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不動産競売の配当要求とは?手続きの流れから期限・必要書類まで解説

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取引先の不動産が競売にかけられた場合、自社の債権をいかにして回収するかは経営上の重要な課題です。他の債権者が申し立てた競売手続きに参加し、売却代金から弁済を受ける「配当要求」は、費用を抑えつつ債権回収を図るための有効な手段となります。この記事では、不動産競売における配当要求の基本から、手続きの具体的な流れ、必要書類、そして厳守すべき期限について、実務担当者が押さえるべきポイントを網羅的に解説します。

不動産競売における配当要求とは

債権回収を実現するための重要な手続き

配当要求とは、他の債権者が申し立てた不動産競売手続きに参加し、売却代金から自己の債権の弁済を受けるために行う手続きです。自ら競売を申し立てる費用や手間をかけずに債権回収を図れるため、実務上きわめて重要な手段となります。

不動産競売では、申立人である差押債権者が売却代金を独占するわけではなく、法律で定められた資格を持つ他の債権者も配当に参加できる仕組みになっています。配当要求は、強制執行手続の一部であり、この手続への参加を通じて、消滅時効の更新の対象となることがあります。配当要求ができる債権者の資格は、手続きの遅延防止や公平性の確保のため、法律により限定されています。

競売手続きの全体像と配当要求のタイミング

不動産競売は債権者の申立てから始まり、裁判所が受理すると競売開始決定がなされ、対象不動産が差し押さえられます。債権者が配当要求を行える期間には限りがあるため、手続き全体の流れとタイミングを把握しておくことが重要です。

競売申立てから配当要求終期までの流れ
  1. 債権者が裁判所に不動産競売を申し立てる
  2. 裁判所が受理し、競売開始決定と差押登記を行う
  3. 裁判所書記官が配当要求の終期を定め、公告する(通常、競売開始決定から約2〜4週間後)
  4. 債権者は公告された終期までに、書面で配当要求を行う

一般的に、競売の申立てから実際に配当が実施されるまでには、6か月から10か月程度の期間を要します。配当要求の終期を過ぎてしまうと原則として配当を受ける権利を失うため、公告を注意深く確認し、期限内に手続きを完了させる必要があります。

配当の見込み額を事前に確認する重要性

配当要求を行う前には、その不動産の売却代金から十分な配当を受けられる見込みがあるかを精査することが不可欠です。特に、不動産に複数の担保権が設定されている場合、優先順位の低い債権者には配当が回らない可能性があります。

裁判所は、不動産の売却見込み額が手続き費用や優先債権の額に満たない「無剰余」の状態であると判断した場合、「無益執行禁止の原則」に基づき競売手続きを取り消します。そのため、配当要求を検討する債権者は、事前に以下の点を確認すべきです。

配当要求前の確認事項
  • 登記簿謄本で、対象不動産に設定されている担保権の状況を確認する
  • 先順位の債権額と不動産の評価額を比較し、配当が見込めるか検討する
  • 無剰余(売却代金が執行費用や優先債権額に満たない状態)のリスクを評価する

十分な配当が見込めない場合は、配当要求を見送り、債務者の他の財産に対する強制執行など、別の回収手段を検討する方が効率的です。

配当要求ができる債権者の種類と要件

執行力のある債務名義の正本を持つ一般債権者

執行力のある債務名義の正本を持つ債権者は、配当要求を行うことができます。債務名義とは、私法上の請求権の存在と範囲を公的に証明し、強制執行を可能にする文書のことです。単なる契約書や借用書だけでは足りず、裁判所の手続きなどを経て法的な執行力を備えた書面を準備する必要があります。

執行力のある債務名義の例
  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 和解調書調停調書
  • 執行受諾文言が記載された公正証書(執行証書)

これらの債務名義には、強制執行の当事者を明確にするための執行文の付与が必要となる場合があります。

仮差押えの執行をした債権者

競売対象の不動産について、差押えの登記がされる前に仮差押えの登記をした債権者も、配当要求が可能です。仮差押えは、金銭債権の将来の強制執行を確実にするため、債務者の財産を一時的に保全する手続きです。

ただし、仮差押えはあくまで仮の措置であるため、実際に配当金を受け取るには、別途本案訴訟を提起して勝訴判決などの債務名義を取得する必要があります。配当期日までに債務名義を取得できない場合、配当額に相当する金銭は供託され、権利が確定した後に払い渡しを受けることになります。仮差押債権者の配当順位は他の一般債権者と同等であり、原則として債権額に応じた按分配当となります。

一般の先取特権があることを文書で証明した債権者

法律で定められた特定の債権を持つ者は、一般の先取特権者として配当要求ができます。これらの債権は、社会的・政策的な理由から特に保護されており、債務名義がなくても、その存在を文書で証明すれば競売手続きに参加できます。

一般の先取特権に該当する債権の例
  • 雇用関係から生じる債権(給料、退職金など)

証明書類としては、雇用契約書、賃金台帳、管理規約などが用いられます。一般の先取特権は債務者の総財産から優先的に弁済を受けられる強力な権利ですが、税金や登記済みの担保権には劣後する場合があるため、優先順位には注意が必要です。

配当要求の手続き方法と必要書類

裁判所への配当要求申立ての流れ

配当要求は、執行裁判所が定めた終期までに、必要書類を添付した配当要求書を提出して行います。手続きの基本的な流れは以下の通りです。

配当要求申立ての基本的な流れ
  1. 競売開始の公告や通知を確認する
  2. 必要書類を揃え、配当要求書を作成する
  3. 配当要求の終期までに、管轄の執行裁判所へ書類を提出する
  4. 裁判所の審査を経て、配当要求が受理される
  5. 配当期日に提示される配当表案を確認する
  6. 異議がなければ、確定した配当額の交付を受ける

配当要求書の書き方と主な記載事項

配当要求書には、債権の内容を具体的に記載する必要があります。書式は各裁判所のウェブサイトで確認できますが、主に以下の事項を記載します。

配当要求書の主な記載事項
  • 事件番号
  • 債権者・債務者の氏名(名称)と住所
  • 請求債権の原因(契約内容や不履行の事実など)
  • 請求債権の額(元本、利息、遅延損害金の内訳)

提出の際は、裁判所用の正本のほかに、差押債権者や不動産所有者(債務者)の数に応じた副本の添付が必要です。記載に不備があると修正を求められ、終期に間に合わなくなるリスクがあるため、正確な作成が求められます。

申立てに必要な添付書類

配当要求の申立てには、配当要求を行う資格を証明する書類を添付する必要があります。資格によって必要な書類が異なります。

資格別の主な添付書類
  • 債務名義を持つ債権者: 執行文が付与された債務名義正本、送達証明書
  • 仮差押債権者: 仮差押決定正本、仮差押登記がされた登記事項証明書
  • 一般の先取特権者: 特権の存在を証明する文書(雇用契約書、管理規約など)
  • 共通(法人の場合): 代表者の資格証明書(代表者事項証明書など、発行後3か月以内)

このほか、関係者への書類送付に使用する郵便切手などの予納も必要となります。

競売手続の取下げ・取消しによる配当要求失効のリスク

配当要求は、他の債権者が申し立てた競売手続きに参加する制度です。そのため、元の競売手続きが申立人の取下げや取消しによって終了した場合、配当要求もその効力を失ってしまいます

例えば、差押債権者が債務者から直接弁済を受けて競売を取り下げると、後から参加した配当要求債権者はその手続きで配当を受けられなくなります。このリスクを回避するためには、自らも債務名義に基づいて差押えの申立てを行い、「二重開始決定」の状態にしておくことが有効です。二重開始決定がなされていれば、先行する競売が停止しても、後行の決定に基づいて手続きが続行されるため、より確実に債権回収を目指すことができます。

配当要求の終期(期限)とその確認方法

配当要求の終期とはいつか

配当要求の終期とは、執行裁判所が定める配当要求の提出期限日です。実務上、競売開始決定から約1か月後に設定されることが多く、この終期までに手続きを完了させなければ、原則として配当金を受け取れなくなります。

ただし、特定の条件下では終期が更新・延期される例外規定も存在します。

配当要求の終期が更新・延期される主なケース
  • 二重開始決定において、後の申立てが終期後になされた場合(新たな終期の設定)

このように期限が変動する可能性はありますが、債権者としては当初定められた終期を厳守して手続きを進めることが基本です。

裁判所の公告による終期の確認手順

裁判所書記官は、配当要求の終期を定めると、その旨を公告します。この公告は、債権者が終期を確認するための重要な情報源です。

登記簿上の担保権者などには裁判所から個別の催告が送られますが、配当要求が必要な一般債権者などには通知がありません。そのため、債権者自らが積極的に情報を確認する必要があります。

配当要求の終期の確認方法
  • 裁判所内の掲示板での公告を確認する
  • 不動産競売物件情報サイト(BIT)で情報を検索する

混同しやすい「債権届出」との違い

手続きが必要な債権者の範囲と目的の相違点

配当要求と似た手続きに「債権届出」がありますが、両者は対象となる債権者や目的が大きく異なります。債権届出は、差押え登記前から登記簿に記載されている抵当権者などが、裁判所からの催告に応じて債権の内容を知らせる手続きです。

一方、配当要求は、登記簿に記載のない一般債権者などが、自ら能動的に配当への参加を求める手続きです。 最大の違いは、期限内に手続きをしなかった場合の影響にあります。

配当要求 債権届出
対象者 差押登記後に権利を主張する一般債権者、仮差押債権者など 差押登記前から登記されている担保権者、租税債権者など
目的 新たに配当を受ける地位を取得する 既に有する権利の内容を裁判所に知らせる
裁判所の対応 債権者からの自発的な申立てを待つ 対象者に債権届出をするよう催告する
期限徒過の影響 配当を受ける権利を失う(原則) 配当権は失わないが、不利益を受ける可能性がある
「配当要求」と「債権届出」の主な違い

配当要求に関するよくある質問

配当要求の終期を過ぎてしまった場合、どうなりますか?

原則として、配当を受ける権利を失い、その競売手続きにおける売却代金からの回収はできなくなります。ただし、二重開始決定など、特定の事情により新たな配当要求の終期が定められる場合には、改めて配当要求を行える可能性もあります。しかし、これは不確実性が高いため、当初の期限内に手続きを完了させることが最も重要です。

配当要求をしなくても配当を受けられる債権者はいますか?

はい、います。差押えの登記がされる前から登記されている抵当権者や質権者、または税金を管轄する官庁などは、配当要求をしなくても当然に配当を受けることができます。これらの債権者は裁判所から「債権届出」を促す催告を受けますが、仮に届出をしなくても、登記情報などに基づいて計算された額の配当を受けることが可能です。ただし、正確な債権額での配当を受けるためには、債権届出書を提出することが望ましいです。

配当要求の手続きに費用はかかりますか?

はい、費用がかかります。ただし、比較的に低額です。主な費用は以下の通りです。

配当要求申立てにかかる主な費用
  • 手数料: 収入印紙500円(債務名義の個数ごと)
  • 予納郵便切手: 関係者への通知用(数千円程度)
  • 添付書類取得費: 登記事項証明書や代表者事項証明書などの実費

正確な金額は申立てを行う裁判所によって異なる場合があるため、事前に管轄の裁判所に確認することをお勧めします。

まとめ:確実な債権回収に向けた配当要求のポイント

不動産競売における配当要求は、他の債権者が開始した手続きに参加し、売却代金から自社の債権回収を図るための重要な制度です。この手続きを成功させるには、執行力のある債務名義の正本など、法律で定められた資格要件を満たす必要があります。最も重要なのは、裁判所が公告する「配当要求の終期」を厳守することであり、この期限を過ぎると原則として配当を受ける権利を失います。

申立て前には、登記簿で不動産の担保状況を確認し、配当が見込めるかを慎重に判断することが不可欠です。また、元の競売申立てが取り下げられるリスクに備え、状況に応じて自らも差押えを行う「二重開始決定」も視野に入れるべきでしょう。これらの要点を踏まえ、迅速かつ正確に手続きを進めることが、確実な債権回収へと繋がります。

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