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訴訟取り下げ時の弁護士費用は誰が負担?着手金返還や報酬金の扱いを解説

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訴訟の当事者として手続きを進める中で、訴えを取り下げる、あるいは相手方から取り下げられるという状況は、今後の見通しが立たず不安に感じられることでしょう。特に、すでに支払った弁護士費用がどう扱われるのか、追加で支払いが発生するのかといった金銭的な問題は、重要な関心事かと思います。この記事では、訴訟の取り下げに伴う弁護士費用(着手金・報酬金)の基本的な考え方から、原告・被告それぞれの立場での費用の扱い、和解時の注意点までを網羅的に解説します。

目次

訴訟取り下げに関わる弁護士費用の内訳

着手金:事件の依頼時に支払う費用

着手金は、弁護士が事件の対応を開始するための対価として支払う費用です。事件の結果が成功か否かにかかわらず発生し、訴訟を遂行するための初期費用としての性質を持っています。支払時期は、弁護士との委任契約を締結する際が一般的です。訴訟の途中で和解したり、訴えを取り下げたりした場合でも、原則として返還されない点に注意が必要です。ただし、委任契約書に返還に関する特段の定めがある場合は、その内容に従います。依頼者はこの性質を十分に理解した上で契約を締結することが重要です。

報酬金(成功報酬):事件の成果に応じて支払う費用

報酬金は、事件が終了した際に得られた経済的利益に応じて支払う成功報酬です。勝訴判決や和解の成立など、依頼者が具体的な利益を得た場合に発生します。訴訟を取り下げた場合でも、それが相手方からの支払いを受けるなど実質的な目的達成を伴うものであれば、得られた利益を基準に報酬金が算定されることがあります。具体的な算定基準は委任契約書に明記されており、その契約内容に基づいて金額が決定されます。

実費・日当:手続きや出張で発生する費用

実費とは、弁護士が訴訟を進めるために実際に支出した経費のことです。日当は、弁護士が裁判所への出廷などで事務所外の活動を行った場合に発生する手当を指します。これらは着手金や報酬金とは別に請求されるのが一般的で、事件終了時に精算されることが多い費用です。

実費・日当の具体例
  • 実費: 裁判所に納める印紙代、予納郵券(郵便切手)代、記録謄写費用、交通費など
  • 日当: 遠方の裁判所への出廷や証人尋問への立ち会いなどに伴う弁護士の時間的拘束に対する費用

弁護士との委任契約時に確認すべき費用関連の重要事項

弁護士と委任契約を結ぶ際には、特に訴訟が途中で終了した場合の費用に関する取り決めを十分に確認することが不可欠です。契約内容に不明な点があれば、署名・捺印する前に必ず弁護士に説明を求め、後のトラブルを未然に防ぎましょう。

委任契約時の主な確認事項
  • 訴えの取り下げや和解など、判決以外で事件が終了した場合の報酬金の発生条件
  • 着手金の返還が認められる場合の条件や手続き
  • 契約を中途解約した場合の費用の清算方法や違約金の有無
  • 消費者契約法に照らして不当に不利な条項が含まれていないか

【原告側】訴えを取り下げる場合の弁護士費用

着手金は原則として返還されない

原告が自らの都合で訴えを取り下げる場合、すでに支払った着手金は原則として返還されません。着手金は、あくまで事件処理を依頼し、弁護士が活動を開始したことへの対価であり、結果の成否とは切り離されているためです。ただし、弁護士側の明らかな任務懈怠(怠慢)など、信頼関係を損なう原因が弁護士側にあり、それが理由で取り下げや解任に至った場合は、例外的に着手金の一部または全部の返還が認められる可能性があります。最終的には委任契約書の規定に基づいて判断されます。

報酬金は取り下げのタイミングや委任契約の内容で決まる

訴えの取り下げ時に報酬金が発生するかどうかは、その背景にある実質的な理由によって大きく異なります。相手方から何らの支払いも受けずに一方的に請求を断念する形で取り下げる場合、依頼者に経済的利益は生じていないため、原則として報酬金は発生しません。一方で、訴訟外での交渉が進み、相手方が請求に応じることを条件として訴えを取り下げる場合は、実質的に勝訴や和解と同じ成果を得たと評価されます。この場合、委任契約の内容に基づき、得られた経済的利益に応じた報酬金が発生する可能性が高くなります。

判決直前など訴訟終盤での取り下げは報酬金が発生する可能性

訴訟の審理が終盤に差し掛かり、判決言渡しが近い段階で訴えを取り下げる場合、弁護士はすでに訴訟活動の大部分を完了しています。このような状況では、たとえ明確な経済的利益がなくても、弁護士のそれまでの活動に報いるという観点から、委任契約の特約(みなし成功報酬など)に基づいて一定の報酬金が発生することがあります。

【被告側】訴えを取り下げられた場合の弁護士費用

相手方(原告)への弁護士費用請求は原則として認められない

原告が訴えを取り下げたことで訴訟が終了した場合、被告は応訴のために支出した弁護士費用を原告に請求することは原則としてできません。日本の民事訴訟では、弁護士費用は各当事者がそれぞれ負担するという「各自負担の原則」が採用されているためです。したがって、たとえ原告の請求に全く理由がなかったとしても、被告は自身が依頼した弁護士への着手金や報酬金を自己負担する必要があります。

例外的に費用請求が認められるケース(不当訴訟など)

ごく例外的な状況では、被告が負担した弁護士費用を損害賠償として原告に請求できる場合があります。これは、原告の提訴自体が違法な行為(不法行為)と評価される「不当訴訟」と判断された場合に限られます。具体的には、原告が勝訴の見込みがないことを十分に認識しながら、嫌がらせ目的などで意図的に訴訟を起こしたような悪質なケースが該当し、認められるハードルは非常に高いです。

和解による取り下げの場合の費用負担

和解条項における弁護士費用の取り決め方

裁判上の和解や裁判外の示談を経て訴えを取り下げる場合、その和解条項の中で弁護士費用を含む費用の負担について当事者間の合意で自由に定めることができます。実務上は「解決金」などの名目で支払われる金銭に弁護士費用分も織り込んで金額を調整することが多く、「訴訟費用は各自の負担とする」と定めるのが一般的です。

「訴訟費用は各自の負担とする」という条項の解釈

和解条項でよく使われる「訴訟費用は各自の負担とする」という文言は、法律上の「訴訟費用」(裁判所に納めた印紙代や郵便切手代など)を、それぞれが支払った分は相手に請求しない、という意味です。この「訴訟費用」に弁護士費用は直接含まれません。しかし、実務上はこの条項がある場合、弁護士費用についても互いに請求しないという趣旨が含まれていると解釈するのが一般的です。

訴訟取り下げの基本的な手続きとルール

訴えの取り下げが可能な時期

訴えの取り下げは、訴訟が裁判所に係属している間、つまり判決が確定するまではいつでも可能です。第一審で判決が出た後でも、控訴されていれば控訴審の審理中に行うことができます。ただし、終局判決が出た後に訴えを取り下げると、後述する「再訴禁止」の効力が発生するため注意が必要です。

相手方の同意が必要になるタイミングと条件

訴訟がある程度進行した段階で原告が一方的に取り下げることは、被告の利益を害する可能性があるため、被告の同意が必要になります。具体的には、被告が準備書面を提出したり、口頭弁論で意見を述べたりした後は、同意がなければ取り下げはできません。これは、応訴した被告が判決によって紛争の白黒をはっきりさせたいと考える利益を保護するためです。なお、被告が取り下げに同意しなくても、取り下げ書面を受け取ってから2週間以内に異議を述べなければ、法律上、同意したものとみなされます。

訴訟取り下げに関するよくある質問

一度取り下げた訴訟を、もう一度提起することは可能ですか?

訴えを取り下げると、その訴訟は初めからなかったものとして扱われるため、原則として同じ内容で再び訴訟を提起(再訴)することは可能です。ただし、重要な例外として、終局判決(第一審や控訴審の判決)が出た後に訴えを取り下げた場合は、「再訴禁止の原則」により、同一の訴えを提起することはできなくなります。また、取り下げにより時効の完成猶予・更新の効力が失われる点にも注意が必要です。

訴訟の取り下げを相手方が拒否した場合、どうなりますか?

被告の同意が必要な段階で被告が取り下げを拒否し、異議を申し立てた場合、取り下げの効力は発生せず、訴訟はそのまま続行されます。原告は訴訟を続ける意思がなくても、判決が出るまで手続きに対応せざるを得なくなります。被告側としては、勝訴判決を得ることで紛争を確定的に解決したい場合などに、取り下げを拒否することがあります。

弁護士を解任して訴訟を取り下げる場合、費用はどうなりますか?

弁護士を解任してから自分で訴訟を取り下げる場合でも、解任時点までの弁護士費用を精算する義務があります。着手金は原則返還されませんが、報酬金については、解任までの弁護士の活動内容や貢献度に応じて、協議の上で支払額が決まることが一般的です。正当な理由なく一方的に解任した場合は、委任契約に基づき、本来得られたであろう報酬額に相当する金額を請求される可能性もあります。

「訴訟費用」と「弁護士費用」の違いとは?

「訴訟費用」と「弁護士費用」は、法律上明確に区別される異なる概念です。両者の主な違いは以下の通りです。

項目 訴訟費用 弁護士費用
内容 裁判所に納める印紙代、郵便切手代、証人の日当・旅費など 弁護士に支払う着手金、報酬金、法律相談料、日当など
根拠 民事訴訟費用等に関する法律 弁護士と依頼者間の委任契約
負担の原則 敗訴者負担(負けた側が勝った側の分も負担する) 各自負担(各当事者が自身の弁護士費用を負担する)
「訴訟費用」と「弁護士費用」の比較

まとめ:訴訟取り下げ時の弁護士費用で損をしないための重要ポイント

本記事では、訴訟の取り下げに関わる弁護士費用の仕組みについて解説しました。まず重要なのは、着手金は事件処理の対価として原則返還されず、報酬金は実質的な経済的利益の獲得に応じて発生するという基本原則です。原告側か被告側かによって費用の考え方は異なり、特に被告側は「弁護士費用各自負担の原則」により、相手方への費用請求が原則できない点を理解しておく必要があります。例外的に不当訴訟として損害賠償請求できる道もありますが、そのハードルは極めて高いのが実情です。最終的な費用の取り扱いは、すべて弁護士との委任契約書の内容に左右されます。ご自身の状況で費用がどうなるか正確に把握するためにも、まずは契約書を再確認し、疑問点があれば速やかに担当弁護士へ相談しましょう。

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