「破産宣告」と「自己破産」の違いとは?手続きの流れや費用、生活への影響を解説
深刻な資金繰りの悪化に直面し、事業やご自身の生活の再建に向けて債務整理を検討されていることと存じます。その選択肢として「自己破産」を考える中で、「破産宣告」という言葉も耳にし、両者の正確な意味や関係性がわからず、次の判断に踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、「自己破産」と「破産宣告」の法律上の定義と関係性を明確にし、自己破産手続きの全体像からメリット・デメリットまでを網羅的に解説します。
「破産宣告」と「自己破産」の違いは?現在の法律上の定義を解説
「自己破産」は債務者自らが申し立てる手続きの総称
自己破産とは、多額の債務を抱えて返済が不可能になった個人や法人が、自らの意思で裁判所に破産の申立てを行い、経済的な再生を目指す一連の手続きのことです。債務者自身が主体となって申し立てる点が特徴で、債権者が申し立てる「債権者破産」とは区別されます。
この手続きの最終的な目的は、財産を清算するだけでなく、裁判所から免責許可決定を得て、残った借金の支払義務を免除してもらうことにあります。これにより、誠実な債務者に対して社会的な再出発の機会を与えるセーフティネットとしての役割も果たしています。実務上は、弁護士などを代理人として、支払不能であることを客観的な資料に基づき証明し、裁判所の審査を受ける過程全体を指して自己破産と呼びます。
「破産宣告」は旧法上の用語で、現在は「破産手続開始決定」を指す
「破産宣告」という言葉は、2004年まで使われていた旧破産法上の正式な法律用語でした。これは、裁判所が破産手続きの開始を公に宣言する行為を指します。
しかし、2005年に施行された現在の破産法では、「宣告」という言葉が持つ懲罰的な印象を避け、より中立的な表現にするため、「破産手続開始決定」という名称に改められました。現在、法律の専門家が正式な場面で「破産宣告」という言葉を使うことはありませんが、長年社会に定着してきたため、今でも俗称として使われることがあります。
裁判所が破産手続開始決定を下すには、申立人が支払不能(個人の場合)や債務超過(法人の場合)といった、法律上の破産原因を満たしていると認定する必要があります。この決定が下された時点で、正式に破産手続きがスタートします。
両者の関係性:自己破産手続きの一部として破産手続開始決定が下される
「自己破産」と「破産手続開始決定」の関係は、全体の手続きとその中の一つの段階という関係にあります。
自己破産は、債務者が専門家に相談し、裁判所に申し立ててから、最終的に免責許可決定を得るまでの手続き全体の総称です。一方、破産手続開始決定は、その自己破産プロセスの中で、裁判所が申立てを認めて「これから正式に破産手続きを開始します」と宣言する法的な決定を指します。
つまり、破産手続開始決定は、自己破産という長い道のりにおける重要な通過点です。この決定が下されただけでは借金の支払義務はまだ免除されません。免除されるのは、その後の手続きを経て、最終的に免責許可決定が確定した時点です。この開始決定を境に、財産の調査・換価を行う「管財事件」に進むか、財産がないため手続きを終える「同時廃止事件」に進むかが決まります。
自己破産の手続きの全体像と流れ
弁護士・司法書士への相談と受任通知の送付
自己破産を検討する場合、まず債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談することから始めます。専門家は、債務状況や資産、収入などを総合的に判断し、自己破産が最適な解決策であるかをアドバイスします。
正式に依頼すると、専門家は直ちにすべての債権者へ「受任通知」を送付します。この通知が債権者に届いた時点で、法律に基づき、債務者本人への直接の督促や取り立てが停止します。これにより、精神的な負担から解放され、落ち着いて申立ての準備に集中できるようになります。また、この時点から借金の返済を一時的に止めるため、浮いた資金を専門家費用や裁判所費用の積立てに充てることが可能になります。
裁判所への申立て準備(必要書類の収集と作成)
自己破産を申し立てるには、自身の経済状況を正確に証明するための多数の書類を準備し、申立書を作成する必要があります。裁判所はこれらの書類に基づき、支払不能状態にあるか、また後述する「同時廃止事件」と「管財事件」のどちらで手続きを進めるかを判断します。
- 住民票、戸籍謄本などの身分証明書類
- 給与明細書、源泉徴収票、課税証明書などの収入に関する書類
- すべての預貯金通帳の写し(過去1〜2年分)
- 生命保険の解約返戻金証明書などの資産に関する書類
- 借入れの経緯などを説明する陳述書(報告書)
- 直近数ヶ月の家計全体の状況がわかる家計簿(家計収支表)
破産手続開始決定と免責審尋
必要書類を添えて裁判所に申立てを行うと、裁判官による書類審査や、場合によっては裁判官との面談(債務者審尋)が行われます。申立て内容に問題がなく、破産の要件を満たしていると判断されると、裁判所は「破産手続開始決定」を下します。
財産がほとんどない「同時廃止事件」の場合、開始決定からおおむね2〜3ヶ月後に「免責審尋」という期日が設けられます。これは、裁判官が破産者本人と直接面談し、借金を免除してよいか(免責の可否)を最終的に判断するための手続きです。ここでは、借金の経緯や反省の意思、今後の生活再建への意欲などが確認されます。
免責許可決定と手続きの完了
免責審尋で特に問題がないと判断されれば、裁判所から「免責許可決定」が出されます。この決定が、自己破産の最終目的である「借金の支払義務の免除」を実現するものです。
決定が出ると、その事実は国の機関紙である官報に掲載されます。掲載から約2週間、債権者からの不服申立て(即時抗告)がなければ、免責許可決定は法的に確定します。この確定をもって、税金などの一部の例外(非免責債権)を除き、借金の返済義務から解放され、手続きは完了となります。
手続きにかかる期間の目安
自己破産の手続きに必要な期間は、手続きの種類や事案の複雑さによって大きく異なります。弁護士に依頼してから申立て準備に2〜6ヶ月程度かかるのが一般的で、裁判所に申し立ててからの期間は以下の通りです。
| 手続きの種類 | 期間の目安 |
|---|---|
| 同時廃止事件 | 約3ヶ月~6ヶ月 |
| 管財事件(少額管財) | 約6ヶ月~1年 |
| 管財事件(通常管財) | 1年以上かかる場合もある |
自己破産の種類:同時廃止事件と管財事件
同時廃止事件:一定額以上の財産がない場合の手続き
同時廃止事件は、破産を申し立てた人に、債権者へ配当できるようなまとまった財産がほとんどない場合に適用される、簡易的な手続きです。裁判所が破産手続の開始を決定すると同時に、手続きを終了(廃止)させることからこの名で呼ばれます。
一般的に、現金33万円未満、かつ、個別の資産(預貯金、保険解約返戻金、自動車など)の価値が20万円未満であることが目安とされます。破産管財人が選任されないため、裁判所に納める予納金が低額(おおむね1万~3万円程度)で済み、手続き期間も短いのが大きなメリットです。個人の自己破産の多くがこの同時廃止事件として処理されます。
管財事件:財産の調査・換価・配当が必要な場合の手続き
管財事件は、破産法が定める本来の原則的な手続きです。債務者に不動産や車など一定以上の財産がある場合や、借金の原因(ギャンブルや浪費など)に調査が必要な場合に適用されます。
この手続きでは、裁判所によって破産管財人(弁護士)が選任されます。破産管財人は、債務者の財産を詳細に調査・管理し、現金化(換価)して、法律に基づき各債権者へ公平に分配(配当)する役割を担います。手続きが複雑で期間も長くなり、破産管財人の報酬となる予納金が高額になるという特徴があります。
どちらの手続きになるかの判断基準と費用の違い
どちらの手続きになるかは、申立てを受けた裁判所が、資産状況や借金の理由などを総合的に見て判断します。特に、20万円以上の価値がある財産の有無が大きな分かれ目です。手続きの種類によって、裁判所に納める予納金の額が大きく異なります。
| 項目 | 同時廃止事件 | 管財事件(少額管財) | 管財事件(通常管財) |
|---|---|---|---|
| 対象者 | 財産がほとんどない個人 | 財産調査や免責調査が必要な個人など(弁護士代理が前提) | 財産が多く複雑な事案(主に法人) |
| 破産管財人 | 選任されない | 選任される | 選任される |
| 裁判所への予納金(目安) | 1万~3万円 | 20万円~ | 50万円~ |
| 手続き期間(目安) | 3ヶ月~6ヶ月 | 6ヶ月~1年 | 1年以上 |
※少額管財は、管財事件の中でも比較的簡易な事案について、弁護士が代理人となることを条件に予納金の負担を軽減する運用です。多くの裁判所で採用されています。
自己破産が認められた場合のメリット
借金の支払義務が原則として免除される
自己破産の最大のメリットは、裁判所から免責許可決定を得ることで、借金の支払義務が原則としてすべて免除されることです。消費者金融からの借入れ、銀行ローン、クレジットカードの残債など、ほとんどの借金が対象となります。
これにより、返済や督促に追われる生活から解放され、収入を生活の再建のために使うことができます。ただし、税金や国民健康保険料、養育費、悪意で加えた不法行為の損害賠償金など、一部の債務(非免責債権)は免除の対象外となり、支払義務が残るため注意が必要です。
債権者からの督促や給与差し押さえが停止する
自己破産の手続きを開始すると、債権者からの厳しい取り立てが止まります。具体的には、弁護士に依頼した時点で送付される受任通知により、貸金業者からの直接の督促が停止します。
さらに、裁判所が破産手続開始決定を下すと、債権者は個別に訴訟や差し押さえといった強制執行ができなくなります。すでに給与差し押さえなどが始まっている場合も、その効力は失われ、中止されます。これにより、手取り収入を確保し、平穏な生活を取り戻しながら手続きを進めることが可能になります。
自己破産によるデメリットと生活への影響
信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト)
自己破産をすると、その情報が信用情報機関に「事故情報」として登録されます。これは、いわゆる「ブラックリストに載る」状態です。登録期間は約5年~10年で、この間は金融機関からの新たな借入れ(ローン)、クレジットカードの作成、分割払いでの商品購入などが原則としてできなくなります。
ただし、これは未来永劫続くわけではなく、期間が経過すれば情報は削除されます。期間中は、銀行口座から即時に引き落とされるデビットカードや、事前に入金して使うプリペイドカードなどを活用することで、キャッシュレス決済の利便性を維持することは可能です。
一定額以上の財産(不動産・車など)の処分
自己破産では、借金を免除してもらう代わりに、生活に最低限必要な範囲を超える財産は処分し、債権者への配当に充てる必要があります。これを換価処分といいます。
自宅(不動産)や、査定額が20万円を超える自動車、99万円を超える現金、高価な貴金属などが処分の対象となります。一方で、生活に必要な家具・家電や、当面の生活費としての現金(99万円まで)などは「自由財産」として手元に残すことが認められており、すべての財産を失うわけではありません。
一部の職業や資格が一時的に制限される
破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの間、一部の職業に就くことや資格の利用が法律で制限されます。これを資格制限と呼びます。他人の財産を扱う職業などが対象となりますが、この制限はあくまで一時的なものです。免責許可が確定すれば、この制限は解除されます(復権)。
- 弁護士、司法書士、税理士などの士業
- 警備員
- 生命保険募集人(保険外交員)
- 旅行業務取扱管理者
- 会社の取締役、監査役など(一旦退任となりますが再任は可能です)
官報への氏名・住所の掲載
自己破産をすると、手続きの開始時と免責許可決定が出た時の2回、国の機関紙である「官報」に氏名と住所が掲載されます。これは、債権者など利害関係者に手続きの事実を知らせるための法的な公告です。
しかし、官報を日常的に購読・チェックしている一般の人はほとんどいません。そのため、官報掲載が原因で、ご近所や勤務先などの周囲の人に自己破産の事実が知られてしまう可能性は極めて低いと言えます。
保証人がいる場合の請求への影響
自己破産で最も注意すべき影響の一つが、保証人・連帯保証人への影響です。自己破産による免責の効果は、申立てをした本人にしか及びません。したがって、本人の支払義務はなくなっても、保証人の支払義務はなくなりません。
債務者本人が破産すると、債権者は保証人に対して残りの債務の一括返済を請求します。保証人になっている家族や友人に多大な迷惑をかけてしまう可能性があるため、手続きを始める前に必ず事情を説明し、保証人自身も債務整理を検討する必要があるかなど、誠実に話し合うことが不可欠です。
事業上の信用や取引関係への影響
個人事業主や会社の経営者が自己破産をすると、事業上の信用が失われ、取引関係に大きな影響が出ます。金融機関からの融資が受けられなくなり、仕入れ先との掛取引も困難になるため、事業の継続が難しくなるのが通常です。
しかし、自己破産は再起のための制度でもあります。免責が確定した後、新たに事業を始めたり、別の会社の役員になったりすることに法律上の制約はありません。ただし、信用回復や資金調達には時間がかかるため、公的な融資制度を活用するなど、堅実な事業計画を立てて再チャレンジを目指すことになります。
自己破産手続きにかかる費用の内訳と相場
専門家への依頼費用(弁護士・司法書士)
自己破産を専門家に依頼する費用は、依頼先や事件の種類によって異なります。一般的に、弁護士費用は30万円~80万円程度、司法書士費用(書類作成代行が中心)は20万円~40万円程度が相場です。
多くの法律事務所では、費用の分割払いに対応しています。また、収入が一定基準以下の方は、国が設立した法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用すれば、費用を立て替えてもらい、月々5,000円~10,000円程度の分割で返済することも可能です。
裁判所に納める費用(申立手数料・予納金)
専門家費用とは別に、裁判所へ支払う実費が必要です。内訳は、申立手数料(収入印紙代1,500円)、郵便切手代(予納郵券)、官報公告費などです。
最も大きな費用は、手続きの種類によって金額が大きく変わる予納金です。同時廃止事件の場合はおおむね1万~3万円程度で済みますが、破産管財人が選任される管財事件では、管財人の報酬として最低でも20万円以上(少額管財の場合)の予納金を納める必要があります。この費用は、申立て前に準備しておく必要があります。
費用総額の目安と支払い方法に関する注意点
自己破産にかかる費用の総額は、手続きの種類で大きく変わります。同時廃止事件であれば総額30万円~50万円程度、管財事件であれば総額50万円以上が目安となります。
支払いに関して最も重要な点は、手続き費用を準備するために新たな借金をしないことです。これは免責が認められなくなる原因(免責不許可事由)になりかねません。通常は、弁護士に依頼して返済をストップさせた後、それまで返済に充てていたお金を積み立てて費用を準備します。
自己破産に関するよくある質問
自己破産をすると家族にどのような影響がありますか?
自己破産はあくまで個人の手続きであり、家族が保証人になっていない限り、法的な支払義務が家族に移ることはありません。家族名義の財産が処分されたり、家族の信用情報に傷がついたりすることもありません。
ただし、事実上の影響はあります。例えば、破産者名義の持ち家は処分されるため、同居家族は引っ越しが必要になります。また、破産した本人は一定期間ローンを組めないため、家族が住宅ローンを組む際に連帯保証人になることはできません。このように、生活設計には影響が及ぶ可能性があります。
自己破産したことは勤務先の会社に知られてしまいますか?
ほとんどの場合、自ら話さない限り会社に知られることはありません。裁判所や弁護士から会社に連絡がいくことはなく、官報を常にチェックしている会社もまずないからです。自己破産を理由に解雇することも法律で禁止されています。
ただし、例外的に知られるケースもあります。
- 会社から借金をしている場合(会社が債権者となるため)
- 会社に給与を差し押さえられている場合
- 警備員や保険外交員など、資格制限のある職業に就いている場合
破産手続きが完了した後、いつからローンを組めるようになりますか?
ローンを組めるようになるには、信用情報機関から自己破産の情報が削除されるのを待つ必要があります。目安として、手続き完了から5年~10年後です。
ただし、情報が削除された直後は、信用取引の履歴が全くない「スーパーホワイト」と呼ばれる状態になり、かえって審査に通りにくいことがあります。また、破産手続きの対象となった金融機関やそのグループ会社では、社内独自のデータ(社内ブラック)により、半永久的に審査に通らない可能性が高いと考えられます。
破産後、再度起業したり会社の役員になったりすることはできますか?
はい、可能です。自己破産をしたことは、法律上、会社の役員になるための欠格事由にはあたりません。免責が確定して復権すれば、誰でも会社の役員に就任できますし、新たに会社を設立して起業することも自由です。
ただし、実務上の課題はあります。自己破産後しばらくは金融機関からの融資を受けることが困難なため、事業資金の調達が大きなハードルとなります。日本政策金融公庫の再挑戦支援資金など、公的な融資制度の活用を検討するのが現実的な選択肢となるでしょう。
まとめ:「破産宣告」は旧法の用語。正確な知識で自己破産を判断するために
この記事では、「自己破産」と「破産宣告」という言葉の正確な意味と両者の関係性について解説しました。「破産宣告」は現在使われていない旧法上の用語であり、今日の法律では「破産手続開始決定」を指す俗称です。一方で「自己破産」とは、債務者自らが申立てを行い、最終的に借金の支払義務免除(免責)を得るまでの一連の手続き全体の総称を指します。つまり、破産手続開始決定(旧:破産宣告)は、自己破産というプロセスにおける重要な通過点に過ぎません。自己破産は財産処分や信用情報への登録といったデメリットもありますが、債務から解放され、経済的な再起を図るための法的な救済制度です。手続きは複雑で専門的な判断を要するため、まずは弁護士などの専門家に相談し、ご自身の状況に最適な解決策を見つけることが重要です。

