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雇用契約の法律違反とは?罰則・具体例から企業の予防策まで解説

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企業の成長に不可欠な雇用契約ですが、その内容が意図せず法律に違反していないか、不安を感じることはありませんか。労働関連法規は頻繁に改正され、知らず知らずのうちにリスクを抱えているケースも少なくありません。この記事では、雇用契約が法律違反となる具体的なケースから、違反した場合に企業が受ける罰則、社会的信用の失墜といった経営リスク、そしてそれを防ぐための実践的な予防策までを網羅的に解説します。

目次

雇用契約における企業の基本的な法的義務

労働条件の明示義務(労働基準法第15条)の概要

労働基準法第15条は、使用者が労働者と雇用契約を結ぶ際、賃金や労働時間などの基本的な労働条件を具体的に明示することを義務付けています。この義務は、正社員、契約社員、パートタイム、アルバイトなど、すべての雇用形態の労働者に適用されます。この規定の目的は、立場の弱い労働者を保護し、納得した上で働けるようにすることです。 もし明示された条件と実態が異なれば、労働者は即時に労働契約を解除できます。さらに、就業のために転居した労働者が契約解除後14日以内に帰郷する場合、企業はその旅費を負担しなければなりません。 また、令和6年4月1日からは労働基準法施行規則が改正され、以下の事項も新たに明示が必要となりました。

令和6年4月からの追加明示事項
  • 就業場所・業務の変更の範囲
  • 更新上限の有無と内容(有期契約の場合)
  • 無期転換申込機会と無期転換後の労働条件(有期契約の場合)

企業は最新の法令に基づき、労働者が安心してキャリアプランを描けるよう、正確な情報提供を行う必要があります。

雇用契約書と労働条件通知書の役割と法的な違い

労働条件通知書と雇用契約書は、どちらも入社時に取り交わされる重要な書類ですが、法的な性質と役割が異なります。

項目 労働条件通知書 雇用契約書
法的根拠 労働基準法 民法
目的 企業から労働者への労働条件の一方的な通知 労使双方が労働条件に合意したことの証明
作成義務 義務あり(違反すると罰則の対象) 義務なし(作成が強く推奨される)
合意の証明 労働者の合意を示す機能はない 署名・押印により双方の合意を証明する
労働条件通知書と雇用契約書の違い

実務上は、労働条件通知書の交付義務を果たしつつ、労使双方の合意を明確にするため、「労働条件通知書兼雇用契約書」として一体化した書面で運用する企業が一般的です。どちらの形式でも、後の紛争を防ぐために、内容を明確にし、合意の証拠を確実に残すことが企業の防衛につながります。

契約書への記載が必須となる「絶対的明示事項」

絶対的明示事項とは、労働基準法施行規則により、必ず書面で明示しなければならないと定められた項目です。口頭での説明だけでは足りません。

絶対的明示事項の主な項目
  • 労働契約の期間に関する事項
  • 期間の定めがある契約を更新する場合の基準
  • 就業の場所と従事すべき業務の内容(および、これらの変更の範囲)
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
  • 交代制勤務の場合、就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

これらの項目は労働者の生活の根幹に関わるため、一つでも記載が漏れていると労働基準法違反となります。なお、「昇給に関する事項」も絶対的明示事項ですが、これのみ口頭での明示も認められています。

社内制度として定めがある場合に記載が必要な「相対的明示事項」

相対的明示事項とは、社内に該当する制度がある場合にのみ、明示が義務付けられる項目です。制度がなければ記載は不要です。

相対的明示事項の主な項目
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期
  • 臨時の賃金(賞与など)に関する定め
  • 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する定め
  • 安全および衛生に関する定め
  • 職業訓練に関する定め
  • 災害補償および業務外の傷病扶助に関する定め
  • 表彰および制裁の定め
  • 休職に関する定め

これらの事項は、書面での交付は義務付けられていませんが、特に金銭や懲戒に関する内容はトラブルの原因となりやすいため、書面に残しておくことが強く推奨されます。規定を明確にすることで、労使間の無用な誤解を防ぎ、組織の透明性を高めることができます。

雇用契約が法律違反となる主なケース

労働条件の不利益変更や国籍・信条・社会的身分による差別

労働条件の変更には、原則として労使双方の合意が必要です(労働契約法第8条)。企業の都合で一方的に給与を下げたり手当を廃止したりする「不利益変更」は、従業員の同意がなければ原則として無効です。例外的に就業規則の変更による方法もありますが、その変更に合理性がなければ認められません。 また、労働基準法第3条は、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする差別的な取り扱いを固く禁じています。

法律違反となる差別の例
  • 特定の国籍や宗教を理由に、賃金や昇進で不利な扱いをする。
  • 本人の努力で変えられない社会的身分を理由に、採用や配置で差別する。

企業は、個人の能力や実績に基づいた公正な処遇を徹底し、法律違反のリスクだけでなく、社会的信用の失墜も避けなければなりません。

法定労働時間を超える労働と36協定の不備

労働基準法第32条により、労働時間は原則として1日8時間、1週40時間と定められています。これを超えて時間外労働(残業)や休日労働をさせるには、労働者の過半数代表者との間で労使協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。 協定を締結・届出せずに法定労働時間を1分でも超えて労働させると、直ちに法律違反となります。また、協定を届け出ていても、協定で定めた上限時間を超える労働は許されません。時間外労働には、原則として月45時間・年360時間という上限が設けられています。 手続き上の不備(例:代表者の選出方法が不適切、有効期限切れ)がある36協定は無効であり、その状態での残業命令は刑事罰の対象となり得ます。

最低賃金を下回る賃金設定や割増賃金の未払い

企業は、都道府県ごとに定められた最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります。たとえ労働者が合意していても、最低賃金を下回る契約はその部分が無効となり、差額を支払わなければなりません。 また、時間外労働、休日労働、深夜労働に対しては、法律で定められた割増率以上の割増賃金を支払う必要があります。

労働の種類 割増率
法定時間外労働 25%以上
法定休日労働 35%以上
深夜労働(22時~5時) 25%以上
時間外労働が月60時間超 50%以上
主な割増賃金率

固定残業代(みなし残業代)制度を導入している場合でも、実際の残業時間が固定分を超えれば、差額の支払いが必要です。これを怠ることは典型的な賃金未払いとなります。

法律で定められた休憩時間や休日を与えない

労働基準法は、労働者の健康を守るため、休憩と休日について最低基準を定めています。 休憩については、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません(第34条)。この時間は労働から完全に解放されている必要があり、電話番などをさせる「手待ち時間」は休憩ではなく労働時間とみなされます。 休日については、毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日(法定休日)を与えなければなりません(第35条)。これを下回る運用は法律違反です。

年次有給休暇の取得を不当に拒否または妨げる行為

年次有給休暇は、雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に法律上与えられる権利です。労働者が請求した時季に与えるのが原則で、企業がその理由を聞いて取得を拒否することはできません。 企業には、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得時季を変更させる「時季変更権」が認められていますが、単なる人手不足を理由とした行使は権利濫用と判断される可能性があります。 さらに、平成31年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日間の時季を指定して取得させることが企業の義務となりました。この義務違反には罰則も設けられています。

法律の要件を満たさない一方的な解雇(解雇権濫用)

労働契約法第16条により、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(解雇権濫用の法理)。経営者の主観的な判断や軽微なミスだけを理由とした解雇は認められません。 能力不足を理由とする場合でも、十分な指導や教育、改善の機会を与えずに解雇することは無効と判断されやすいです。また、経営上の理由による整理解雇には、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性という厳しい4つの要件を満たす必要があります。 手続き面では、原則として30日以上前の解雇予告、またはそれに代わる30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。

契約不履行に対する違約金や損害賠償額を予定する契約

労働基準法第16条は、労働契約が守られなかった場合に備えて、あらかじめ違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を締結することを禁止しています。これは、労働者が金銭的なペナルティを恐れて退職できなくなるなど、不当な足止めを防ぐためです。

法律違反となる契約例
  • 「1年未満で退職した場合は、違約金として10万円を支払う」
  • 「業務上のミスで損害を与えた場合、一律5万円の罰金を科す」

ただし、この規定は実際に発生した損害について、労働者の過失の程度に応じて賠償を請求することまで禁じるものではありません。しかし、その場合でも労働者が全額を負担させられるケースは稀です。

雇用契約違反が発覚した場合の罰則と企業リスク

労働基準法に基づく罰金・懲役などの刑事罰

労働基準法違反は、行政指導だけでなく刑事罰の対象となる場合があります。違反内容によって罰則は異なりますが、例えば強制労働の禁止(第5条)に違反した場合は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」という最も重い罰が科されます。 時間外労働の上限規制違反や割増賃金の未払いなど、より身近な違反でも「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。これらの罰則は、法人だけでなく、違反行為を行った経営者や管理職個人にも適用される両罰規定となっています。悪質なケースでは書類送検され、企業に前科がつく可能性もあります。

労働基準監督署による是正勧告・指導と企業がとるべき対応

労働基準監督署の調査で法令違反が確認されると、「是正勧告書」が交付されます。これは行政指導であり法的な強制力はありませんが、無視することは重大なリスクを招きます。企業が取るべき対応は以下の通りです。

是正勧告を受けた際の対応フロー
  1. 指摘された違反内容を真摯に受け止め、事実関係を正確に調査する。
  2. 勧告書に記載された是正期日までに、違反状態を解消する。
  3. 具体的な改善内容を「是正報告書」にまとめ、労働基準監督署に提出する。

勧告を無視し続けると、司法処分(書類送検)に移行する可能性があります。是正勧告は、自社の労務管理を見直すための重要な機会と捉え、誠実に対応することが不可欠です。

契約内容と実態が異なる場合の法的効力(労働契約法第8条)

雇用契約書に書かれた内容と実際の労働実態が異なる場合、その効力はケースバイケースで判断されます。労働契約法第8条により、労働条件は労使の合意で決まるため、会社が一方的に契約内容に反する労働を強いることはできません。 労働基準法第15条では、明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は契約を即時に解除できます。 また、契約内容が法律の最低基準(最低賃金など)を下回っている場合、その部分は無効となり、法律の基準まで引き上げられます。逆に、契約より有利な条件(例:高い給与)が長期間継続し、労使間で暗黙の合意が成立していると認められれば、その有利な実態が新たな契約内容とみなされることもあります。

従業員による労働契約の即時解除や損害賠償請求のリスク

企業による契約違反や法令違反は、従業員からの反撃を招く直接的な原因となります。労働者には、以下のような強力な権利が認められています。

企業が直面する主な法的リスク
  • 即時契約解除: 労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に退職できる(労基法第15条)。
  • 損害賠償請求: 違法行為により精神的・肉体的苦痛を受けたとして、損害賠償を請求される。
  • 未払い賃金請求: 未払い残業代などを過去に遡って請求される(時効は当面3年)。
  • バックペイ: 不当解雇と判断された場合、解雇期間中の賃金を遡って全額支払う義務を負う。
  • 付加金: 未払い残業代などについて、裁判所から未払い額と同額の付加金の支払いを命じられることがある。

これらのリスクは、企業の財務に深刻なダメージを与える可能性があります。誠実な契約履行こそが、最大のリスク管理策です。

行政による企業名の公表や採用活動への悪影響

厚生労働省は、違法な長時間労働を繰り返すなど重大・悪質な法令違反が認められた企業について、その名称をウェブサイトで公表する制度を運用しています。 一度「ブラック企業」として名前が公表されると、社会的信用は大きく損なわれます。これにより、取引先との関係悪化や顧客離れといった直接的な経営ダメージに加え、採用活動への深刻な悪影響が生じます。優秀な人材ほど企業のコンプライアンス意識を重視するため、応募者の減少や内定辞退者の続出は避けられません。 人手不足が社会問題となる中、採用力の低下は企業の持続的な成長を阻害する致命的な要因となります。

雇用契約の法律違反を防ぐための予防策と対応

法令に準拠した雇用契約書を作成・レビューする際の注意点

法令を遵守した雇用契約書を作成・維持するためには、いくつかの重要な点に注意する必要があります。

雇用契約書作成・レビューのポイント
  • 最新の法改正を反映させる: 古いひな形を使い回さず、労働基準法などの改正に対応する。
  • 絶対的明示事項を網羅する: 法律で定められた必須項目に記載漏れがないか確認する。
  • 就業規則との整合性を保つ: 契約書の内容が就業規則と矛盾しないようにする。
  • 専門用語を避け平易な表現を用いる: 誰が読んでも誤解が生じないよう、分かりやすい言葉で記載する。
  • 専門家によるリーガルチェックを受ける: 定期的に弁護士や社会保険労務士に内容を確認してもらう。

これらの注意点を実践することで、契約書をめぐる将来の紛争リスクを大幅に低減できます。

従業員への丁寧な説明と書面による合意形成の重要性

雇用契約を締結する際は、単に書面を交付するだけでなく、その内容を従業員に丁寧に説明し、理解を促すことが重要です(労働契約法第4条)。特に、賃金の計算方法や労働時間制度など、複雑な項目については時間をかけて説明し、質疑応答の機会を設けるべきです。 従業員が内容を十分に理解し、納得した上で合意することが、入社後のミスマッチや「話が違う」といったトラブルを防ぎます。そして、最終的な合意は必ず書面で行い、労使双方が署名・押印したものを1部ずつ保管します。この書面が、万が一紛争が発生した際に、合意内容を証明する客観的な証拠となります。

勤怠管理や給与計算システムを正確に運用し実態を把握する

法令違反の多くは、労働実態の不正確な把握から生じます。企業は、タイムカードやPCのログイン・ログオフ記録、入退室管理データなど、客観的な方法で労働時間を管理する体制を構築する責務があります。自己申告制を採る場合でも、実態と乖離がないか定期的な実態調査が必要です。 給与計算システムも、最新の最低賃金額や割増賃金率が正しく設定されているか、定期的に確認しなければなりません。管理職は、部下の労働時間データを単に集計するだけでなく、長時間労働の兆候を早期に発見し、業務調整を行うためのマネジメントツールとして活用する意識が求められます。

契約内容を遵守させるための管理職への教育と周知徹底

現場での法律違反は、管理職の労働法に関する知識不足や誤った認識が原因で起こることが少なくありません。企業は、管理職を対象とした労働法研修を定期的に実施し、コンプライアンス意識を徹底させる必要があります。

管理職への教育・周知のポイント
  • 36協定で定められた時間外労働の上限の遵守
  • 休憩時間の自由利用原則の徹底
  • 年次有給休暇の取得促進義務の理解
  • パワーハラスメントなど各種ハラスメントの防止

評価制度に部下の労務管理に関する項目を盛り込むなど、適正なマネジメントを促す仕組み作りも有効です。法令遵守の責任は、現場を預かる管理職一人ひとりにあるという意識を醸成することが重要です。

法改正に対応するための定期的な契約書・就業規則の見直し

労働関連法規は、社会情勢の変化に応じて頻繁に改正されます。そのため、雇用契約書のひな形や就業規則は、少なくとも年に1回は見直しを行うことが望ましいです。厚生労働省のウェブサイトなどを通じて常に最新の法改正情報を収集し、自社の規定が古くなっていないかを確認します。 特に、最低賃金の改定、育児・介護休業法の改正、各種助成金の要件変更などは、実務に直接影響します。規定を変更した際は、労働基準監督署への届出(就業規則の場合)と、従業員への周知徹底を忘れずに行う必要があります。社内ルールを常に最新の状態にアップデートし続けることが、意図しない法令違反を防ぐ上で不可欠です。

従業員から違反を指摘された場合の初期対応と調査フロー

従業員から契約違反や法令違反を指摘された場合、その初期対応が極めて重要です。感情的な対応は避け、以下の手順で冷静かつ誠実に対応します。

違反指摘への対応フロー
  1. 傾聴と共感: まずは従業員の主張を真摯に聴き、感情的に否定せず、問題提起に感謝する姿勢を示す。
  2. 事実調査の約束: 速やかに客観的な事実調査を行うことを約束する。
  3. 客観的調査の実施: 勤怠記録、給与明細、関係者へのヒアリングなどを行い、事実関係を特定する。
  4. 是正措置と謝罪: 違反が事実であれば潔く認め、謝罪するとともに、未払い賃金の支払などの是正措置を講じる。
  5. 再発防止策の策定と報告: 根本原因を分析し、再発防止策を策定。指摘した従業員にも調査結果と対応を報告する。

初期段階で誠実に対応することで、問題が外部の労働組合や労働基準監督署、弁護士を巻き込む大きな紛争へと発展するのを防ぎます。

弁護士や社会保険労務士など外部専門家への相談タイミング

雇用契約に関する問題は、トラブルが深刻化する前に専門家の助言を求めることが、損害を最小限に抑える鍵となります。

専門家へ相談すべき主なタイミング
  • 就業規則や新たな人事制度を導入・変更する
  • 問題行動のある従業員への対応(注意指導、懲戒処分、解雇など)を検討し始めた初期段階
  • 従業員から内容証明郵便が届くなど、法的な紛争に発展する兆候が見えた直後
  • 労働基準監督署から調査の連絡があった時点

日常的な労務管理や手続きについては社会保険労務士、具体的な紛争対応や訴訟リスクが伴う案件については弁護士と、相談内容に応じて専門家を使い分けるのが効果的です。顧問契約を結び、いつでも気軽に相談できる体制を整えておくことが理想的なリスク管理です。

雇用契約の法律違反に関するよくある質問

Q. 雇用契約書を従業員に交付しないこと自体が法律違反になりますか?

はい、法律違反になる可能性が極めて高いです。労働基準法は「雇用契約書」そのものの作成を義務付けてはいませんが、第15条で賃金や労働時間などの主要な労働条件を書面で明示する義務を課しています。多くの企業がこの義務を果たすために雇用契約書を交付しており、これを交付しないことは、この明示義務違反に問われます。違反した場合、「30万円以下の罰金」という罰則の対象となります。また、書面がないと後々「言った、言わない」のトラブルになり、企業側が不利な立場に置かれるリスクもあります。

Q. 口頭で合意した労働条件も法的に有効なのでしょうか?

はい、民法上は口頭の約束でも契約は有効に成立します。しかし、労働契約においては2つの大きな問題点があります。第一に、口頭合意だけでは労働基準法が定める書面による労働条件の明示義務を果たしたことにならず、法律違反となります。第二に、口頭の合意は証拠が残らないため、後日トラブルになった際に合意内容を証明することが困難です。裁判などでは、客観的な証拠がない場合、労働者側の主張が認められやすくなる傾向があります。したがって、実務上は必ず書面で契約内容を確定させることが不可欠です。

Q. パートやアルバイトの雇用契約にも労働基準法は適用されますか?

はい、全面的に適用されます。労働基準法は、雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)に関わらず、使用者の指揮命令下で働くすべての「労働者」を保護の対象としています。したがって、最低賃金、割増賃金、休憩、休日、年次有給休暇といった規定は、パートやアルバイトにも正社員と同様に適用されます。むしろ、パートタイム・有期雇用労働法により、正社員との不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)や、追加の労働条件明示義務などが課されており、より手厚い保護が求められる側面もあります。

Q. 従業員が契約に違反した場合、会社から損害賠償を請求できますか?

はい、従業員の故意や重大な過失によって会社に損害が生じた場合、損害賠償を請求すること自体は可能です。しかし、労働基準法第16条により、あらかじめ「違反したら罰金〇円」といった賠償額を予定する契約は禁止されています。また、実際に請求できる金額も、裁判所では大幅に制限されるのが一般的です。業務上のリスクは基本的に会社が負うべきという考え方から、従業員の責任は損害額の一部にとどまることが多く、会社の管理体制の不備なども考慮されます。安易な損害賠償請求は、かえって紛争を悪化させるリスクがあります。

Q. 過去の契約書に不備が見つかった場合、遡って修正すべきですか?

はい、速やかに是正すべきです。不備を放置すると、将来、未払い賃金請求やその他の労働紛争に発展するリスクを抱え続けることになります。対応としては、まず現在の法令に適合した正しい内容の「変更合意書」や「覚書」を新たに作成します。その上で、従業員一人ひとりに不備があった経緯と修正内容を誠実に説明し、納得を得た上で新たな合意として署名・押印してもらいます。もし過去の不備によって賃金の未払いなどが発生していれば、差額を遡って清算することも必要です。誠実な対応が、従業員との信頼関係を維持する上で重要です。

Q. 雇用契約のトラブルについて、企業はどこに相談すべきですか?

相談内容に応じて、専門家を使い分けるのが効率的です。

主な相談先とその役割
  • 社会保険労務士: 日常的な労務管理、就業規則の作成・変更、労働保険・社会保険の手続き、行政(労働基準監督署など)への対応に関する相談。
  • 弁護士: 個別の労働紛争(解雇、残業代請求など)、労働審判や訴訟への対応、法的リスクの高い意思決定に関する相談。
  • 行政機関(労働局、労働基準監督署など): 法令に関する一般的な解釈の確認。ただし、あくまで中立または労働者保護の立場からの助言となる点に注意が必要です。

トラブルの兆候が見えたら、深刻化する前に顧問の社会保険労務士や弁護士に相談し、早期に適切な手を打つことが最善の策です。

まとめ:雇用契約の法的リスクを理解し、健全な労務管理を実現するために

本記事では、雇用契約における企業の法的義務、法律違反となる具体的なケース、そして違反した場合の罰則や経営リスクについて解説しました。労働条件の明示義務や36協定の遵守はもちろん、最低賃金や年次有給休暇の付与義務など、守るべきルールは多岐にわたります。これらの違反は、刑事罰や是正勧告だけでなく、企業名の公表による採用難や社会的信用の失墜といった、事業の根幹を揺るがす深刻な事態を招きかねません。意図しない法律違反を防ぐためには、雇用契約書や就業規則を定期的に見直し、最新の法改正に対応させることが不可欠です。また、管理職への教育を徹底するとともに、労務管理に少しでも不安があれば、問題が深刻化する前に弁護士や社会保険労務士といった専門家へ相談することが、企業を守る最善の策となります。

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