料を準備することが重要です。
セーフティネット保証5号に関するよくある質問
指定業種のリストはどのくらいの頻度で更新されますか?
指定業種リストは、経済状況を反映するため、原則として3か月ごと(四半期に一度)見直されます。そのため、申請を検討する都度、中小企業庁のウェブサイトなどで最新の指定業種リストを確認する必要があります。
認定申請に費用はかかりますか?
市区町村への認定申請自体に手数料はかかりません。ただし、履歴事項全部証明書の発行手数料など、添付書類の取得にかかる実費は自己負担となります。また、行政書士などの専門家に申請代行を依頼した場合は、別途報酬が発生します。
認定書の有効期間はどのくらいですか?
認定書の有効期間は、発行日から起算して30日間です。この期間は、融資が実行されるまでの期間ではなく、金融機関から信用保証協会へ保証申し込みを行うまでの期限を指します。期間を過ぎると認定書は無効となり、再申請が必要になるため注意が必要です。
認定を受けると、必ず融資を受けられますか?
いいえ、必ずしも融資を受けられるわけではありません。認定は、あくまで信用保証協会の別枠保証を利用する「資格」を得たことを証明するものです。実際の融資実行には、金融機関および信用保証協会による事業の返済能力や将来性などを評価する金融審査を通過する必要があります。
万が一認定されなかった場合の主な原因と対処法
認定されなかった場合の主な原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 売上高や利益率の減少率が、認定基準を満たしていなかった。
- 営んでいる事業が、指定業種の定義に合致しないと判断された。
- 申請書類の数値と、根拠資料の数値に相違があった。
- 必要書類に不備があった。
対処法としては、まず市区町村の担当窓口に不認定の理由を確認します。書類の不備や計算ミスであれば、修正して再申請することが可能です。もし5号の要件を満たさない場合でも、セーフティネット保証4号や他の公的融資制度を利用できる可能性があるため、金融機関や商工会議所などの支援機関に相談してみましょう。
まとめ:セーフティネット保証5号の要件を確認し、資金繰り改善へ
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業にとって、資金繰りを安定させるための重要な支援制度です。認定を受けるには、自社が指定業種に該当することを確認した上で、売上高の減少(基準イ)、原油価格高騰の影響(基準ロ)、または利益率の悪化(基準ハ)という3つの基準のいずれかを満たす必要があります。特に、令和6年12月からは利益率の悪化も要件に追加され、売上が維持できていてもコスト増に苦しむ事業者が利用しやすくなりました。申請には、売上台帳や試算表といった客観的な根拠資料の準備が不可欠であり、認定書の有効期間は30日と短いため計画的な手続きが求められます。まずは自社の状況がどの基準に合致するかを検討し、市区町村の担当窓口や取引金融機関に相談することから始めましょう。

