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刑事裁判の証人尋問とは?召喚された際の義務・流れ・事前準備を解説

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突然、裁判所から呼出状が届き、刑事裁判の証人として何をすべきか、強い不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。証人として法廷に立つことは多くの人にとって未知の経験であり、その役割や義務、当日の流れについて正確な知識を持つことが、不安を和らげる第一歩となります。この記事では、刑事裁判における証人尋問の目的から、証人が負う法的な義務、当日の手続き、事前準備、そして証人を保護するための制度まで、全体像を体系的に解説します。

目次

刑事裁判における証人尋問の基本

証人尋問の目的と刑事裁判における役割

刑事裁判における証人尋問は、裁判所が被告人の有罪・無罪量刑を判断するために、証拠を直接調べ、事実を認定することを目的とする手続きです。日本の刑事裁判では、法廷で直接証拠を取り調べる「直接主義」と、口頭でのやり取りを中心とする「口頭主義」が採用されています。

そのため、たとえ捜査段階で作成された供述調書が存在しても、その内容に弁護側が同意しない場合、証人が法廷で直接語る証言が極めて重要な証拠となります。証人の言葉だけでなく、その態度や表情なども含めて、裁判官や裁判員が証言の信用性を判断するための重要な材料となります。特に、事実関係に争いがある事件では、証言の内容が判決を左右する決定的な要因となることも少なくありません。

証人として召喚される対象者と選定の経緯

証人として裁判所に呼ばれるのは、事件に関する何らかの情報を持つ人物です。選定は、検察官または弁護人が裁判所に証人尋問を請求し、裁判所が必要性を認めた場合に決定されます。採用が決定すると、裁判所から呼出状(召喚状)が送付されます。

主な証人の種類
  • 事実に関する証人: 事件の目撃者、被害者、捜査を担当した警察官など、事件の事実関係について証言する人。
  • 情状に関する証人: 被告人の家族や雇用主など、被告人の普段の人柄や更生の可能性といった、刑の重さを決める上で考慮すべき事情(情状)について証言する人。

混同されやすい手続き(民事尋問・証人喚問)との違い

刑事裁判の証人尋問は、民事裁判での証人尋問や、国会で行われる証人喚問とは目的や性質が異なります。

手続きの種類 目的 主な主体 根拠 偽証罪の適用
刑事裁判の証人尋問 被告人の有罪・無罪や量刑の判断 裁判所 刑事訴訟法 あり
民事裁判の証人尋問 当事者間の権利義務に関する事実の認定 裁判所 民事訴訟法 あり
国会の証人喚問 国政調査(立法や行政の監視) 衆議院・参議院 議院証言法 あり
刑事尋問・民事尋問・証人喚問の比較

刑事裁判では被告人は当事者であり証人とはなりませんが、民事裁判では当事者自身が尋問を受ける「当事者尋問」という手続きがあります。

情状証人として証言する場合の役割と注意点

情状証人とは、被告人が有罪であることを前提として、その刑を少しでも軽くしてもらうために、被告人にとって有利な事情を証言する証人です。主に被告人の家族、友人、勤務先の上司などがこの役割を担います。

情状証人の重要な役割は、被告人の更生を具体的にどのように支えていくかを裁判官に示し、執行猶予付き判決などの寛大な処分を求めることです。単に「良い人です」と感情に訴えるだけでは不十分で、被告人の監督計画などを現実的かつ具体的に述べることが、証言の信用性を高める上で重要となります。

証人が負う法的義務と責任

出頭・宣誓・証言という3つの重要な義務

証人として召喚された場合、国民が司法に協力する義務として、法律で定められた3つの重要な義務を負います。

証人が負う3つの基本義務
  • 出頭義務: 裁判所から召喚状で指定された日時に、必ず裁判所へ出頭する義務。
  • 宣誓義務: 証言の前に、良心に従って真実のみを述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓う義務。
  • 証言義務: 尋問者の質問に対し、原則として拒否することなく、自らの見聞きした事実をありのままに話す義務。

正当な理由なく出頭や証言を拒否した場合の罰則

証人が正当な理由なく上記の義務に違反した場合、法的な制裁が科される可能性があります。単に「仕事が忙しい」といった私的な都合は、通常、正当な理由とは認められません。

義務違反に対する主な罰則
  • 不出頭の場合: 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、裁判所は勾引状を発付し、強制的に法廷へ連行することもあります。
  • 宣誓・証言拒否の場合: 正当な理由なく宣誓や証言を拒むと、過料の制裁を受けることがあります。

虚偽の証言が招く「偽証罪」のリスクと正直に話す重要性

宣誓をした証人が、自分の記憶に反する内容を意図的に証言した場合、刑法上の「偽証罪」に問われます。偽証罪は3ヶ月以上10年以下の拘禁刑と定められており、罰金刑がない重い犯罪です。

たとえ被告人のためを思って嘘をついたとしても、偽証罪は成立します。重要なのは、証言が客観的な事実と一致しているかではなく、自身の記憶に忠実であるかという点です。記憶がないのに「あった」と証言したり、覚えているのに「覚えていない」と答えたりすることも偽証にあたります。記憶が曖昧な場合は、正直に「記憶にありません」と述べることが、自身を偽証罪のリスクから守る上で極めて重要です。

証人尋問当日の手続きと流れ

裁判所からの呼出状(召喚状)の受領から出廷まで

証人尋問当日の手続きは、裁判所からの呼出状を受け取るところから始まります。以下が一般的な流れです。

出廷までの流れ
  1. 裁判所から送付される呼出状(召喚状)を受け取る。
  2. 指定された日時に裁判所へ行き、受付を済ませる。
  3. 証人待合室で待機し、係官から手続きの説明を受ける。
  4. 「証人出頭カード」に必要事項を記入し、宣誓書に署名・押印する。

自分の順番が来るまで法廷に入ることはできず、他の証人の証言を聞くことも原則として許されません。

人定質問と宣誓の手順

法廷に入り、証言を始めるまでの手順は以下の通りです。

証言開始までの手順
  1. 名前を呼ばれたら法廷に入り、証言台の前に立つ。
  2. 裁判長から本人確認のための人定質問(氏名・生年月日など)を受ける。
  3. 起立し、事前に署名した宣誓書を手に持ち、内容を朗読して宣誓を行う。
  4. 裁判長から偽証罪に関する注意喚起を受け、着席して尋問が開始される。

主尋問、反対尋問、再主尋問の進行と内容

証人尋問は、主に以下の順序で進行します。

証人尋問の進行順序
  1. 主尋問: その証人を申請した側(検察官または弁護人)が、立証したい事実を明らかにするために行う質問。
  2. 反対尋問: 相手方が、主尋問での証言の信用性を確かめるため、矛盾点などを追及する質問。
  3. 再主尋問: 再び申請した側が、反対尋問で生じた疑問点を解消し、証言を補強するために行う質問。

裁判官による補充尋問が行われるケース

検察官と弁護人双方の尋問が終わった後、裁判官や裁判員が、判決を下す上で特に重要と考える点や、それまでの尋問で不明確だった点について直接質問することがあります。これを「補充尋問」といいます。裁判官が何に関心を持っているかを知る手がかりとなるため、判決の判断に影響を与える可能性のある重要な局面となる場合があります。

反対尋問で厳しい追及をされた際の心構え

反対尋問では、証言の信用性を揺さぶるために、厳しい口調や誘導的な質問がなされることがあります。そのような場面でも、証言の信頼性を損なわないために冷静な対応が求められます。

反対尋問に臨む心構え
  • 感情的にならず、常に冷静さを保つ。
  • 質問の意図が不明な場合は、遠慮なく聞き返す。
  • 聞かれたことに対してのみ、事実を淡々と簡潔に答える。
  • 推測や曖昧な記憶で答えず、覚えていないことは正直に「覚えていない」と述べる。
  • 相手の挑発的な態度に乗らない。

証人尋問に臨むための事前準備

証言内容の整理と弁護士との事前の打ち合わせ

証人尋問で的確な証言をするためには、事前の準備が不可欠です。実務では、弁護士などと行うこの準備を「証人テスト」と呼ぶこともあります。

主な事前準備の内容
  • 弁護士や検察官と、証言内容について綿密な打ち合わせを行う。
  • 関連資料(供述調書など)を読み返し、記憶を正確に呼び覚ます。
  • 主尋問で聞かれること、反対尋問で想定される追及をシミュレーションする。
  • 情状証人の場合は、被告人の更生支援策などを具体的に説明できるよう準備する。

当日に適した服装と必要な持ち物

証人として出廷する際の服装に厳格なルールはありませんが、裁判という公的な場にふさわしい清潔感のある身なりが望まれます。持ち物については、忘れ物がないように事前に確認しましょう。

当日の服装と持ち物
  • 服装: 清潔感のある落ち着いた服装(スーツやそれに準ずるもの)が望ましい。
  • 呼出状(召喚状): 受付で提示を求められることがあるため持参する。
  • 身分証明書: 本人確認のために持参する。
  • 認印: 宣誓書や出頭カードへの押印に必要(シャチハタは不可)。

証人に支払われる日当・旅費・宿泊費の概要

裁判所に出頭した証人には、法律に基づき、出頭に要した費用が支給されます。原則として尋問終了後に裁判所の会計窓口で受け取ることができます。

証人に支給される費用
  • 旅費: 自宅から裁判所までの往復交通費(実費相当額)。
  • 日当: 出頭に要した時間に応じて支払われる手当。
  • 宿泊費: 遠方からの出頭で宿泊が必要な場合に支給される。

ただし、被告人の親族などが情状証人となる場合、被告人の経済的負担を考慮してこれらの請求権を放棄することも一般的です。

会社への報告と休暇取得はどのように行うべきか

証人としての出廷は、法律で保障された国民の権利(公民権)の行使にあたります。会社員の場合、出頭のために仕事を休む必要がありますが、以下の手順で手続きを進めましょう。

会社での手続き
  • 上司に呼出状を提示し、証人として出頭する旨を報告する。
  • 就業規則を確認し、特別休暇(公務休暇など)の制度を利用して休暇を申請する。
  • 業務に支障が出ないよう、事前に同僚などへの引継ぎを済ませておく。

多くの会社では、公民権の行使を理由とする休暇取得を認めていますが、有給か無給かは会社の規定によります。

証人のプライバシーと安全を守るための保護制度

証人の顔や姿を隠す「遮蔽措置」の利用

証人が被告人や傍聴人の前で証言することに強い恐怖や圧迫感を感じ、十分に証言できないおそれがある場合、証言台と被告人席・傍聴席との間に「つい立て(遮蔽板)」を設置する措置がとられることがあります。これにより、証人は被告人などから姿を見られることなく、落ち着いて証言に集中できます。性犯罪の被害者や、報復のおそれが懸念される事件などで利用されます。

精神的な負担を軽減する「付添制度」とは

証人が著しい不安や緊張を覚えるおそれがある場合に、精神的な安定を図るため、信頼できる人が証言中に付き添うことが認められる制度です。付き添うのは、親族やカウンセラーなど、証人が安心できる人物です。特に子どもや犯罪被害者が証言する際の心理的負担を和らげるために活用されます。

身の危険が想定される場合の証人保護プログラム

証人のプライバシーや安全を確保するため、事件の性質に応じて様々な保護制度が用意されています。

主な証人保護制度
  • 証人特定事項の秘匿: 証人の氏名や住所などを被告人側に開示しないまま審理を進める措置。
  • 遮蔽措置: 証人と被告人や傍聴席との間に「つい立て」を設置する。
  • 付添制度: 精神的な安定のため、親族などが証言中に付き添う。
  • ビデオリンク方式: 裁判所内の別室からモニターを通じて尋問に参加し、被告人と直接顔を合わせることを避ける。

証人尋問に関するよくある質問

証言を拒否できる「正当な理由」とは具体的に何ですか?

証人は原則として証言を拒めませんが、法律で例外的に証言を拒否できる権利(証言拒絶権)が認められています。

主な証言拒絶権の根拠
  • 自己負罪拒否特権: 自身や配偶者、三親等内の血族、二親等内の姻族などが刑事訴追されたり、有罪判決を受けたりするおそれがある証言。
  • 職業上の守秘義務: 医師、弁護士、宗教家などが職務上知り得た他人の秘密に関する証言。

これらの正当な理由なく証言を拒否した場合は、罰則の対象となります。

証人尋問に自身の弁護士を付き添わせることはできますか?

一般の証人が、個人的に依頼した弁護士を証言台の横に付き添わせることは、原則として認められていません。ただし、被害者参加制度を利用している被害者証人が、委託した弁護士のサポートを受けることは可能です。

法廷に付き添うことはできなくても、証人として出頭する前に、自身の証言内容が法的にどのような意味を持つかなどについて、弁護士に相談しておくことは有効です。

記憶が曖昧な場合や忘れてしまった事項はどう答えるべきですか?

記憶が曖昧な点や、完全に忘れてしまったことについて質問された場合、無理に思い出そうとしたり、推測で答えたりしてはいけません。最も適切な対応は、正直に「覚えていません」または「記憶が定かではありません」と答えることです。不確かな情報を断定的に話すと、結果的に虚偽の証言となり、偽証罪を疑われるリスクを生じさせます。正直に記憶の限界を伝えることが、最も安全で誠実な態度です。

事前に準備したメモを見ながら証言することは許されますか?

証言はあくまで証人の記憶に基づいて行われるのが原則であるため、手元のメモを見ながら話すことは基本的に認められていません。しかし、日時や金額、専門的なデータなど、正確な記憶が困難な事項については、事前に裁判長の許可を得ることで、メモや資料を参照しながら証言することが例外的に許される場合があります。メモを確認したい場合は、尋問中に「メモを見てもよろしいでしょうか」と裁判長に許可を求める必要があります。

まとめ:刑事裁判の証人尋問、冷静に臨むためのポイント

本記事では、刑事裁判における証人尋問の全体像について解説しました。証人尋問は、裁判の結論を左右しうる重要な手続きであり、証人には出頭・宣誓・証言という法的な義務が課せられます。特に、自身の記憶に反する証言は「偽証罪」という重い罪に問われるリスクがあるため、正直に話すことが何よりも重要です。反対尋問などで厳しい追及を受ける場面も想定されますが、冷静さを保ち、分からないことは正直に「覚えていない」と答える心構えが求められます。不安が大きい場合は、弁護士や検察官と十分に打ち合わせを行い、遮蔽措置などの保護制度の利用も検討しましょう。まずは落ち着いて、この記事で解説した流れと準備を参考に、尋問当日に備えてください。

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