家を売るための手順と費用、注意点を網羅解説|初心者向け売却ガイド
自宅や所有物件の売却を考え始めたものの、何から手をつければ良いのか、全体像が見えずに不安を感じていませんか。特に住宅ローンが残っている場合や、建物が古い場合は心配事も多いでしょう。この記事では、不動産売却の基本的な流れから、かかる費用や税金、状況別の注意点までを網羅的に解説します。売却成功に向けた第一歩として、ぜひご活用ください。
不動産売却の基本的な流れと期間
主な売却方法「仲介」と「買取」の違い
不動産を売却するには、主に「仲介」と「買取」の2つの方法があります。仲介は不動産会社が売主と買主の間を取り持ち、買取は不動産会社自身が買主となる方法です。それぞれの特徴は異なり、売主の状況に応じて最適な選択肢は変わります。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い高値が期待できる | 市場価格の7~8割程度になる傾向がある |
| 売却期間 | 3ヶ月~半年程度が一般的 | 最短数日~1ヶ月程度で現金化可能 |
| 仲介手数料 | 必要(成功報酬) | 不要 |
| 契約不適合責任 | 原則として売主が負う | 免責されるケースが多い |
| 広告・内覧 | 必要 | 不要 |
| 向いているケース | 時間をかけてでも高く売りたい場合 | 早く確実に現金化したい、周囲に知られたくない場合 |
価格を重視するなら仲介、スピードと確実性を優先するなら買取が基本的な選択基準となります。自身の状況や物件の特性を考慮し、最適な方法を選ぶことが売却成功の第一歩です。
ステップ1:売却相場の調査と資金計画の準備
売却活動を始める前に、ご自身の物件がいくらで売れそうか、相場を把握することが重要です。不動産会社の査定価格が妥当かを判断する基準にもなります。公的なデータベースや不動産情報サイトを活用して、近隣の類似物件の取引価格を調べておきましょう。
並行して、売却後の資金計画を具体的に立てます。まず住宅ローンの残債を正確に確認してください。売却代金でローンを完済できるか、あるいは売却価格が残債を下回る「オーバーローン」状態になるかは、計画の根幹に関わります。
- 売却価格の想定: 相場調査に基づき、保守的な金額を設定します。
- 住宅ローン残債: 金融機関の返済予定表や残高証明書で最新の金額を確認します。
- 売却にかかる諸費用: 仲介手数料や税金など、売却価格の4~6%程度を見込みます。
- 手元に残る現金: 売却価格からローン残債と諸費用を差し引いて算出します。
この事前準備により、売却活動の途中で資金不足に陥るリスクを防ぎ、安心して次のステップに進めます。
ステップ2:不動産会社への査定依頼
物件のおおよその相場を把握したら、複数の不動産会社へ査定を依頼します。査定には、データに基づいて簡易的に価格を算出する「机上査定」と、担当者が現地を訪問して詳細に調査する「訪問査定」の2種類があります。
査定は、必ず3社から5社程度の複数の会社に依頼し、各社の査定価格とその根拠を比較検討することが重要です。査定価格の高さだけで依頼先を決めるのは避けましょう。契約を獲得するために、意図的に高い価格を提示する会社も存在するからです。
- 査定価格の根拠: 過去の成約事例や市場動向に基づいた、論理的で納得のいく説明があるか。
- 担当者の専門性や誠実さ: 質問に的確に答え、物件の長所だけでなく短所やリスクも正直に伝えてくれるか。
- 販売戦略の具体性: どのような広告活動を行い、どういった層にアプローチするのか。
建物の登記事項証明書や設計図書などを事前に準備しておくと、より正確な査定が可能になります。
ステップ3:不動産会社との媒介契約を締結
査定内容や担当者を比較検討し、売却を任せる不動産会社が決まったら媒介契約を締結します。媒介契約は、不動産会社に依頼する業務内容や仲介手数料を明確にするための重要な契約で、法律で書面の交付が義務付けられています。契約形態には以下の3種類があります。
| 契約種類 | 依頼できる会社数 | 自己発見取引 | レインズへの登録義務 | 業務報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介契約 | 複数社可 | 可 | 任意 | なし |
| 専任媒介契約 | 1社のみ | 可 | 義務(7日以内) | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介契約 | 1社のみ | 不可 | 義務(5日以内) | 1週間に1回以上 |
人気物件であれば「一般媒介契約」で競争を促す方法もありますが、多くの場合は「専任媒介契約」が選ばれます。1社に任せることで、不動産会社は責任を持って積極的な販売活動を行う傾向があり、定期的な報告によって進捗状況も把握しやすいためです。契約期間は最長3ヶ月で、期間満了時に更新するか見直すかを判断します。
ステップ4:売却活動の開始と内覧対応
媒介契約を締結すると、不動産会社はポータルサイトへの掲載やチラシ配布など、本格的な売却活動を開始します。この段階で売主が最も力を入れるべきなのが、購入希望者が物件を見学する「内覧」への対応です。
内覧時の第一印象は、購入の意思決定に大きく影響します。以下のポイントを押さえて、物件の魅力を最大限に伝えましょう。
- 清掃と整理整頓: 特に玄関、リビング、キッチン、浴室などの水回りを重点的にきれいにします。
- 明るさの演出: すべての照明をつけ、カーテンを開けて室内を明るく見せます。
- 広さの確保: 不要な家具や荷物を減らし、部屋が広く見えるように工夫します。
- 臭いへの配慮: 事前に十分な換気を行い、ペットや生活臭に注意します。
- 誠実な受け答え: 住み心地や周辺環境に関する質問には、実際に住んでいるからこそわかる情報を正直に伝えます。
週末など内覧希望が入りやすい日は、できるだけ予定を空けておくなど、柔軟なスケジュール調整も早期成約には不可欠です。
ステップ5:購入希望者との条件交渉
内覧の結果、購入を希望する方が現れると、不動産会社を通じて「購入申込書(買付証明書)」が提示されます。ここから、具体的な条件交渉が始まります。
交渉の主な対象は購入価格ですが、それ以外にも細かな条件を詰めていく必要があります。
- 購入希望価格: 売り出し価格からの値引き交渉に応じるか、どの程度まで譲歩できるかを判断します。
- 手付金の額: 売買価格の5~10%が一般的ですが、金額を確認します。
- 引き渡し時期: 自身の住み替えスケジュールと合致するかを調整します。
- 付帯設備の取り扱い: エアコンや照明器具などを残していくか、撤去するかを明確にします。
- 住宅ローン特約の有無: 買主がローン審査に通らなかった場合に契約が白紙になる条件を確認します。
単に価格だけで判断せず、買主の資金計画の確実性なども含めて総合的に検討することが重要です。不動産会社の担当者と相談しながら、冷静に妥協点を探り、双方が納得できる形で合意を目指します。
ステップ6:売買契約の締結
買主との条件交渉がまとまったら、売買契約を締結します。契約当日は、売主・買主・不動産会社の担当者などが集まり、宅地建物取引士による「重要事項説明」から始まります。これは物件の法的な状況や権利関係などを最終確認する重要な手続きです。
説明内容に双方が合意した後、売買契約書に署名・捺印し、買主から売主へ手付金(売買価格の5~10%が相場)が支払われます。この手付金は契約成立の証拠となり、契約後は簡単に解除できません。
- 手付解除: 自己都合で契約を解除する場合、売主は受け取った手付金の倍額を買主に支払う必要があります(買主は手付金を放棄)。
- 正確な告知義務: 雨漏りやシロアリ被害の有無などを記載する「物件状況等報告書」や、設備の状況を伝える「付帯設備表」には、事実を正確に記載します。
- 契約不適合責任: 告知しなかった重大な欠陥が後から見つかった場合、売主が責任を問われる可能性があります。
契約締結は法的な責任を伴う行為です。契約書の内容を十分に理解し、不明な点は必ずその場で確認してください。
ステップ7:決済と物件の引渡し
売買契約から1ヶ月~2ヶ月後、取引の最終段階である決済と物件の引渡しを行います。決済は、買主が利用する金融機関の応接室などで行われるのが一般的です。
当日は、売主、買主、不動産会社の担当者に加え、所有権移転登記を担当する司法書士も同席します。主な流れは以下の通りです。
- 本人確認と登記書類の確認: 司法書士が所有権移転に必要な書類に不備がないかを確認します。
- 残代金の支払い: 買主の口座から売主の口座へ、売買代金の残額が振り込まれます。
- ローン完済と抵当権抹消: 売主の住宅ローンが残っている場合、この入金をもって完済手続きを行います。
- 諸費用・税金の清算: 仲介手数料の残額や固定資産税の日割り分などを支払います。
- 鍵と関係書類の引渡し: すべての金銭授受が完了したら、物件の鍵や設備の取扱説明書などを買主に手渡し、取引は完了です。
引き渡し日までに、売主は引っ越しを済ませ、公共料金の解約手続きなども完了させておく必要があります。
ステップ8:売却益が出た場合の確定申告
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行い、所得税・住民税を納付する必要があります。
譲渡所得は以下の計算式で算出します。 `譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)`
取得費とは物件の購入代金や手数料のことで、建物部分については所有期間に応じた減価償却費を差し引きます。譲渡費用は、売却時にかかった仲介手数料などの経費です。
税率は不動産の所有期間によって異なり、売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断されます。
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 約20%
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 約39%
マイホームの売却であれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり、多くの場合は税金がかかりません。ただし、この特例を利用するためには、税金がゼロになる場合でも確定申告が必須です。逆に売却損が出た場合も、申告によって他の所得と損益通算できる制度があるため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
不動産売却でかかる費用と税金の内訳
売却時に発生する諸費用(仲介手数料・印紙税など)
不動産売却では、売却代金が手に入る一方で、様々な費用が発生します。これらの諸費用は、一般的に売却価格の4~6%程度かかると言われており、事前に現金で準備が必要なものもあるため注意が必要です。
- 仲介手数料: 不動産会社に支払う成功報酬。法律で上限が定められています。(例:売却価格3,000万円の場合、約106万円(消費税込み))
- 印紙税: 売買契約書に貼付する収入印紙代。契約金額によって異なり、1千万円超5千万円以下の場合は1万円です(軽減措置適用時)。
- 抵当権抹消費用: 住宅ローンを完済し、担保を外すための登記費用。登録免許税と司法書士への報酬を合わせて2~5万円程度が目安です。
- 測量費用: 土地や一戸建てで、隣地との境界が確定していない場合に必要。30万円~80万円程度かかることもあります。
- その他: ハウスクリーニング代、不用品処分費用、建物の解体費用(必要な場合)などが考えられます。
これらの費用をあらかじめ資金計画に組み込んでおくことが、スムーズな売却には不可欠です。
売却益にかかる税金(譲渡所得税・住民税)と利用できる特例・控除
不動産を売却して得た利益(譲渡所得)には、譲渡所得税と住民税が課税されます。譲渡所得は、売却価格からその不動産の購入費用(取得費)と売却にかかった経費(譲渡費用)を差し引いて計算します。
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えるか否かで大きく変わります。
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 税率は合計約20%に軽減されます。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 税率は合計約39%と高くなります。
ただし、居住用財産(マイホーム)の売却には、税負担を大幅に軽減できる特例が用意されています。これらの特例を適用するには、確定申告が必要です。
- 3,000万円の特別控除: マイホームの売却で出た利益から最大3,000万円を差し引ける制度。多くのケースで譲渡所得税が非課税になります。
- 軽減税率の特例: 所有期間が10年を超えるマイホームの場合、3,000万円控除を適用した後の利益(6,000万円以下の部分)について、税率が約14%に軽減されます。
- 買換えの特例: マイホームを買い換える場合に、売却益への課税を将来に繰り延べることができる制度です。
どの特例が利用できるか、またどの特例が最も有利かは状況によって異なります。適用要件も複雑なため、税務署や税理士に相談の上、手続きを進めるのが確実です。
不動産売却の手続きで必要になる書類
【タイミング別】準備しておくべき必要書類の一覧
不動産売却では、各段階で様々な書類が必要になります。事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。売却を決めたら、早めに書類の有無を確認し、リストを作成しておくと安心です。
- 登記事項証明書(登記簿謄本): 法務局で取得。物件の権利関係を示します。
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書: 取得費の計算などに必要です。
- 建築確認済証・検査済証: 建物の適法性を証明します。
- 固定資産税納税通知書・課税明細書: 税金の額や物件の評価額がわかります。
- 本人確認書類: 運転免許証やマイナンバーカードなど。
- (マンションの場合)管理規約、長期修繕計画書など
- 登記済権利証または登記識別情報: いわゆる「権利書」。非常に重要です。
- 実印: 本人確認と意思確認のために使用します。
- 印鑑証明書: 発行後3ヶ月以内のもの。
- 住民票: 登記上の住所と現住所が異なる場合に必要です。
- 物件の鍵一式
- 各種設備の取扱説明書・保証書
書類を紛失した場合の再発行手続きと相談先
売却に必要な書類を紛失してしまった場合でも、代替手段があるケースがほとんどです。気づいた時点で、速やかに不動産会社の担当者に相談しましょう。
特に重要な登記済権利証(登記識別情報)は、紛失しても再発行されません。この場合は、司法書士に依頼して「本人確認情報」を作成してもらうか、法務局の「事前通知制度」を利用することで、所有権移転登記が可能です。ただし、いずれも追加の費用と時間がかかるため、早めの対応が肝心です。
建築確認済証なども再発行はできませんが、役所で「台帳記載事項証明書」を取得することで代用できます。書類の不備は取引の遅延につながるため、紛失に気づいたらすぐに専門家へ相談することが重要です。
不動産を高く・早く売却するためのポイント
売却価格を上げるための準備と内覧時の工夫
不動産を少しでも高く、そして早く売却するためには、購入希望者に「この物件に住みたい」と思わせる事前の準備と内覧時の演出が欠かせません。
- ホームインスペクション(住宅診断)の実施: 専門家による建物の状態調査です。問題がないことを証明できれば、買主に安心感を与え、価格交渉で有利になります。
- ハウスクリーニングの活用: 特にキッチン、浴室、トイレなどの水回りをプロに清掃してもらうと、清潔感が格段に向上し、物件の印象が良くなります。
- ホームステージングの導入: 家具や小物で室内をモデルルームのように演出し、購入後の生活をイメージしやすくさせます。
- 小さな修繕: 壁紙の剥がれやふすまの破れなど、低コストで直せる箇所は補修しておくと、管理状態の良さをアピールできます。
内覧時には、すべての照明をつけて室内を明るく見せ、十分な換気で臭い対策を徹底することが基本です。こうした細やかな配慮の積み重ねが、値下げ交渉を防ぎ、高い価格での成約につながります。
信頼できる不動産会社の選び方
不動産売却の成功は、パートナーとなる不動産会社選びで8割が決まるとも言われます。単に会社の規模や知名度だけでなく、以下の基準で信頼できる会社かを見極めましょう。
- 1. 実績: 売却したい物件と同じエリアや物件種別(マンション、戸建て等)での取引実績が豊富か。
- 2. 査定の根拠: なぜその査定価格なのか、市場データに基づいて具体的に説明できるか。
- 3. 販売戦略: 物件の魅力を引き出す広告(写真の質、紹介文など)を作成し、効果的な販売活動を提案してくれるか。
- 4. 担当者の能力と誠実さ: レスポンスが早く、専門的な知識を持ち、リスクについても正直に伝えてくれるか。
- 5. 囲い込みをしない: 他の不動産会社からの紹介を拒否する「囲い込み」をせず、広く買主を探す姿勢があるか。
複数の会社と面談し、査定価格だけでなく、担当者の人柄や販売に対する熱意を比較検討することが、最良のパートナーを見つけるための鍵となります。
媒介契約3種類(一般・専任・専属専任)の特徴と選択基準
不動産会社に売却を依頼する際に結ぶ媒介契約には、3つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況や物件に合った契約形態を選ぶことが重要です。
| 契約種類 | 特徴 | こんな物件・人におすすめ |
|---|---|---|
| 一般媒介契約 | 複数の不動産会社に同時に依頼できる。不動産会社間の競争が期待できる。 | 駅から近いなど条件が良く、人気が見込める物件。 |
| 専任媒介契約 | 依頼は1社のみ。不動産会社が責任を持って積極的に販売活動を行う傾向がある。 | 早期売却を目指す場合。手厚いサポートを受けたい場合。 |
| 専属専任媒介契約 | 専任媒介より報告義務が厳しく、自分で買主を見つけること(自己発見取引)も禁止される。 | 不動産会社にすべてを任せ、徹底した管理を求める場合。 |
実務上は、まず「専任媒介契約」で1社に任せてみて、その働きぶりを評価するのが一般的です。契約期間は最長3ヶ月なので、もし活動内容に不満があれば、期間満了後に他の会社に切り替えることも可能です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、戦略的に契約形態を選びましょう。
【状況別】不動産売却における注意点
住宅ローンが残っている物件を売却する場合
住宅ローンが残っていても不動産の売却は可能ですが、引き渡し時までにローンを全額返済し、抵当権を抹消することが絶対条件です。抵当権が残ったままでは、買主は所有権を完全に取得できません。
売却代金でローンを完済できる「アンダーローン」の状態であれば問題ありません。しかし、売却価格がローン残債を下回る「オーバーローン」の場合は、差額を自己資金で補填する必要があります。
- 自己資金で補填: 預貯金などで差額を支払い、ローンを完済する。
- 住み替えローンの利用: 新しく購入する物件のローンに、今回の売却で返済しきれなかった残債を上乗せして借り入れる方法。ただし審査は厳しくなります。
- 任意売却の検討: 金融機関の合意を得て、残債がある状態でも抵当権を解除してもらい売却する方法。競売を避けるための最終手段とされます。
まずは金融機関に連絡し、ローン残債の正確な金額と一括返済の手続きを確認することから始めましょう。
住みながら売却活動を進める場合のポイント
現在の家に住みながら売却活動を行うことは、仮住まいの費用がかからないという大きなメリットがあります。一方で、内覧のために常に家をきれいに保つ必要があり、プライバシーの面でストレスを感じることもあります。
成功の鍵は「生活感のコントロール」です。内覧者はモデルルームを見るような感覚で訪れるため、日常の雑多な雰囲気は購入意欲を削いでしまいます。
- 整理整頓の徹底: 不要な物を処分し、収納スペースを活用して、室内をすっきりと見せます。
- 水回りの清潔維持: キッチン、浴室、トイレは特に汚れが目立ちやすい場所。使用後すぐに清掃する習慣をつけましょう。
- 柔軟な内覧対応: 急な内覧依頼にも対応できるよう、週末の予定はなるべく空けておきます。
- ポジティブな情報提供: 「冬でも日当たりが良い」「近所のスーパーが便利」など、実際に住んでいるからこそわかる魅力を伝える準備をしておきましょう。
- 案内はプロに任せる: 内覧時の説明は不動産会社の担当者に任せ、売主は質問に答える程度に留めるのがマナーです。
築年数が古い家(築古物件)を売却する際の対策
築年数が経過した物件は、建物自体の価値が低いと見なされることが多く、売却には工夫が必要です。主な戦略は以下の3つです。
- 1. 現状のまま「古家付き土地」として売る: リフォームやDIYを楽しみたい層をターゲットにします。建物の不具合に関する責任を免除する「契約不適合責任免責」の特約を付けるのが一般的です。
- 2. 最低限のリフォームをして売る: 全面的なリフォームは費用倒れのリスクがあります。水回りの交換や壁紙の張り替えなど、印象を改善する部分的な修繕に留めるのが効果的です。
- 3. 建物を解体して「更地」として売る: 買主が自由に新築できるため、最も売れやすい方法です。ただし、解体費用が先行して発生し、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が上がる点に注意が必要です。
どの方法が最適かは、物件の状態や立地、周辺の需要によって異なります。まずは不動産会社に相談し、古家付き土地として売り出し、市場の反応を見ながら次の手を考えるのが賢明です。
相続した不動産を売却する手続きと税金の注意点
相続した不動産を売却するには、まず故人から相続人へ名義を変更する「相続登記」が必須です。この登記が完了しないと売買契約は結べません。2024年4月からは相続登記が義務化されており、速やかな手続きが求められます。
相続人が複数いる場合は、全員で「遺産分割協議」を行い、誰が不動産を相続し、売却手続きを進めるかを決定します。
税金面では、通常の売却とは異なる特例が関係します。
- 相続税の取得費加算の特例: 納付した相続税の一部を、売却不動産の取得費に加算できる制度。これにより譲渡所得が圧縮され、節税につながります。相続開始から3年10ヶ月以内に売却することが条件です。
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除: 相続した空き家を一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
相続物件は購入時の契約書などが見つからず、取得費が不明なケースも少なくありません。特例の適用要件も複雑なため、税理士などの専門家と連携しながら進めることが重要です。
売却後の「契約不適合責任」とトラブル回避のポイント
物件の引き渡し後に、契約時には説明のなかった重大な欠陥(雨漏り、シロアリ被害など)が見つかった場合、売主は買主に対してその修繕や損害賠償などの責任を負います。これを「契約不適合責任」と呼びます。
この責任をめぐるトラブルを避けるための最大のポイントは、物件の状況を正直かつ正確に告知することです。
- 正確な告知: 建物の不具合や設備の故障など、把握している欠点は隠さず「物件状況等報告書」にすべて記載する。
- 専門家による調査: ホームインスペクション(住宅診断)を実施し、客観的な建物の状況を把握・開示する。
- 特約の設定: 買主の合意のもと、売主が責任を負う期間を「引き渡しから3ヶ月間」などに限定したり、古い物件では責任を一切免除する特約を契約書に盛り込む。
誠実な情報開示が、結果的に売主自身を予期せぬトラブルから守ることにつながります。
不動産売却に関するよくある質問
Q. 家の売却において、特に避けるべきことは何ですか?
家の売却で失敗しないために、特に避けるべきことが3つあります。
- 高すぎる査定価格を鵜呑みにすること: 契約欲しさに相場とかけ離れた高値を提示する会社もあります。長期間売れ残り、結果的に相場以下で売ることになりかねません。
- 物件の欠陥を隠すこと: 引き渡し後に発覚した場合、「契約不適合責任」を問われ、修繕費用の請求や契約解除といった大きなトラブルに発展します。
- 不動産会社に任せきりにすること: 販売活動の状況を定期的に確認せず、担当者にすべてを委ねるのは危険です。市場の反応を共有し、必要に応じて戦略を練り直す姿勢が重要です。
誠実な情報開示と、現実的な価格設定が、スムーズで後悔のない売却への近道です。
Q. 不動産一括査定サイトを利用するデメリットはありますか?
一括査定サイトは手軽に複数の会社から査定額を得られる便利なツールですが、デメリットも存在します。
- 営業電話が殺到する: 依頼直後、多数の会社から一斉に連絡が入り、対応に追われることがあります。
- 査定精度にばらつきがある: エリアに不慣れな会社が含まれている場合、精度の低い査定額が提示される可能性があります。
- 過度に高い査定額の提示: 他社との競争意識から、契約を取りたいがために意図的に高い査定額を提示する会社が現れやすいです。
一括査定はあくまで「不動産会社と出会うきっかけ」と捉え、提示された査定額だけで判断しないことが重要です。その後の訪問査定や面談を通じて、担当者の専門性や誠実さを見極めるステップとして活用しましょう。
Q. 売却前にリフォームは実施した方がよいのでしょうか?
原則として、大規模なリフォームは不要です。リフォームにかけた費用を売却価格に上乗せして回収できるとは限らず、投資が無駄になるリスクが高いためです。また、買主は自分の好みに合わせてリフォームしたいと考えることが多いため、売主が行ったリフォームが逆に敬遠される可能性もあります。
ただし、費用対効果の高い部分的な補修やクリーニングは有効です。
- ハウスクリーニング: 特に水回りをプロに清掃してもらうと、印象が劇的に良くなります。
- 壁紙の張り替え: 汚れや剥がれが目立つ部分だけでも張り替えると、部屋全体が明るくなります。
- 小さな修繕: ドアノブのぐらつきや網戸の破れなど、簡単に直せる箇所は補修しておきましょう。
多額の費用をかけるのではなく、清潔感を演出し、物件を大切に扱ってきた印象を与えることが重要です。
Q. 査定価格と売出価格は同じ金額で設定すべきですか?
必ずしも同じ金額にする必要はありません。それぞれの価格は意味合いが異なります。
- 査定価格: 不動産会社が「3ヶ月程度で売却可能」と判断した、専門家としての客観的な市場価格の目安です。
- 売出価格: 売主の希望や、将来的な価格交渉(値引き)を考慮に入れて設定する戦略的な開始価格です。
実務上は、査定価格をベースに、5~10%程度の価格交渉分を上乗せして売出価格を設定するのが一般的です。これにより、買主から値引きを求められても、最終的な成約価格を査定価格に近い水準に落ち着かせることができます。
ただし、相場からあまりに高い価格で売り出すと、内覧希望者が現れず売れ残ってしまうリスクがあります。不動産会社の担当者と相談しながら、市場の動向に合わせた適切な価格設定を行うことが重要です。
Q. 近所に知られずに売却活動を進めることは可能ですか?
はい、可能です。周囲に知られずに売却を進めたい場合、いくつかの方法があります。
- 不動産会社による「買取」を利用する: 最も確実な方法です。広告活動を一切行わず、不動産会社と直接取引するため、情報が外部に漏れることはありません。
- 広告活動を制限して「仲介」で売る: インターネット掲載やチラシ配布を行わず、不動産会社が抱える既存の顧客リストの中から購入希望者を探してもらう方法です。
- レインズへの登録を工夫する: 広く情報を共有しつつも、物件所在地が特定されにくいように掲載情報を調整してもらうなどの配慮を依頼します。
ただし、広告を制限すると購入希望者が見つかりにくくなり、売却期間が長引いたり、価格が相場より低くなったりする可能性がある点は理解しておく必要があります。不動産会社と秘密厳守の約束を取り付け、どこまでの情報公開を許容できるか、事前に綿密に打ち合わせることが不可欠です。
まとめ:計画的な準備と信頼できるパートナー選びが不動産売却成功の鍵
本記事では、不動産売却の全体像を、基本的な流れから費用、税金、状況別の注意点に至るまで解説しました。売却を成功させるためには、まず全体の流れを把握し、ご自身の状況に合わせた資金計画を立てることが不可欠です。特に、信頼できる不動産会社をパートナーに選び、査定価格の根拠や販売戦略をしっかりと見極めることが重要となります。売却には多くの手続きや専門知識が求められますが、この記事で解説したポイントを押さえ、計画的に準備を進めることで、後悔のない取引を実現できるでしょう。まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、相談するところから始めてみましょう。

