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口頭弁論を欠席すると差し押さえになる?会社が取るべき法的対処法を解説

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会社の債務問題で訴訟を起こされ、裁判所から口頭弁論期日の呼出状が届いたものの、やむを得ない事情で出廷が難しい状況にある経営者の方もいらっしゃるでしょう。呼出を無視すれば会社の資産が差し押さえられるのではないかと、強い危機感を抱かれているかもしれません。口頭弁論を欠席した場合、実際にどのような法的手続きが進行し、差し押さえに至るのか、その具体的なリスクと流れを正確に理解しておくことは極めて重要です。この記事では、口頭弁論の欠席がもたらす「欠席判決」から強制執行までの流れと、差し押さえを回避するための実践的な対処法を詳しく解説します。

目次

口頭弁論を無断で欠席した場合の最大のリスク:欠席判決

答弁書を提出せずに欠席すると原告の主張が全面的に認められる

裁判所から「特別送達」で訴状が届いたにもかかわらず、何も対応せずに指定された第1回口頭弁論期日を無断で欠席することは、極めて大きなリスクを伴います。日本の民事訴訟では、被告が反論を記載した答弁書を提出せず、かつ期日にも出頭しない場合、原告の主張する事実をすべて認めたものとみなす「擬制自白(ぎせいじはく)」という制度が適用されます。

これにより、被告が争う意思がないと判断され、原告が訴状で主張した事実(例:貸金の存在、売掛金の未払いなど)が、証拠調べをすることなくすべて認定されてしまいます。その結果、裁判所は原告の請求を全面的に認める「欠席判決」を言い渡すことになります。たとえ訴状の内容が事実と異なっていても、法廷で適切に反論しなければ、裁判所は原告の主張のみを基に判断を下さざるを得ません。訴訟を無視する行為は、自らの権利を放棄し、相手方の主張を法的に認めることと同じ意味を持つと認識すべきです。

反論の機会を失い、不利な内容で判決が確定してしまう

欠席判決が言い渡されると、被告は本来主張できたはずの反論の機会を完全に失います。判決後、裁判所から判決書の正本が送達されますが、その受け取りから2週間以内に控訴を提起しなければ、判決は確定します。この2週間という期間は延長が認められない「不変期間」であり、一度過ぎてしまうと、原則として判決内容を覆すことはできません。

判決が確定すると、その内容についての法的な判断が最終的に固定され、後から有利な証拠が見つかったとしても、事実関係を争うことは極めて困難になります。救済手段として「再審」がありますが、認められる条件は非常に限定的です。不利な内容で敗訴した記録は公的なものとして残り、企業の信用情報にも傷がつく恐れがあります。一度も裁判所に出向かないまま敗訴が確定することは、企業にとって最悪のシナリオの一つと言えるでしょう。

確定した判決は債務名義となり、強制執行(差し押さえ)が可能になる

確定した判決は、単なる書類ではなく、国家権力によって強制的に義務を履行させる効力を持つ「債務名義(さいむめいぎ)」となります。債務名義を得た債権者(原告)は、裁判所に強制執行を申し立て、債務者(被告)の財産を差し押さえることが可能になります。

強制執行が始まると、被告の意思とは無関係に手続きが進行します。具体的には、以下のような会社の資産が差し押さえの対象となります。

主な差し押さえ対象資産
  • 銀行の預金口座
  • 取引先に対する売掛金債権
  • 本社ビルや工場などの不動産
  • 在庫商品や機械設備、車両などの動産

訴訟を放置した結果として得られた欠席判決が、数週間後には会社の資産を強制的に失わせる現実的な脅威に変わることを、経営者は深刻に受け止めなければなりません。

欠席判決から差し押さえ(強制執行)までの具体的な流れと期間

判決正本の送達と判決の確定(送達から2週間後)

口頭弁論を欠席して判決が言い渡されると、裁判所から「判決正本」が特別送達で被告に送られます。この判決正本を受け取った日の翌日から2週間以内に控訴がなければ、判決は確定します。判決が確定すると、その内容を争うことはできなくなり、原告の勝訴が法的に決定されます。

特に注意すべきは、多くの金銭請求訴訟で判決に付される「仮執行宣言」です。これが付いている場合、判決が確定する前、つまり2週間の控訴期間中であっても、債権者は強制執行(差し押さえ)を開始できます。判決正本が届いた時点で、ただちに控訴を検討すると同時に、強制執行を止めるための手続きを考えなければならない非常に緊迫した状況となります。

債権者による執行文付与の申立てと送達証明書の取得

判決が確定した後、債権者が強制執行を開始するには、判決正本に加えて2つの書類が必要です。1つは、判決に執行力があることを証明する「執行文」、もう1つは、判決正本が被告に送達されたことを証明する「送達証明書」です。債権者は判決を下した裁判所にこれらの発行を申し立てます。この手続きが完了すると、債権者は法的に差し押さえを実行するための準備が整ったことになります。被告側からは見えませんが、水面下では着実に強制執行の準備が進んでいる段階です。

裁判所への強制執行申立て(債権差押命令など)

執行文と送達証明書を手にした債権者は、差し押さえる財産の所在地を管轄する地方裁判所に、強制執行を申し立てます。企業に対して最もよく使われるのが「債権差押命令」の申立てで、特に預金や売掛金が対象とされます。

裁判所が申立てを認めると、まず銀行や取引先といった「第三債務者」に差押命令が送達されます。命令が届いた瞬間、預金の引き出しや売掛金の支払いは法的に凍結されます。財産隠しを防ぐため、債務者である被告企業に命令が届くのは、第三債務者への送達から数日後になるのが一般的です。そのため、多くの企業は銀行からの連絡などで、突然差し押さえの事実を知ることになります。

預金・売掛金・不動産など会社資産の差し押さえ実行

差押命令が送達されると、具体的な資産の差し押さえが実行に移されます。資産の種類によって実行方法は異なります。

資産の種類 実行内容
銀行預金 口座内の資金がロックされ、債権者が銀行から直接取り立てる
売掛金 取引先が債務者ではなく債権者に直接代金を支払う
不動産 裁判所による強制競売にかけられ、売却処分される
動産 執行官が事務所や倉庫に立ち入り、封印票を貼って処分を禁止する
主な差し押さえ対象資産と実行内容

これらの手続きは、国家権力による強制的なものであり、企業の経済活動を根本から停止させる非常に強力なものです。

特に注意すべき差し押さえ対象資産と事業への致命的影響

企業にとって特に致命的なダメージを受けるのは、預金口座主要取引先への売掛金の差し押さえです。預金口座が差し押さえられると、手形の不渡りや従業員への給与支払い不能などを引き起こし、事業継続が即座に困難になります。銀行からの信用も失い、新たな融資は絶望的となるでしょう。

また、売掛金の差し押さえは、資金繰りを悪化させるだけでなく、訴訟トラブルを抱えている事実が取引先に知れ渡ることを意味します。これにより、取引停止や与信条件の厳格化を招き、長年かけて築いた事業基盤が崩壊する危険性があります。これらの資産への差し押さえは、単なる金銭的損失にとどまらず、企業の存続そのものを脅かすほどの破壊力を持っているのです。

差し押さえを回避するための実践的な対処法

対処法1:答弁書を提出し「擬制陳述」を成立させる

口頭弁論期日にどうしても出席できない場合、欠席判決を回避する最も基本的な方法が、事前に答弁書を提出することです。第1回口頭弁論期日に限り、事前に答弁書を提出しておけば、欠席してもその内容を法廷で述べたものとみなす「擬制陳述(ぎせいちんじゅつ)」という制度が適用されます。

訴状に記載された提出期限までに、原告の請求を棄却する旨などを記載した答弁書を裁判所に提出すれば、争う姿勢を示したことになり、無断欠席のような擬制自白は成立しません。時間がない場合は、詳細な反論は後日行う旨を記した「とりあえずの答弁書」でも効果があります。この初動対応が、差し押さえに至る連鎖を断ち切るための第一歩です。

擬制陳述の効果と、第2回口頭弁論期日以降は出廷が必要となる注意点

擬制陳述が成立すれば、第1回期日は乗り切ることができ、裁判は次回の期日へと続きます。しかし、非常に重要な注意点として、擬制陳述が認められるのは原則として第1回口頭弁論期日のみです。第2回期日以降も書面だけ提出して欠席を続けると、相手方の主張が認められたり、不利な判決が下されたりする可能性が高まります。

地方裁判所での訴訟では、第2回期日以降は、原則として当事者か代理人が実際に出廷するか、Web会議などで参加することが求められます。第1回期日を乗り切ったと安心せず、訴訟が長期にわたることを想定し、継続的な対応計画を立てる必要があります。

対処法2:やむを得ない理由がある場合の期日変更申立て

どうしても出廷できない重大な理由がある場合は、裁判所に期日変更の申立てを行うことができます。ただし、変更が認められるのは「顕著な事由」がある場合に限られます。

期日変更が認められやすい「顕著な事由」の例
  • 当事者の急病や事故(要診断書)
  • 親族の葬儀
  • 事前に決まっていた重要な海外出張(要証明資料)

単に「仕事が忙しい」といった理由では認められません。申立ての際は、理由を証明する資料を添付し、事前に相手方代理人の同意を得ておくと、認められる可能性が高まります。ただし、最終的な判断は裁判所が行うため、必ず認められるとは限りません。

対処法3:Web会議・電話会議システムの利用を裁判所に確認する

近年の法改正により、裁判所に出頭する代わりにWeb会議システムなどを利用できる機会が広がっています。遠方の裁判所で訴訟を起こされた場合や、移動時間が確保できない場合でも、自社のオフィスから手続きに参加することが可能です。これにより、物理的な移動負担をなくし、欠席による不利益を回避できます。

利用を希望する場合は、事前に裁判所の担当書記官に連絡し、利用可否や必要な機材について確認が必要です。ただし、証人尋問など重要な場面では、依然として裁判所への出頭が求められる場合もあります。Web会議であっても公式な手続きであるため、法廷に出向くのと同等の準備と心構えで臨む必要があります。

対処法4:弁護士に訴訟代理人として出廷を依頼する

欠席によるリスクを最も確実かつ効果的に回避する方法は、弁護士を訴訟代理人に選任することです。弁護士に依頼すれば、会社の担当者に代わってすべての期日に出廷し、専門的な書面の作成や主張・立証活動を行ってくれます。

これにより、会社の担当者は本来の業務に専念できるだけでなく、法律の専門家として最善の防御活動を展開してもらえます。また、和解交渉においても、法的な観点から有利な条件を引き出すための交渉を任せることができます。費用はかかりますが、欠席判決による資産喪失や信用失墜という致命的な損害を考えれば、弁護士への依頼は企業防衛のための合理的な投資と言えるでしょう。

弁護士への相談・依頼を検討すべき状況とメリット

弁護士に訴訟代理を依頼する具体的なメリット

弁護士に訴訟代理を依頼するメリットは、法的な不利益を最小限に抑え、企業の経営資源を守れる点に集約されます。

弁護士依頼の主なメリット
  • 専門知識に基づき、有利な主張・証拠を組み立てられる
  • 相手方の追及に対し、法的に適切な防御ができる
  • 裁判所とのコミュニケーションが円滑になり、手続き上のミスを防げる
  • 経営資源を本来の事業に集中させることができる

専門家でない本人が対応すると、法的に重要な点を見落としたり、不利な事実を認めてしまったりする危険があります。弁護士を代理人とすることで、自社の正当性を最大限に引き出し、裁判プロセス全体の安全性を確保できます。

答弁書の作成から代理出廷、和解交渉まで一任できる

弁護士に依頼すれば、訴訟に関する煩雑な実務作業のほとんどを任せることができます。

弁護士に一任できる主な業務
  • 答弁書や準備書面など、専門的な書類の作成
  • 膨大な証拠資料の整理と提出
  • 会社の代理人としての裁判所への出廷
  • 法的知見に基づいた和解交渉の進行

書類作成から法廷対応、そして最終的な解決に至るまでをパッケージで依頼できるため、法的トラブルに不慣れな企業でも、安心して本業に集中しながら訴訟を進めることが可能になります。

相談・依頼の最適なタイミングは訴状が届いた直後

弁護士に相談・依頼する最適なタイミングは、訴状が届いた直後、できればその日か翌日です。第1回口頭弁論期日は訴状到着からおおむね1ヶ月後に設定され、答弁書の提出期限はその期日の約1週間前です。この短い期間で弁護士を探し、事実関係を整理し、反論を組み立てる必要があります。

相談が遅れるほど、弁護士が十分な準備をする時間がなくなり、対応が後手に回ってしまいます。早期に相談すれば、訴訟外での和解など、より多くの選択肢を検討することも可能です。後からでは取り返しのつかない事態を避けるためにも、訴状が届いたら即座に専門家へ相談することが鉄則です。

訴訟対応における社内連携の注意点:経営層への報告と情報管理

弁護士に依頼すると同時に、社内での連携体制を整えることも重要です。特に以下の点に注意が必要です。

訴訟対応における社内連携のポイント
  • 訴状の内容は速やかに経営層へ報告する
  • 訴訟の事実は必要最小限の範囲で共有し、情報の秘匿性を保つ
  • 弁護士への情報提供窓口を一本化し、正確な事実確認を行う

訴訟は全社的な経営問題であり、正確な情報管理と効率的な連携が、弁護士の効果的な活動を支え、ひいては裁判の行方を左右します。

口頭弁論の欠席に関するよくある質問

病気や急な出張で口頭弁論を欠席する場合、どのように裁判所に連絡すればよいですか?

やむを得ない理由で欠席する場合は、無断欠席を避け、必ず以下の手順で対応してください。

急な欠席時の対応手順
  1. まず裁判所の担当書記官に電話で事情を説明し、指示を仰ぐ
  2. 期日変更申請書と理由を証明する資料(診断書、出張命令書など)を提出する
  3. 可能であれば、相手方代理人にも連絡し、期日変更の同意を得ておく

第1回期日であれば答弁書を提出していれば欠席できますが、第2回期日以降は上記の手続きが不可欠です。単なる電話連絡だけでは不十分であり、無断欠席と同様の不利益を受ける可能性があるため、書面での正式な手続きを必ず行いましょう。

弁護士に依頼すれば、会社の担当者は一度も裁判所に行かなくても手続きは進められますか?

はい、原則として一度も出廷せずに手続きを進めることが可能です。弁護士が訴訟代理人としてすべての期日に出席し、書面のやり取りや弁論を行うためです。多くの事件は、当事者本人が出廷しないまま和解や判決で終結します。

ただし、例外的に本人の出廷が必要となる場面もあります。具体的には、裁判官が直接話を聞く必要があると判断した場合に行われる「本人尋問」や、一部の事件で和解内容について本人の意思を直接確認する場合などです。とはいえ、弁護士を依頼することで、物理的な出廷の負担はほぼ解消されると考えてよいでしょう。

すでに第一回口頭弁論期日を過ぎてしまいましたが、今からでも対応策はありますか?

非常に厳しい状況ですが、まだ対応できる可能性は残っています。状況に応じて採るべき手段が異なります。

状況 主な対応策 留意点
まだ判決が出ていない 弁論再開の申立てを行う 裁判所が認めなければ反論の機会は得られない
欠席判決が出た後 判決書受領後2週間以内控訴を提起する 控訴審で争えるが、第1審での対応が心証に影響する可能性がある
第1回期日を過ぎた場合の対応策

いずれのケースも、時間が経つほど選択肢は狭まります。ミスに気づいた時点で、一刻も早く弁護士に相談し、最善のリカバー策を講じる必要があります。

欠席によって不利な判決が出た後で、その内容に不服を申し立てることはできますか?

はい、不服申立ての手段は法的に用意されています。最も一般的なのは、判決書を受け取ってから2週間以内に控訴することです。これにより、上級裁判所で再度審理を求めることができます。

判決が確定してしまった後でも、「再審の訴え」(呼出状が届いていなかったなど、重大な手続き上の欠陥があった場合)や、「請求異議の訴え」(判決後に債務を弁済した場合など)といった特別な手段があります。しかし、これらが認められるハードルは極めて高く、非常手段と考えるべきです。最初の段階で適切に対応することの重要性は、どのような不服申立て手段をもってしても補うことはできません。

判決で支払いが確定しても、会社に支払う資金がない場合はどうなりますか?

支払う資金がない場合でも、債権者は強制執行手続きを進めます。銀行預金だけでなく、売掛金、不動産、動産など、あらゆる資産が差し押さえの対象となります。近年の法改正で財産開示手続が強化され、債務者が資産状況を正直に開示しないと刑事罰を科されるリスクもあります。

会社に本当に差し押さえるべき資産が何もない場合、強制執行は空振りに終わりますが、支払不能の状態では取引先や金融機関からの信用を完全に失い、事業継続は事実上不可能です。このような状況に至った場合は、訴訟対応という枠を超え、弁護士に相談の上で民事再生破産といった法的整理手続きを検討し、事業の再建や適切な清算を目指すことが現実的な選択肢となります。

まとめ:口頭弁論の欠席は致命傷、訴状が届いたら即時対応を

本記事では、口頭弁論を欠席した場合のリスクと対処法を解説しました。答弁書を提出せずに口頭弁論を欠席する行為は、原告の主張をすべて認める「欠席判決」を招き、会社の資産を強制的に差し押さえられる「債務名義」を与えることに直結します。預金口座や売掛金が差し押さえられれば、事業継続は即座に困難となり、企業の存続そのものが危ぶまれる事態に陥りかねません。こうした最悪の事態を回避するためには、最低限、期日前に答弁書を提出することが不可欠です。しかし、訴訟に適切に対応し、自社の権利を守るためには、訴状が届いた直後に弁護士へ相談し、専門的な代理活動を依頼することが最も確実かつ賢明な選択と言えるでしょう。

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