民事再生と会社更生の違いとは?メリット・デメリットと選択基準を比較解説
自社や取引先の経営状況が悪化し、事業再生の道を模索されている状況かと存じます。法的整理の中でも、事業の継続を目指す「民事再生」と「会社更生」は有力な選択肢ですが、両者の違いは複雑で、どちらが自社の状況に適しているか判断に迷うことも少なくありません。この記事では、この二つの再建型手続きの具体的な違いを比較表も交えて多角的に解説し、皆様が最適な判断を下すための一助となる情報を提供します。
民事再生と会社更生とは?事業再建のための法的整理手続き
民事再生法の概要と目的(既存経営陣による再建)
民事再生法は、経済的に困難な状況にある債務者が、事業の再生を図るための法律です。裁判所の監督のもと、債権者の多数の同意を得た再生計画を定めることで、過大な債務を整理し事業の立て直しを目指します。原則として既存の経営陣が退陣せずに再建を主導する点(DIP型:Debtor in Possession)が最大の特徴であり、経営ノウハウや取引関係を維持しながら迅速な再建を進めることが期待されます。 民事再生手続きを開始できるのは、破産原因の事実が生じるおそれがある場合など、経営状況が悪化しすぎる前の早期段階です。これにより、企業体力を残したまま再建に取り組むことが可能になります。手続き中は裁判所から選任された監督委員が経営陣の業務を監督し、手続きの公正性を担保します。
会社更生法の概要と目的(管財人主導による抜本的再建)
会社更生法は、主に大規模な株式会社を対象に、事業の維持更生を図るための法律です。民事再生とは異なり、手続き開始と同時に裁判所が選任した更生管財人が経営権と財産の管理処分権を全面的に掌握します。そのため、既存の経営陣は原則として退任し、経営責任を明確にしたうえで、第三者の客観的な視点から抜本的な事業改革が断行されます。 会社更生は再建型手続きの中で最も強力で、担保権や株主の権利といった、民事再生では原則として再生計画の対象とならない権利まで整理の対象に含めます。これにより、複雑な利害関係を一体的に調整し、大規模な組織再編や資本構成の変更を可能にします。その手続きは極めて厳格かつ複雑であるため、社会的に影響の大きい企業の再生において、公平性・透明性を確保するための最終手段と位置づけられています。
【比較表】民事再生と会社更生の7つの主な違い
民事再生と会社更生は、どちらも事業の再建を目指す「再建型」の法的整理手続きですが、その性質や効果は大きく異なります。以下に、7つの主要な違いを解説します。
| 項目 | 民事再生 | 会社更生 |
|---|---|---|
| 1. 対象となる法人格 | 個人・法人を問わず、すべての債務者が対象 | 株式会社に限定される |
| 2. 経営陣の処遇 | 原則として続投する(DIP型) | 原則として退任する(管財人型) |
| 3. 担保権の扱い | 別除権として扱われ、手続き外での行使が可能 | 更生担保権として扱われ、手続き内での行使は禁止 |
| 4. 手続きの主体 | 経営陣(監督委員が監督) | 更生管財人(経営権を掌握) |
| 5. 再建計画の決議要件 | 比較的緩やか(頭数と議決権額で判断) | 権利ごとに組分けされ、要件が非常に厳格 |
| 6. 費用と期間の目安 | 比較的少額・短期(半年程度~) | 高額・長期(1年~数年) |
| 7. 株主の権利・責任 | 原則として維持される | 債務超過の場合、100%減資により失権が通例 |
1. 対象となる法人格(個人・法人 vs 株式会社)
民事再生は、株式会社はもちろん、合同会社、医療法人、個人事業主、さらには一般の個人まで、債務者の種類を問わず幅広く利用できます。一方、会社更生は株式会社のみを対象としています。これは、会社更生が株主の権利変更や100%減資といった、株式会社特有の資本構成の変更を前提とした再建手法を予定しているためです。
2. 経営陣の処遇(原則続投 vs 原則退任)
民事再生では、原則として現在の経営陣がそのまま残り、業務の遂行や財産の管理を続けます。これは「DIP(Debtor in Possession)型」と呼ばれ、経営の継続性が保たれる点が特徴です。対照的に、会社更生では裁判所が選任した更生管財人に経営権が全面的に移管され、既存の経営陣は原則として退任します。経営主体が交代するかどうかが、両手続きの最も大きな違いの一つです。
3. 担保権の扱い(別除権 vs 更生担保権)
民事再生では、抵当権などの担保権は「別除権」として扱われ、倒産手続きとは別に権利行使が可能です。つまり、担保権者は再生手続き中でも担保物件を差し押さえ、競売にかけることができます。一方、会社更生では担保権も「更生担保権」として手続き内に取り込まれ、個別の権利行使は禁止されます。これにより、事業に必要な資産を確実に保全しながら再建を進めることができます。
4. 手続きの主体(申立権者と監督委員・管財人)
民事再生の申立ては、債務者自身だけでなく債権者も可能です。手続き開始後は、監督委員が選任され、経営陣の業務を監督する役割を担います。会社更生の申立ては、株式会社自身のほか、一定額以上の債権者や一定割合以上の株主にも認められています。手続き開始後は、経営から独立した更生管財人が経営権を掌握し、再建の執行主体となります。
5. 再建計画案の決議要件
民事再生の再生計画案を可決するには、債権者集会において「出席した議決権者の過半数の同意」と「議決権総額の2分の1以上の同意」の両方が必要です。一方、会社更生の更生計画案の決議は、更生債権者、更生担保権者、株主といった権利者グループごとに、より厳格な要件が定められています。例えば、担保権の減免には4分の3以上の同意が必要となるなど、可決へのハードルが高く設定されています。
6. 手続きにかかる費用と期間の目安
民事再生は比較的迅速に進められ、申立てから再生計画の認可まで半年程度が目安です。裁判所に納める予納金も、負債総額によりますが数百万円程度からと、会社更生に比べて低額です。対照的に、会社更生は手続きが複雑で、計画認可までに1年~数年を要します。予納金も最低で数千万円以上と高額になり、事実上、資金力のある大企業向けの制度となっています。
7. 株主の権利・責任の扱い
民事再生では、株主の権利は原則として影響を受けず、そのまま維持されます。一方、会社更生では株主の権利も整理の対象となり、会社が債務超過の状態にあれば、100%減資によって既存株主の権利をすべて消滅させるのが一般的です。これにより、旧株主の責任を明確にし、新たなスポンサーからの出資を受け入れやすくします。
民事再生を選択するメリット・デメリット
メリット:経営陣が続投できる可能性が高い
民事再生の最大のメリットは、現経営陣が経営を続けられる点です。会社の事業内容や取引先との関係を熟知した経営者が再建を主導することで、事業価値の維持や従業員の動揺の抑制につながります。特に、経営者の個人的な手腕や信用が事業の根幹をなす中小企業にとって、経営の継続性が保たれることは極めて重要な利点です。
メリット:手続きが比較的迅速かつ柔軟に進められる
会社更生に比べて手続きがシンプルで、短期間かつ低コストで再建を図れる点も大きなメリットです。早期に法的手続きを終えることで、事業価値の低下を防ぎ、正常な経営状態への復帰を早めることができます。また、自力での再建だけでなく、スポンサーの支援を受けたり、事業の一部を譲渡したりするなど、会社の状況に応じた柔軟な再建スキームを設計することが可能です。
デメリット:担保権の実行を原則として阻止できない
民事再生の大きなデメリットは、担保権の行使を法的に強制できないことです。事業に不可欠な工場や機械設備に担保が設定されている場合、担保権者が競売などを申し立てると事業の継続が困難になるリスクがあります。このリスクを回避するには、担保権者と個別に交渉し、返済計画について合意(別除権協定)を得る必要がありますが、交渉が不調に終わる可能性も残ります。
デメリット:事業の信用力が大きく低下するリスクがある
民事再生は裁判所を介した公的な手続きであるため、申立ての事実が官報や報道を通じて広く知れ渡ります。これにより、企業の信用力が大幅に低下し、取引先から現金払いを要求されたり、新規取引が困難になったりする可能性があります。また、顧客離れや優秀な人材の流出を招くこともあり、再生計画の遂行に支障をきたす場合があります。
会社更生を選択するメリット・デメリット
メリット:担保権を含めた全ての債権を整理の対象にできる
会社更生の最大の強みは、担保権の実行を法的に禁止できる点です。これにより、事業の継続に不可欠な資産が散逸するのを防ぎ、安定した基盤の上で再建を進めることができます。民事再生のように個別の交渉に頼る必要がなく、すべての債権を法的な手続きの中で公平に扱うため、複雑な権利関係も一括して整理することが可能です。
メリット:スポンサー選定や事業譲渡など抜本的な再建策を講じやすい
更生管財人の強力な権限のもと、過去のしがらみにとらわれない抜本的な改革が可能です。例えば、既存株主の権利を100%減資で消滅させた上で、新たなスポンサーからの出資を受け入れるといった大胆な資本政策を実行できます。不採算部門の整理や大規模な組織再編も行いやすく、事業そのものの競争力を高めるための最適な再建策を講じることができます。
デメリット:経営陣は原則として退任し経営権を失う
会社更生が始まると、経営に関するすべての権限は更生管財人に移り、既存の経営陣は原則としてその地位を失います。これは経営不振の責任を明確にするという側面もありますが、会社を創業から支えてきた経営者にとっては、自らの手で再建を成し遂げられないという厳しい現実を受け入れる必要があります。会社を存続させるために、経営権を手放すという重い決断が求められます。
デメリット:手続きが複雑で費用・期間の負担が大きい
会社更生は、再建型手続きの中で最も厳格で複雑なため、多額の費用と長い期間を要します。裁判所に納める予納金は最低でも数千万円規模となり、手続きが完了するまでには数年かかることも珍しくありません。このコスト負担に耐えうるだけの事業規模と財務的な体力が必要となるため、事実上、利用できるのは大企業に限られます。
【ケース別】民事再生と会社更生のどちらを選択すべきか
中小企業などで経営陣の続投を強く望む場合
経営者の個人的なノウハウや人脈が事業の中核を担っている中小企業には、民事再生が適しています。経営陣が続投できるため、事業の継続性を保ちながら、現場を熟知したリーダーシップのもとで再建を進めることができます。また、手続き費用や期間の面でも、中小企業の実情に合った選択肢と言えます。
担保権者(金融機関など)の協力が得られる見込みがある場合
主要な担保権者である金融機関などから再建への協力が得られ、担保権を行使しない旨の合意(別除権協定)が見込める場合も、民事再生が有効な選択肢となります。民事再生の最大の弱点である担保権の問題を個別交渉でクリアできるのであれば、あえて複雑で高コストな会社更生を選ぶ必要はなく、より迅速かつ柔軟な民事再生で再建を目指すのが合理的です。
多数の利害関係者が存在し、抜本的な事業再編が必要な大企業の場合
債権者が国内外に多数存在し、権利関係が複雑に絡み合っている大企業の再建には、会社更生が不可欠です。担保権の実行を法的に停止させ、すべての利害関係者を一つの手続きのテーブルに乗せる強制力がなければ、再建は進みません。また、経営責任の明確化や、スポンサー主導による大規模な組織再編・資本注入が必要な場合も、管財人が主導する会社更生がその役割を果たします。
手続き選択で陥りやすい誤解と実務上の判断ポイント
「会社更生の方が強力だから再建しやすい」と単純に考えるのは誤りです。手続きの重さがかえって再建の足かせになることもあります。実務では、以下の点を総合的に考慮して、専門家と相談しながら最適な手続きを選択することが重要です。
- 事業を継続した場合の価値が、会社を清算した場合の価値を上回っているか
- 裁判所に納める予納金や、当面の運転資金を確保できるか
- 担保権の実行によって事業継続が不可能になるリスクを、個別交渉で回避できるか
- 経営陣の続投が、事業再建にとって本当にプラスに働くか
参考:再建型(民事再生・会社更生)と清算型(破産)の違い
法的整理手続きは、事業の継続を目指す「再建型」と、事業を終了させる「清算型」に大別されます。
| 項目 | 再建型(民事再生・会社更生) | 清算型(破産) |
|---|---|---|
| 手続きの目的 | 事業の継続・再生 | 事業の清算・消滅 |
| 法人格の扱い | 存続する | 消滅する |
| 財産の処分 | 事業継続に必要な財産は保持される | すべての財産が換価処分される |
| 従業員の雇用 | 原則として維持される | 原則として全員解雇となる |
手続きの目的(事業継続か事業清算か)
民事再生や会社更生といった再建型手続きの目的は、事業を存続させることです。債務を整理し、収益構造を改善することで、会社を再生させ、従業員の雇用や取引先との関係を守ることを目指します。一方、破産などの清算型手続きの目的は、会社を消滅させることです。事業の継続が困難、あるいは継続するほど損失が拡大する場合に、会社の財産をすべて金銭に換え、債権者に公平に分配して法人格を消滅させます。
財産の処分方法と法人格の扱い
再建型手続きでは、会社の法人格は維持され、事業継続に必要な財産は原則として保持されます。将来の事業収益から再生計画に基づいて債務を返済していきます。一方、破産手続きでは、破産管財人が会社の全財産を売却・換金し、それを債権者への配当に充てます。配当が完了すると会社は消滅し、法人格も失われます。再建型は「再出発」のための手続き、清算型は「終結」のための手続きという根本的な違いがあります。
民事再生・会社更生に関するよくある質問
民事再生や会社更生の手続き中、従業員の雇用は維持されますか?
事業の継続を目的としているため、従業員の雇用は原則として維持されます。ただし、再建計画の過程で不採算部門の縮小やリストラが行われ、希望退職者の募集や整理解雇に至る可能性はあります。なお、未払いの給与や退職金は、他の一般債権よりも優先的に支払われるよう法律で保護されています。
民事再生の成功率はどの程度ですか?
一概には言えませんが、民事再生を申し立てた企業が再生計画を最後まで履行し、手続きを終結できる割合は25%~40%程度とされています。再生計画が債権者集会で可決されなかったり、認可後に計画通りに返済ができずに破産へ移行したりするケースも少なくないため、実現可能性の高い計画を立てることが成功の鍵となります。
民事再生計画が認可されない場合はどうなるのでしょうか?
債権者集会で再生計画案が否決されたり、裁判所から不認可と判断されたりした場合、民事再生手続きは「廃止」となります。手続きが廃止されると、多くの場合、裁判所の職権によって破産手続きへと移行します。これにより、会社は再建の道を断たれ、清算・消滅することになります。
取引先が法的整理に入った場合、債権者としてどう対応すべきですか?
取引先が民事再生などの手続きを開始した通知を受けたら、速やかに以下の対応を取る必要があります。
- 裁判所が定める期間内に、必ず債権届出を行う。
- 自社もその取引先に買掛金などの債務を負っている場合、相殺が可能か検討する。
- 担保権を持っている場合は、手続き内でどのように扱われるかを確認し、権利行使について検討する。
- 再生計画案が提示されたら内容をよく確認し、債権者集会での議決権行使に備える。
まとめ:自社の状況に最適な再建手続きを選択するために
本記事では、事業再建のための法的整理手続きである民事再生と会社更生について、7つの主要な違いを中心に解説しました。民事再生は、経営陣が続投し迅速かつ柔軟に進められるため中小企業の再建に適していますが、担保権の扱いに注意が必要です。一方、会社更生は管財人主導で抜本的な改革が可能であり、大企業の再建に強力な効果を発揮しますが、経営権を失い、多大な費用と時間を要します。どちらの手続きが優れているというわけではなく、企業の規模、財務状況、担保権者との関係、経営陣の意向などを総合的に考慮して選択することが極めて重要です。 最終的な判断にあたっては、必ず弁護士などの専門家と協議し、自社にとって最善の再建スキームを構築してください。

