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セーフティネット保証の「最近1ヶ月」とは?売上高の定義・計算方法と緩和要件を解説

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セーフティネット保証の申請を準備する際、「最近1ヶ月の売上高」という要件の具体的な解釈で迷う事業者は少なくありません。いつからいつまでの売上を、どのように計算し、何と比較すればよいのかを正確に理解することが、認定を受けるための第一歩となります。この記事では、セーフティネット保証における「最近1ヶ月」の定義、売上高の計算方法、比較対象期間、そして必要書類までを分かりやすく解説します。

目次

セーフティネット保証における「最近1ヶ月」の定義と計算方法

「最近1ヶ月」とは申請月またはその前月の実績を指す

セーフティネット保証の認定申請で売上高の減少要件を判定する際の「最近1ヶ月」とは、原則として申請する月の前月を指します。例えば、10月に申請する場合、9月の売上高が「最近1ヶ月」の実績となります。 ただし、月次決算の締め日などの都合で前月の売上高が確定していない場合は、例外的に申請月の前々月を「最近1ヶ月」として申請することが認められています。

「最近1ヶ月」の定義に関する注意点
  • 実績値での申請が必須であり、見込みの売上高で申請することはできません。
  • 原則として、申請月の前々月より前の月を「最近1ヶ月」とすることはできません。
  • 申請者は、売上高が確定している直近の月を選択し、その月を基準に比較対象となる前年同月の売上高などを算出します。

売上高の具体的な計算方法と集計時の注意点

売上高の計算には、企業の主たる事業活動から得られる収益の合計額を用います。具体的には、試算表や売上台帳といった帳簿書類に基づいて対象月の売上高を集計します。 集計時には、以下の点に注意が必要です。

売上高の集計における注意点
  • 補助金収入や固定資産売却益などの営業外収益は、原則として売上高に含めません。
  • 消費税の扱いは、比較対象となる前年の売上高と条件を統一します(例:両方とも税抜で計算)。
  • 複数の帳票から数値を転記する際は、転記ミスや集計漏れがないかを十分に確認します。
  • 申請書に記載する売上高は、根拠資料として提出する試算表などの数値と完全に一致させる必要があります。
  • 売上高の減少率は、自治体の指示に従い小数点第2位以下を切り捨てるなど、計算方法を正確に適用します。

比較対象となる期間は原則として前年同月

売上高が減少したことを確認するための比較対象期間は、原則として前年の同じ月です。例えば、「最近1ヶ月」が今年の9月であれば、比較対象は前年の9月となります。これは、多くの事業に存在する季節による売上変動の影響を排し、正確な業況の変化を把握するためです。 「最近1ヶ月」の実績と、その後の2ヶ月間の見込み売上高を合計した「最近3ヶ月間」の売上高で申請する場合も同様で、比較対象は前年同期の3ヶ月間の売上高となります。 ただし、災害の発生などにより前年同月との比較が適切でないと判断される特別な事情がある場合は、前々年を比較対象とするなど、弾力的な運用が認められることもあります。

複数事業・店舗を持つ場合の売上高の集計範囲

複数の事業や店舗を展開している事業者の場合、売上高は原則として企業全体の合計額で集計します。特定の店舗や不採算事業だけの売上高を抜き出して申請することは認められません。 ただし、セーフティネット保証5号の認定申請で、指定業種とそれ以外の業種を兼業している場合は例外です。このケースでは、企業全体の売上高に加えて、指定業種に属する事業の売上高を個別に集計し、両方の減少率が要件を満たしているかを示す必要があります。そのため、日頃から事業ごとの売上高を明確に区分して管理しておくことが重要です。

前年比較が困難な場合の認定基準の緩和措置

創業1年未満の事業者向けの特例措置

創業から1年未満の事業者は、比較対象となる前年同月の売上実績がありません。このような事業者のために、認定基準の緩和措置が設けられています。 具体的には、業歴が3ヶ月以上1年1ヶ月未満の事業者などが対象となり、以下のような方法で売上高を比較することが認められています。

創業者向けの売上高比較方法の例
  • 「最近1ヶ月」の売上高と、「最近1ヶ月を含む過去3ヶ月間」の平均売上高を比較する。
  • 「最近1ヶ月」の売上高と、令和元年12月の売上高を比較する(※新型コロナウイルス関連の特例)。
  • 「最近1ヶ月」の売上高と、令和元年10月~12月の平均売上高を比較する(※同上)。

店舗増加など事業拡大により前年比較が適さない場合の特例

前年以降に店舗を増やすなどの事業拡大を行った場合、企業全体の売上高は増加傾向にあるため、単純な前年比較では実質的な業況悪化を証明できないことがあります。 このような事業者も、実態に即した判断がなされるよう特例措置の対象となります。具体的には、創業者向けの緩和措置と同様に、「最近1ヶ月」の売上高と「最近1ヶ月を含む過去3ヶ月間」の平均売上高を比較する方法などが利用可能です。 この特例を申請する際は、事業拡大の事実を客観的に証明するため、新規店舗の賃貸借契約書や営業許可証などの追加書類の提出を求められる場合があります。

最近2ヶ月平均との比較や最近6ヶ月平均との比較

月々の売上変動が激しい業種など、単月での比較が事業の実態を適切に反映しないケースがあります。 このような状況に対応するため、市区町村によっては、より柔軟な比較方法を認めている場合があります。例えば、「最近1ヶ月」の売上高の代わりに、「最近6ヶ月以内の平均」売上高を用い、「前年同期の平均」売上高と比較するといった方法です。 この緩和措置を利用する際は、申請書の様式が異なる場合や、適用理由を明記する必要があるため、事前に申請先の自治体に確認することが重要です。

申請に必要な売上高減少を証明する書類

必須書類:市区町村指定の認定申請書

セーフティネット保証の認定申請で、まず必須となるのが市区町村が指定する様式の認定申請書です。申請書は、自治体のウェブサイトからダウンロードするか、商工担当課などの窓口で入手できます。 申請書は通常2部提出し、1部が市区町村の控え、もう1部が審査後に認定書として返却されます。

申請書作成時の注意点
  • 申請する保証の号(4号、5号など)や事業者の状況(兼業者など)に応じた正しい様式を使用する。
  • 売上高の減少率は、小数点第2位以下を切り捨てて記入するなど、指定された記載ルールを守る。
  • 記入内容に誤りがないか、提出前に十分確認する。

売上高を確認できる書類(月別試算表・売上台帳など)

申請書に記入した売上高が事実であることを証明するため、根拠となる資料の提出が必要です。 具体的には、以下のような書類が該当します。

売上高の根拠資料の例
  • 税理士などが作成した月別試算表総勘定元帳
  • 自社で作成している売上台帳
  • 売上の入金履歴が確認できる預金通帳の写し

これらの書類は、「最近1ヶ月」と「前年同月」など、申請書に記載したすべての期間の売上高が明確に確認できる必要があります。

法人と個人事業主で異なる本人確認・事業実態確認書類

申請者がその市区町村内で事業を営んでいることを証明する書類も必要です。必要書類は、法人と個人事業主で異なります。

事業実態の確認書類 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)の写し(発行後3ヶ月以内) 直近の確定申告書の写し(税務署の収受印があるもの)や開業届の写し
許認可(該当する場合) 営業に必要な許認可証の写し 営業に必要な許認可証の写し
法人と個人事業主の必要書類の違い

電子申告(e-Tax)を利用している場合は、確定申告書のデータとあわせて受信通知(メール詳細)を提出します。

売上高証明書類で不備とみなされやすいケースと対策

売上高を証明する書類に不備があると、審査が遅れたり、認定が受けられなかったりする原因となります。 特に注意すべき不備の例と、その対策は以下の通りです。

よくある不備と対策
  • 【不備】申請書の数値と根拠資料の数値が一致していない。 → 【対策】提出前に必ず突合確認を行う。
  • 【不備】資料に会社名や対象期間が記載されておらず、正式な書類と判断できない。 → 【対策】自作の帳票には社名や期間を明記し、必要に応じて社印を押す。
  • 【不備】どの数値が該当する月の売上高なのか分かりにくい。 → 【対策】該当箇所にマーカーを引く、あるいは手書きで補足説明を加える。
  • 【不備】兼業者の場合、業種ごとの売上高が区分されていない。 → 【対策】日頃から部門別の会計管理を徹底し、業種ごとの売上が分かる資料を作成する。

参考:セーフティネット保証4号・5号の制度概要

セーフティネット保証4号(突発的災害)の概要

セーフティネット保証4号は、自然災害や感染症の拡大など、突発的な災害によって経営に支障が生じている中小企業者を支援する制度です。経済産業大臣が対象となる地域と期間を指定して発動されます。 この制度の大きな特徴は、信用保証協会が融資額の100%を保証する点です。これにより、金融機関は貸し倒れリスクを負うことなく融資を実行しやすくなります。認定を受けるには、指定地域で1年以上事業を行っており、災害等の影響で最近1ヶ月の売上高が前年同月比で20%以上減少していることなどが要件となります。

セーフティネット保証5号(業況悪化業種)の概要

セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している特定の業種に属する中小企業者を支援する制度です。対象業種は、日本標準産業分類に基づき経済産業大臣が指定し、定期的に見直されます。 この制度では、信用保証協会が融資額の80%を保証します。認定の主な要件は、指定業種に属する事業を行っており、最近3ヶ月間の売上高が前年同期比で5%以上減少していることなどです。不況期における資金繰り支援策として、幅広い事業者に利用されています。

4号と5号の主な違い(対象者・指定要件)

セーフティネット保証4号と5号は、目的や要件にいくつかの違いがあります。

項目 4号(突発的災害) 5号(業況悪化業種)
発動要因 自然災害、感染症など 全国的な業況悪化
指定対象 地域 業種
保証割合 100%保証 80%保証
売上高減少要件 最近1ヶ月の売上高が20%以上減少 最近3ヶ月の売上高が5%以上減少
セーフティネット保証4号と5号の主な違い

4号は甚大な被害に対する緊急性の高い措置、5号は広範な景気後退に対応する措置という位置づけになります。

セーフティネット保証の申請から認定までの基本的な流れ

セーフティネット保証を利用するための手続きは、大きく3つのステップで進みます。

申請から認定までの基本的な流れ
  1. ステップ1:対象要件の確認と必要書類の準備

自社が指定地域(4号)や指定業種(5号)に該当するかを確認します。次に、売上高の減少率が認定基準を満たしているかを計算し、市区町村のウェブサイトなどから申請書を入手して、売上台帳などの添付書類とともに準備します。

  1. ステップ2:市区町村の商工担当課などへの認定申請
  2. 準備した書類一式を、本店所在地(個人事業主は主たる事業所)を管轄する市区町村の担当窓口に提出します。金融機関による代理申請が可能な場合もあります。窓口で書類が受理されると、審査が開始されます。

  3. ステップ3:認定書の発行と金融機関への融資申込
  4. 審査に通ると、市区町村から認定書が発行されます。認定書の有効期間内(通常30日)に、この認定書を金融機関に提出して保証付き融資を申し込みます。認定書の取得は融資の実行を確約するものではなく、この後に金融機関および信用保証協会による金融審査が行われます。

セーフティネット保証の売上高計算に関するよくある質問

Q. 「最近1ヶ月」の売上が確定していない場合、見込みで申請できますか?

いいえ、できません。「最近1ヶ月」の売上高は確定した実績値である必要があり、見込み額での申請は認められていません。 もし申請する時点で前月の売上高が確定していない場合は、そのさらに前の月(前々月)の実績値を「最近1ヶ月」として申請することが可能です。例えば、10月中の申請で9月の売上が未確定の場合、8月の売上実績を用いて申請します。

Q. 個人事業主の場合、「最近1ヶ月」の売上はどのように計算すればよいですか?

個人事業主の場合も、法人と同様に月別の売上高を正確に集計する必要があります。日々の取引を記録した売上台帳、請求書の控え、売上入金が確認できる預金通帳などを基に、対象月の売上合計額を算出してください。 確定申告を白色申告で行っており、月次集計をしていない場合でも、この認定申請のためには遡って月別の売上を集計する作業が必要です。作成した売上集計表などは、申請の根拠資料として提出します。

Q. 申請する市区町村は、本社の所在地と事業所の所在地のどちらですか?

申請先は、法人の場合は登記上の本店所在地個人事業主の場合は主たる事業所の所在地を管轄する市区町村が原則です。 ただし、登記上の本店所在地と、実際の事業活動を行っている場所が異なる場合(例:登記上は自宅だが、主たる営業活動は別の店舗で行っている)、事業の実態がある市区町村で申請することが求められるケースがあります。その際は、事業所の賃貸借契約書などを提出し、その場所で事業を営んでいることを証明する必要があります。不明な場合は、事前に自治体の担当窓口に確認しましょう。

まとめ:セーフティネット保証の売上高要件を正しく理解し、スムーズな申請準備を

セーフティネット保証の申請における「最近1ヶ月」とは、原則として申請月の前月の確定した売上実績を指します。売上高の計算では営業外収益を除外し、試算表などの根拠資料と数値を完全に一致させることが求められます。比較対象は前年同月が基本ですが、創業1年未満の事業者や事業拡大があった場合には、実態に合わせた特例措置が用意されています。申請手続きを円滑に進めるには、市区町村指定の申請書に加え、売上高の減少を客観的に証明する月別試算表や売上台帳を不備なく準備することが不可欠です。本記事で解説した基本ルールを押さえ、不明点があれば申請先の自治体担当窓口へ事前に確認し、万全の体制で手続きに臨みましょう。

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