人事労務

退職勧奨と厚生労働省の考え方|違法となる行為と見直すべき社内基準

経営リスクナビ編集部

退職勧奨を検討・実施する局面では、どこまでが適法な提案で、どの時点から「退職の強要」と評価され得るのかの線引きを、社内で同じ基準で把握しておく必要があります。特に妊娠・出産や育児休業に関連するケースでは、厚生労働省告示第312号の指針も踏まえた運用が求められ、判断を誤ると紛争化や是正対応につながりかねません。放置すると、面談設計や条件提示の不備が後から問題視され、解雇へ移行する場合も含めて手続(原則30日前予告など)の負担が連鎖的に大きくなります。以下では、退職勧奨の判断材料として違法性の見られ方と実務対応の要点を示します。

退職勧奨の位置づけ

退職勧奨とは何か

退職勧奨は、使用者が労働者に対し自主的な退職(合意退職)を選択肢として提示し、最終的に双方の合意により労働契約を終了させるための働きかけです。法的には「合意退職の申込み・誘引」に位置づけられ、労働者が自由意思にもとづき同意する限り、直ちに違法とはされません。

他方で、労働者には退職勧奨に応じる義務はなく、拒否されれば雇用契約は継続します。そのため実務上は、退職勧奨を「解雇の代替手段」として安易に用いるのではなく、拒否の自由を前提に、説明の根拠(人員配置・適性・業務上の必要性等)と手続の相当性を整えて進めることが重要です。

また、退職金や解決金等の金銭条件を提示すること自体は交渉としてあり得ますが、労働者側から過剰な上乗せ(他の従業員よりも著しく多い支払い)を求められた場合は、社内の退職金規程・支給基準との整合を外さない設計が必要です。要求に応じるか否かの検討と並行して、要求の態様が著しい場合には、別途の労務対応(解雇を含む適法性検討)を要する場面もあります。

解雇・整理解雇との違い

退職勧奨と解雇の違いは、雇用終了が労働者の同意によるものか(合意退職)/使用者の一方的意思表示によるものか(解雇)にあります。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には権利濫用として無効となります(労働契約法第16条)。

加えて、普通解雇を検討する局面では、就業規則等に解雇事由の定めがあること、法令上の解雇禁止事由に該当しないこと等の整理が必要です。手続面では、原則として30日前の解雇予告またはそれに代わる解雇予告手当(30日に不足する日数分の賃金相当額)の支払いが求められます(労働基準法第20条)。

そのため、会社としてはまず合意退職(退職勧奨)による解決可能性を検討しつつ、解雇に移行せざるを得ない場合に備えて、根拠規程・事実・証拠を精査し、後日無効となった場合の賃金相当額の遡及負担も含めてリスク評価する、という順序立てが実務的です。

厚生労働省がみる違法性

退職の強要とされる境界

退職勧奨が適法な範囲にとどまるか、違法な退職の強要(退職強要)に当たるかは、最終的には労働者の自由意思が確保されていたかで判断されます。形式上「合意退職」の形を取っていても、心理的圧迫等により自由意思が阻害されていれば、合意の有効性自体が争点となり得ます。

特に、労働者が拒否の意思を示した後も、同じ結論を迫ることを反復したり、退職届の提出をその場で迫って撤回の余地を与えない運用は、任意性を否定される要因になり得ます。加えて、退職強要が問題化した局面では、言動がハラスメントに該当し得るか(民法上の不法行為となり得るか)という観点だけでなく、企業が講ずべき措置を定めた枠組み(たとえば妊娠・出産等に関する言動については厚生労働省告示第312号の指針など)を踏まえ、社内調査・是正の観点でも評価されます。

強要認定に近づく評価要素(総合考慮されやすい点)
  • 拒否の意思表示後も勧奨を反復し、結論を事実上強制しているか
  • 面談の頻度・拘束時間が過大で、休憩や中断の余地がないか
  • 密室性(閉鎖空間、退室制限、周囲の視線遮断)が強いか
  • 会社側の人数が多く、取り囲み等の圧迫感が生じているか
  • 脅迫的示唆(根拠のない懲戒解雇示唆等)や名誉感情を害する言動があるか

違法と評価されやすい行為

退職勧奨が違法・不当と評価されやすいのは、退職の選択を「提案」ではなく「強制」に変質させる行為類型がある場合です。とりわけ、根拠のない処分示唆や人格否定は、退職強要だけでなくパワーハラスメントとして問題化しやすく、企業側には適切な調査・対応(必要に応じて懲戒処分や人事上の措置、当事者の引き離し等)を検討すべき局面が生じます。

違法・不当と評価されやすい典型例
  • 応じなければ懲戒解雇にするなど、根拠なく不利益処分を示唆して追い込む行為
  • 能力欠如や精神疾患等を決めつけ、侮辱・嘲笑・人格否定に及ぶ発言
  • 長時間の拘束や深夜休日の呼出しにより、心理的に逃げ場を奪う運用
  • 「追い出し部屋」的に別室隔離や業務取り上げを行い、退職へ誘導する行為
  • 退職届や合意書への署名をその場で迫り、持ち帰り検討や相談の機会を与えない態様

何回・何人・どの言い方で強要認定に近づくかを面談設計で見分ける

回数・人数・言い方を「数値基準」で固定しても、それだけで適法性が担保されるわけではありません。重要なのは、拒否の自由と検討の余地を担保し、労働者の自由意思を支える運用(情報提供・熟慮期間・相談機会の確保)を一貫して行うことです。

特に、解雇を選択肢として検討せざるを得ない場面では、解雇が後日無効となり得ること(労働契約法第16条)や、解雇手続として原則30日前予告または解雇予告手当が必要となること(労働基準法第20条)を踏まえ、退職勧奨の場で「解雇をほのめかして同意を取る」ような誘導は避けるべきです。

面談設計で押さえる運用ルール(強要線引きの観点)
  • 面談の目的は「相談・提案」であり、解雇通知ではない旨を冒頭で明確化する
  • 拒否の意思が示された場合は、同一結論を迫る反復を避け、社内再検討へ切り替える
  • 人数は必要最小限とし、威圧感が出ない座席配置・発言者の限定を徹底する
  • 検討期間を明示し、家族・専門家に相談できる余地を確保する
  • 発言は評価や感情論ではなく、業務上の事実・配置上の必要性・提案条件に限定する
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妊娠出産と退職勧奨

女性労働者への不利益取扱い

妊娠・出産等を理由とする退職勧奨は、実質的に「辞めるよう迫る」ことになりやすく、不利益取扱いとして強く問題視されます。妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇その他不利益取扱いは、男女雇用機会均等法で禁止されています(男女雇用機会均等法第9条)。

また、企業が必ず理解し遵守すべき枠組みとして、職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)があり、妊娠・出産等に関する言動が退職の強要や就業環境の悪化につながらないよう、雇用管理上の措置を講ずることが求められます。

妊娠中の体調不良や母性健康管理上の配慮の申出を契機として退職勧奨に進むと、「配慮」の名目であっても結果として離職を迫るものと評価され得ます。退職の話を出す前に、就業継続のための調整(業務負担の見直し、作業環境の調整、配置の工夫等)を優先して検討することが安全です。

育児休業・介護休業時の禁止

育児休業・介護休業の申出や取得を理由とする解雇その他不利益取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています(育児・介護休業法第10条)。休業中・復職直後の退職勧奨は、形式上は「合意退職の提案」として説明しても、実質として休業取得を理由とする排除と受け止められやすく、行政対応・紛争化リスクが高まります。

さらに、育児・介護休業法は改正が続いており、の範囲でも、2024年5月改正により2025年4月から「3歳に満たない子を養育する労働者がリモートワークを選択できる措置」を事業主が講ずることが努力義務化される点が示されています。休業取得者・育児期の従業員への対応は社会的関心も高く、退職勧奨の適否はコンプライアンスの観点からも厳しく見られるため、対象選定と説明根拠をいっそう慎重に整える必要があります。

妊娠中・産後・育休申出後で判断基準が変わる場面と、退職勧奨より先に検討すべき措置

妊娠・出産・育休申出に関連する場面では、退職勧奨が「自由意思の提案」に見えても、実際には不利益取扱い・言動型ハラスメントの問題として整理されやすく、法的リスクが上がります。企業としては、退職勧奨を検討する前提として、当該従業員の就業継続を可能にする措置を先に尽くしたか(尽くしたことを説明できるか)が問われます。

退職勧奨より先に優先して検討すべき措置(妊娠・出産・育児期)
  • 妊娠・出産等に関する言動の問題が疑われる場合は、厚生労働省告示第312号の枠組みを踏まえた相談対応・事実確認・是正を先行する
  • 育児期の両立支援として、2025年4月から努力義務化される「3歳未満の子を養育する労働者のリモートワーク選択措置」を含め、就業継続策を検討する
  • 配置・業務負担・勤務時間の調整など、健康配慮とキャリア継続の両立を優先する

退職勧奨の実務対応

事前準備と配置転換の検討

退職勧奨を進める前に、まず「なぜ当該従業員に退職の選択肢を提示するのか」を、後日検証可能な形で整理しておく必要があります。解雇を視野に入れ得る局面では特に、労働契約法第16条の枠組みに照らして、事実・証拠・就業規則上の根拠の点検を行い、いきなり退職勧奨に飛ばないことが重要です。

また、退職金等の取り扱いは紛争になりやすいため、就業規則・退職金規程・過去の支給実績など、説明根拠となる内部資料を事前に揃えておくことが有効です。退職金請求の立証資料としては、退職金規程や過去の退職金明細書等が挙げられることが整理されており、企業側も同種資料を用いて条件提示の合理性を説明できるようにしておくべきです。

事前準備で整える資料と論点
  • 就業規則・退職金規程(支給要件、不支給条項、算定方法の根拠)
  • 勤怠記録、業務ミスの記録、指導書面、面談メモ等の客観資料
  • 配置転換・職務変更など雇用継続策を検討した経緯(打診先、検討結果)

面談方法と記録化の進め方

面談は、労働者の自由意思を確保しながら、事実と提案条件を丁寧に説明する場です。面談の冒頭で「解雇の通知ではなく、合意退職を含む選択肢の相談である」ことを明確にし、拒否できること、持ち帰り検討できることをセットで伝えます。

記録化は、後日の紛争で最重要の基礎資料になります。退職金等の争いでは、退職の事実を示す書面(解雇通知、離職証明書等)や、退職金の定めを示す資料(就業規則、退職金規程等)が立証資料となり得る整理がされているため、企業としても「何を提示し、相手がどう応答したか」を客観的に残す必要があります。

面談記録に最低限含める項目
  • 日時・場所・出席者・面談時間
  • 会社から説明した事実(業務上の課題、配置上の必要性等)
  • 提示した条件(退職日、金銭条件、手続、検討期限)
  • 労働者の回答(同意、拒否、保留、質問、要望)をできるだけ発言どおりに記載
  • 次回対応(再面談の要否、資料追加、回答期限)

賃金・条件提示時の留意点

条件提示は「同意を得るための合理的提案」であり、同意を迫る道具にしてはいけません。退職金や解決金の話題は、金額そのものよりも、提示の仕方(根拠・検討期間・相談機会)が適法性評価に直結します。

の整理でも、労働者から退職金等の支払いを要求された場合に、過剰に(他の従業員よりも多く)支払わないようにすべきという留意点が示されています。したがって、社内基準を外れる上乗せを安易に約束するのではなく、退職金規程にもとづく算定や、過去の同種事案との均衡を説明できる状態で提示条件を設計します。

条件提示での実務チェック
  • 退職金規程にもとづく算定根拠を説明できるようにする
  • 過去の支給実績との均衡を崩す「過剰な上乗せ」を安易に約束しない
  • その場での即答・署名を求めず、持ち帰り検討と相談の機会を付与する
  • 合意する場合は、清算条項等を含む合意書面で条件と手続を明確化する

拒否された後に誰が・いつ・どの資料で再検討するか──再面談前の社内判断フロー

拒否後に同じ担当者がそのまま押し切ろうとすると、退職強要の評価に近づきます。拒否が出た時点で、面談フェーズから社内審査フェーズに切り替え、根拠と手続の相当性を再点検するのが安全です。

拒否後の社内判断フロー(再面談前)
  1. 面談担当者が面談記録・提示書面・録音等を取りまとめ、事実関係を確定する
  2. 就業規則・解雇事由該当性・解雇禁止事由の有無を点検し、労働契約法第16条の観点で見立てを作る
  3. 解雇を検討し得る場合は、原則30日前予告または解雇予告手当の要否(労働基準法第20条)も含め手続設計を確認する
  4. 退職金・解決金等の条件は退職金規程等の根拠資料にもとづき、過剰支払いにならないよう再設計する
  5. 再面談をする場合でも、結論の押し付けにならない説明構成(検討期限、相談機会、拒否の尊重)を準備する
  6. 再交渉の余地がない場合は、退職勧奨を終了し、通常の労務管理(配置・指導・評価)へ戻す
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就業規則と社内統制

モデル就業規則との整合確認

就業規則の整備は、退職勧奨の適法性を直接担保するものではありませんが、紛争時に「会社の運用が恣意的ではない」ことを説明する基盤になります。特に、解雇を検討する可能性がある場合には、就業規則等に解雇事由の定めがあること、そして法令上の解雇禁止事由に該当しないことを確認する必要がある、という整理が重要です。

加えて、退職金の争点化を避けるため、退職金規程(支給要件・算定方法・不支給条項)を最新状態で維持し、説明可能性を確保します。退職金を請求する場面では、退職金規程等の「定め」や算定可能性を示す資料が重視され得るため、会社側も規程と運用の不一致がないか点検しておくべきです。

規程点検で見落としやすいポイント
  • 解雇事由が就業規則等に規定されているか(限定列挙として運用しているか)
  • 退職金規程が実態に合い、算定根拠を説明できるか
  • 規程にない不利益条件(退職金不支給等)を交渉の場で持ち出していないか

懲戒処分と退職勧奨の整理

懲戒処分は企業秩序違反への制裁であり、就業規則等に懲戒に関する規定が定められていることが前提となります。さらに、従業員の行為と懲戒の内容との均衡から、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(この「妥当な範囲」を外すと新たな紛争火種になります)。

一方、退職勧奨は制裁ではなく、あくまで合意退職の提案です。したがって、退職勧奨の場で「退職しなければ懲戒解雇にする」など、懲戒事由・証拠・手続の裏付けがないまま処分を持ち出すことは、心理的圧迫として退職強要評価を招きやすくなります。懲戒を検討するなら、退職勧奨とは切り分けて、規程と手続にもとづき進めるべきです。

勤務不良・能力不足・協調性欠如で退職勧奨を検討する際の証拠水準と、就業規則上の根拠の分け方

勤務不良等を理由に退職勧奨を行う場合でも、後日「実質は解雇の圧力だった」と争われ得るため、証拠と根拠規程の整理が必要です。解雇が視野に入るときは特に、労働契約法第16条の枠組みを意識し、事実経過・指導教育・改善機会の付与が説明できるレベルまで整えることが実務上の防波堤になります。

加えて、で示されているとおり、解雇を検討する際は「就業規則等に解雇事由の定めがあるか」「法令上の解雇禁止事由に該当しないか」を起点に点検する必要があります。たとえば妊娠等は解雇禁止事由として典型的に問題となり得るため、対象者属性の確認は初期段階で行うべきです。

証拠と根拠の整理(勤務不良・能力不足等)
  • 勤怠記録や業務指示書、面談メモ等の客観資料で、問題の内容と頻度を特定する
  • 指導・教育を尽くした経緯(改善機会を与えた事実)を時系列で整理する
  • 就業規則上の「普通解雇事由」と「懲戒事由」を混同せず、該当性を別立てで検討する
  • 解雇禁止事由(妊娠等)に抵触しないかを最初に確認する

トラブル発生後の対応

初動対応と事実確認の進め方

退職勧奨をめぐり、労働者から「強要された」「ハラスメントだ」等の主張が出た場合、初動はスピードと客観性が重要です。社内で感情的に反論すると証拠保全を損ねるおそれがあるため、まず事実確認の枠組みを作ります。

ハラスメント事案では、調査結果にもとづき加害者への懲戒処分や人事上の措置を行うことがあり得る一方、処分が重過ぎれば別の火種になり得るため、妥当性の検討が必要とされています。また、当事者の配置換え(引き離し)を検討する場合には、不利益取扱いの観点から、原則として加害者側を対象とする整理が示されています。退職勧奨トラブルでも、同様に「誰をどのように動かすか」が二次被害や紛争拡大を左右するため、安易に申告者(被害申立て側)を動かす対応は避け、慎重に設計します。

初動の実務手順(証拠保全と体制)
  1. 面談記録・録音・提示書面・メール等を改ざんの余地がない形で保全する
  2. 面談関係者からヒアリングし、時系列(誰が・いつ・何を言ったか)を確定する
  3. 就業規則・退職金規程等、提示条件の根拠資料を回収し、説明の整合性を点検する
  4. ハラスメント該当性が疑われる場合は、調査と是正(必要に応じ懲戒・人事措置)を妥当な範囲で検討する
  5. 対外窓口を一本化し、交渉方針と発信内容を統制する

あっせん・訴訟の流れと負担

交渉で収束しない場合、都道府県労働局の個別労働紛争解決制度のあっせん、裁判所の労働審判や訴訟へ進むことがあります。制度選択により時間軸や対応負担が変わるため、早期に見立てを立てる必要があります。

の整理でも、解雇は後日無効になった場合に、会社が解雇日以降の賃金相当額等の負担を負い得る点が指摘されています。退職勧奨が争点化した場合でも、実質解雇に近い評価や合意無効が争われると、同様に金銭負担が拡大し得ます。そのため、紛争手続に入る前に、労働契約法第16条の見立て、労働基準法第20条の手続要件、退職金規程にもとづく支給関係の整理を同時並行で行うことが実務的です。

よくある質問

退職勧奨に応じない労働者を後日解雇できますか?

退職勧奨に応じないこと自体を理由に解雇することはできません。退職勧奨は合意形成の提案であり、拒否は労働者の自由だからです。

ただし、退職勧奨と無関係に、解雇に客観的合理性と社会通念上の相当性が認められる場合には、普通解雇が有効となり得ます(労働契約法第16条)。この場合も、就業規則等に解雇事由の定めがあること、法令上の解雇禁止事由に該当しないことを確認し、手続として原則30日前予告または解雇予告手当(労働基準法第20条)を満たす必要があります。

妊娠中の配置転換の打診は退職勧奨になりますか?

妊娠中の配置転換の打診それ自体が、直ちに退職勧奨に当たるとは限りません。安全配慮や就業継続のための調整として、業務内容の見直し等を提案することはあり得ます。

一方で、妊娠・出産等に関する言動や扱いは、男女雇用機会均等法の不利益取扱い禁止(男女雇用機会均等法第9条)との関係で厳格に評価されます。さらに、職場における妊娠・出産等に関する言動に起因する問題についての指針(平成28年厚生労働省告示第312号)の枠組みも踏まえ、配置転換が「配慮」を装った離職誘導(不利益な配置への押し込み等)と受け取られる態様になっていないかを点検し、本人の意向確認・説明の記録化を徹底することが重要です。

退職勧奨で割増退職金を示すこと自体は違法ですか?

割増退職金や解決金の提示それ自体は、直ちに違法ではありません。合意退職の条件交渉として行われることがあります。

ただし、の整理では、退職金等の支払いを要求された場合に過剰に(他の従業員よりも多く)支払うことがないようにすべきという留意点が示されています。したがって、退職金規程等の根拠にもとづく説明可能性と、過去事案との均衡を確保しつつ、即答・即署名を迫らない運用(検討期間の付与)を組み合わせることが、安全な条件提示になります。

派遣先が派遣労働者に退職勧奨に類する行為をすると問題ですか?

問題となり得ます。派遣労働者との雇用契約当事者は派遣元であり、派遣先が派遣労働者に対して直接「辞めるように」働きかけることは、適法な権限関係を踏み外すリスクがあります。

また、派遣先の言動が圧迫的であれば、退職強要に類する問題だけでなく、ハラスメントとしての問題にも発展し得ます。派遣契約の見直しや就業継続が困難な事情がある場合は、派遣労働者本人に直接迫るのではなく、派遣元・派遣先が連携して対応事項を整理する(派遣元・派遣先事業者が連携して行う事項を踏まえる)ことが基本です。

退職勧奨への対応で次にすべきこと

退職勧奨は合意退職の提案である一方、自由意思を損なう運用(反復、密室性、即時の署名要求など)が重なると、退職強要やハラスメントとして評価され得ます。特に妊娠・出産、育児休業に関わる場面は、男女雇用機会均等法(男女雇用機会均等法第9条)や育児・介護休業法(育児・介護休業法第10条)、厚生労働省告示第312号の枠組みを踏まえて、退職勧奨より先に就業継続策を検討した説明可能性が判断の軸になります。解雇へ移行し得るケースでは、原則30日前の解雇予告または解雇予告手当(労働基準法第20条)を含む手続要件と、後日無効となった場合の負担も同時に見立てる必要があります。次アクションとしては、面談設計(目的・人数・検討期間)と記録化、退職金規程等にもとづく条件提示の根拠整理、拒否後の社内審査フローを先に整え、必要に応じて人事労務・法務や外部専門家に相談して個別事案に即した運用へ落とし込むことが重要です。



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