事業運営

東芝M&Aの展望|非公開化後の売却と買収の判断軸

経営リスクナビ編集部

東芝のM&Aの展望を追う局面では、TOB・非公開化が進むなかで、自社の資本政策やM&A方針をどう設計し直すかが経営・財務/法務の実務課題になります。論点を放置すると、上場・非上場いずれの前提でも、売却や買収の意思決定が「株主対応」なのか「レンダー対応」なのか整理できないまま進み、手続・開示・資金調達条件で手戻りが生じやすくなります。東芝が2023年8月から1株あたり4,620円でTOBを実施し非公開化に至った流れを素材に、事業ポートフォリオ再編とLBOファイナンスの見方を、自社検討に引き直せる形で揃えることが目的です。以下では、東芝事例を踏まえた判断材料として、再編の論点と銀行目線のチェックポイントを示します。

東芝TOBと非公開化の位置付け

TOBから上場廃止までの経緯

2015年に発覚した不正会計問題を契機として、東芝は深刻な経営危機に直面しました。米国の原子力子会社ウエスチングハウス関連で巨額損失が顕在化し、債務超過リスクの圧力が高まったことから、資本政策・事業売却・ガバナンス対応を同時に迫られた局面でした。

2016年に東芝メディカルシステムズ、2018年に東芝メモリなどの主要事業を売却し、2017年末には約6,000億円の第三者割当増資を実施しました。結果として、海外ファンドを中心に株主の影響力が強まり、経営陣との対立が長期化しました。

その後、経営の不確実性を収束させるため、日本産業パートナーズ主導の国内連合による買収提案を受け入れ、買収目的会社TBJHを通じて株式公開買付(TOB)を実施しました。TOBは、買付期間・買付株数・買付価格を一般に告知し、不特定多数の株主から市場外で株式を買い集める制度であり、上場株式を取引所以外で取得して経営権を取りに行く場合に用いられる典型的手法です。

東芝TOB(2023年)の要点(事実関係)
  • 2023年8月からTBJHを通じて1株あたり4,620円でTOBを実施しました。
  • 応募比率は約78%となりTOBは成立しました。
  • 2023年11月の臨時株主総会で株式併合が承認されました。
  • 2023年12月20日に上場廃止となり、スクイーズアウト手続を経て非公開化が完了しました。

非公開化で株式と経営はどう変わるか

TOBとスクイーズアウトが完了すると、株主構成は「多数の分散株主」から、スポンサーが支配する実質的な単一株主構造へ収れんします。ここで重要なのは、単に株主が変わるだけでなく、意思決定の評価軸と説明責任の相手先が変わる点です。

非公開化の効果は、四半期開示や株価変動への即応を不要にすること自体よりも、資本市場が要求しがちな短期の利益還元圧力や、株主間の情報非対称を利用した水面下の買い集めを抑止する制度設計から解放され、経営が中長期の再編にコミットしやすくなる点にあります。TOB制度は、経営権が水面下で移転して一部株主の権利が害される事態を防ぐ趣旨があり、「誰が、どの条件で、経営権を取りに行くか」を公にして進める枠組みです。

また、取締役会の構成もスポンサー主導で再設計されやすくなり、上場維持に伴うIR実務・株主対応の負担が減る一方で、スポンサー・レンダー(融資銀行)との間では、事業計画・資本政策・担保設定・財務制限条項(コベナンツ)など、別種の規律が強く働きます。

少数株主が残る場合と完全子会社化する場合で、再編の自由度はどこまで変わるか

少数株主が残る状態では、事業譲渡・会社分割・株式交換などの組織再編で、利益相反管理や手続の公正性の説明が常に論点になります。とくに、株主総会の特別決議が必要となる類型では、反対株主対応(説明・交渉・訴訟リスク管理)がボトルネックになり、スピードと柔軟性が落ちます。

一方、スクイーズアウトで完全子会社化(100%化)すると、外部の少数株主保護を前提とする調整コストが大きく低下し、グループ内の統合・カーブアウト・資産売却などを機動的に行いやすくなります。これは「何でもできる」という意味ではなく、レンダーの同意や担保制約など資金提供者側の規律に置き換わりやすい、という整理が実務的です。

参照として、組織再編は原則として株主総会の特別決議が必要とされる一方、一定の条件を満たすと特別決議の省略が可能になる例外も整理されています(合併・会社分割・株式交換・株式移転など)。また、株式を自由に売却できない株式譲渡制限会社では、「100%子会社の解散・清算」や「子会社株式の譲渡」といった手続が認められない場面がある、とされています。

東芝の事業売却の全体像

主要な子会社売却と譲渡の流れ

東芝は財務危機対応とポートフォリオの再設計を目的に、主要事業・子会社の売却を段階的に実行しました。個別案件の金額や相手先は「資金調達」だけでなく、「何をコアに残すか」を示すシグナルとして市場・金融機関に読まれやすい点が実務上のポイントです。

主要な売却・譲渡(本文で触れるもの)
  • 2016年3月に東芝メディカルシステムズをキヤノンへ約6,655億円で売却しました。
  • 2018年6月に東芝メモリ(半導体メモリ事業)を分離し、米ベインキャピタル主導コンソーシアムへ約2兆円で譲渡しました。
  • 2020年5月に東芝ロジスティクスをSBSホールディングスへ199億円で売却しました。

また、参照される市場統計として、レコフによれば2020年1月から12月に公表された日本の上場企業による子会社・事業売却件数は399件で、過去10年で最多とされています。東芝の動きは個社事情に見えつつも、日本の大企業が「売却を含む再編」を実務手段として常態化させる流れの中に位置付けられます。

売却の狙いを財務と事業で分けてみる

東芝の売却の狙いは、財務目的と事業目的に分けると整理が容易です。

売却の狙い(財務目的と事業目的)
  • 財務目的としては、原発事業等で生じた巨額損失への対応として、手元流動性の確保と債務超過リスクの回避を優先しました。
  • 事業目的としては、多角化を見直し、投下資本利益率など資本効率を意識した「選択と集中」を進めました。

2015年以降のコーポレートガバナンス改革の流れでは、企業が投下資本利益率を経営指標に置き、目標を下回る事業は撤退も含めて検討する動きが浸透したとされています。東芝の売却は、危機対応であると同時に、この資本効率重視の潮流と整合する再編でもあります。

成功事例と失敗事例の評価軸

M&Aや事業売却の「成功/失敗」は、取引金額の大小だけで決まりません。売却価額の妥当性に加え、売却後に事業価値が伸びたか、売り手側が本業の競争力とキャッシュフロー創出力を回復できたか、を分解して見ます。

東芝の売却のうち、メディカル(2016年・約6,655億円)やメモリ(2018年・約2兆円)は、危機局面での資金確保として一定の役割を果たし、買い手側での事業継続が見込める点で「資金調達+事業継続」の観点から評価しやすい類型です。

一方で、失敗事例として語られやすい案件では、取引後に「数字の裏付けが取れない」「実在取引の把握ができない」など、管理の前提が崩れているケースが典型的です。にある別事例では、2024年7月19日の債権者集会で架空取引の反復が明らかになり、直近の2023年7月期で架空売上が8割超という異常値が示されたとされています。東芝の個別論点に直結させるのではなく、評価軸としては「買収・保有・撤退のいずれでも、管理可能なKPIと取引実在性の検証が欠落すると致命傷になり得る」という教訓として位置付けるのが実務的です。

売却額の大小より重要な、売却後に資金を返済・成長投資へどう振り向けたかの見極め方

事業売却で現金を得た場合、売却額よりも重要なのは、その資金が「返済に消えたのか」「成長投資に回ったのか」「両者のバランスが合理的か」です。とくに、非公開化やLBOと組み合わさる局面では、レンダーから見た返済原資の説明が不可欠になります。

売却資金の使途を見極める観点
  • 有利子負債の圧縮により資本構成が改善し、以後の資金調達条件(コベナンツや担保余力)が好転したかを確認します。
  • 成長投資が「R&D」「設備」「ボルトオン買収」など具体施策に落ちているか、単なるスローガンに留まっていないかを確認します。
  • 返済前提の計画では、融資実行の前提条件として「融資決裁時の前提に大きな誤解がないか」「決裁から実行までに大きな変化がないか」を金融機関が点検し、前提が崩れていれば実行停止や減額が機能する点も織り込みます。

また、担保・資産売却を織り込む場合は、ABL(アセット・ベースド・レンディング)の考え方として、にあるボロイング・ベースの例(売掛債権残高×一定割合+担保在庫評価×一定割合)を念頭に、資産の質と換金可能性を説明できる状態にしておくことが重要です。

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東芝M&Aの財務と融資構造

買収資金の構造とLBOの基本

LBOは、買い手の信用力だけでなく、対象会社が生むキャッシュフローや保有資産を実質的な返済原資・担保として活用し、買収資金を調達する手法です。実務では、スポンサーがSPC(買収目的会社)を設立し、金融機関のシニアローンやメザニン等と、スポンサーのエクイティを組み合わせて買収し、買収後に対象会社のキャッシュフローから返済していく構造になります。

MBO/LBOで重要なのは、「資金が集まるか」だけでなく、資金調達を優先しすぎると支配権の構成が変わるだけになり、何のための非公開化・再編なのかが曖昧になり得る点です。経営と資金の両面から戦略を練る必要がある、とされています。

さらに、融資側の実務としては、融資契約における実行前提条件が、決裁時に想定した収益力等に誤解がないか、決裁から実行までに大きな変化がないかを確認し、前提が崩れていれば実行停止・減額として機能する、という整理が重要です。

DSCRなど融資判断の見方

金融機関がLBO融資で重視するのは、返済原資となるキャッシュフローの安定性と、その裏付け資料の整合性です。代表的な指標がDSCR(元利金返済カバー率)で、返済前フリーキャッシュフローを、元本返済+利息の合計で割って算出します。

一方で、にあるとおり、融資判断に必要な情報は「貸借対照表・損益計算書だけ」では足りない場面が多く、勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)や、期中の試算表・資金繰り表等の定期報告を求められることがあります。LBOの審査でも同様に、キャッシュフローの出所が説明できる粒度まで落とすことが、実務上の詰まりどころになります。

DSCRが1倍近辺でも進める案件と止まる案件の分かれ目

DSCRが1倍近辺の限界的案件では、「予見可能性」と「追加回収手段(クッション)」が分かれ目になります。インフラの長期保守契約など、キャッシュインが硬い事業は相対的に前に進みやすい一方、市況・原材料・需要変動で振れやすい事業は、同水準のDSCRでも止まりやすくなります。

のABLの例では、売掛債権の掛け目を80%に設定したケースが示されています(売掛先の信用力を踏まえた設定)。このように、DSCRが薄い案件ほど、売掛債権・在庫・不動産などの換金性を、掛け目も含めて説明できるかが重要になり、担保余力が説明できない場合は融資が止まりやすくなります。

経営者・財務・法務がLBO検討初期にそろえるべき資料と、銀行説明で詰まりやすい論点

LBO検討初期は、銀行が「返済可能性」と「手続の適法性・確実性」を同時に見に来るため、財務と法務の両建てで資料をそろえる必要があります。にある「初回相談時に必ず持参してほしい資料」は、LBOに限らず銀行説明の基礎体力として有用です。

LBO検討初期に準備しておきたい資料(銀行説明の基礎)
  • 商業登記簿謄本(登記事項証明書)を用意します。
  • 決算書(附属明細書を含む)と税務申告書控えは、できれば直近3決算期分を用意します。
  • 直近の月次試算表(貸借対照表・損益計算書)を用意します。
  • 資金繰り表は少なくとも1か月分程度の日繰り表を用意し、未作成なら見通しメモでも可とします。
銀行説明で詰まりやすい論点(代表例)
  • 事業計画の前提(売上成長・コスト削減)の裏付けが、KPIと実行計画に落ちているかが問われます。
  • 最悪シナリオでも返済が回るか(感度分析)と、回らない場合の手当(資産売却・追加出資等)が問われます。
  • 取締役会等の手続の履践、担保設定の確実性など、融資実行の前提条件を満たせるかが問われます。

東芝の市場評価と企業価値

事業売却と株価推移の関係

東芝の株価推移は、不祥事・損失計上・事業売却・買収提案といったイベントに強く反応してきました。とくにTOB局面では、株価が買付価格へ収れんしていくメカニズムが働きます。

が示すTOB制度の趣旨は、買付条件(期間・株数・価格)を一般に告知し、不特定多数の株主に機会を与えることで、経営権が水面下で移転して一部株主の権利が損なわれる事態を防ぐ点にあります。東芝でも、2023年のTOBが1株4,620円で示され、株価はその水準を強い参照点として推移し、上場廃止までの不確実性が段階的に解消されました。

PERなど投資尺度と評価の変化

上場会社の評価はPER・PBRなどのマーケット指標で語られがちですが、コングロマリット構造や一過性損益が大きい企業では、単年度利益ベースの指標がノイズになります。非公開化後は、スポンサーとレンダーが重視する「キャッシュフロー」「EBITDA」「投下資本利益率」等に重心が移り、評価軸が実務的な返済能力・資本効率へ寄っていきます。

また、には企業価値評価の代表的な方法として、簿価純資産・時価純資産・清算価値・類似業種比準・DCF等が整理されています。非公開化後の再編では、売却・統合・資産売却の判断ごとに、どの評価方法に整合する説明か(例:清算価値の議論なのか、継続企業としてのDCFなのか)を揃えることが、意思決定の透明性を上げます。

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非公開化後の東芝の事業展望

グループ再編で想定される売却と買収

非公開化後の東芝では、上場会社としての説明責任の形が変わる一方、スポンサー・レンダーに対しては、より「実行可能な再編計画」と「資金回収の道筋」を求められます。事業ポートフォリオ再編は、事業の「選択と集中」を意味し、売却を進める企業がある一方で、完全子会社化(上場廃止)を進めて再編の実行速度を上げる企業も存在すると整理されています。

の事例として、ソニーが2020年5月にソニーフィナンシャルホールディングス、伊藤忠商事が2020年7月にファミリーマート、NTTが2020年9月にNTTドコモの完全子会社化をそれぞれ公表した点が挙げられています。東芝の非公開化も、同じ「再編の実行性を上げる」流れの中で読むと、個社の特殊事情だけでなく、資本政策の選択肢として理解しやすくなります。

その上で東芝の再編は、中核領域への集中と、周辺領域のカーブアウト・売却、必要に応じた技術補強型の買収(ボルトオンM&A)を組み合わせる方向が想定されます。金融機関目線では、売却・統合・投資の優先順位が、返済計画(DSCR等)と矛盾しない形で設計されているかが焦点になります。

パソコン・映像事業のその後

東芝から切り離された事業のうち、パソコン事業(東芝クライアントソリューション)は2018年にシャープ傘下に入り、Dynabookとして再編されました。映像事業(東芝映像ソリューション)は2017年に中国ハイセンスグループへ譲渡され、TVS REGZAへ移行しました。

これらは「撤退」ではなく、切り離したことで専業側の調達・販売チャネルを活用でき、事業の最適オーナー(best owner)に移すことで競争力を上げる、というカーブアウトの典型的な読み方ができます。

不動産や開発資産の活用余地

非公開化後、とくにLBO色が強い局面では、返済原資の厚みを作るために、非中核資産の売却や担保活用が検討されやすくなります。のABLの整理に沿えば、ボロイング・ベースの考え方(売掛債権残高×一定割合+担保在庫評価×一定割合)で調達余力を説明するには、債権の質・回収実績・在庫の換金性の説明が必要です。

また、の例では、売掛債権の掛け目を80%に設定し、棚卸資産は長期保存が利かない食品であることからゼロ評価とした整理が示されています。東芝の資産は性質が異なるものの、実務的示唆としては「資産を並べるだけでは足りず、換金性に応じて掛け目が入り、評価ゼロになる資産もあり得る」という点を押さえておくべきです。知的財産についても、ライセンス・共同開発・合弁等の形でキャッシュ化する場合、継続的収益として評価できる契約設計(範囲、対価、解除、チェンジオブコントロール等)が重要になります。

メーカーの事業承継への示唆

大手メーカーに共通する再編の潮流

日本の大企業は伝統的に事業売却に消極的とされてきましたが、コーポレートガバナンス改革等を背景に、事業・組織変革を迫られ、今後も売却は増加する見通しと整理されています。レコフによれば、2020年1月から12月に公表された日本の上場企業による子会社・事業売却件数は399件で過去10年で最多でした。

また、には2020年の主な事業売却案件の一覧が示されており、東芝ロジスティクス(2020年5月、SBSホールディングス、199億円)のほか、NECディスプレイソリューションズ(2020年3月、シャープ、92億円)など、電機各社でも売却が連鎖していることが読み取れます。東芝の非公開化は、こうした売却・完全子会社化を織り交ぜたポートフォリオ再編の延長線上で捉えると、他社の資本政策検討にも転用しやすくなります。

自社の財務とガバナンスへの示唆

東芝のプロセスから得られる実務的示唆は、「戦略」「財務」「ガバナンス」「レンダー対応」を分けて点検することです。

自社検討に引き直す際のチェック観点
  • 資本効率の指標(投下資本利益率など)を経営指標として置き、目標未達事業を撤退候補として議論できる体制かを確認します。
  • メインバンクは依頼して作るものではなく、融資残高が最も大きい銀行が通常メインバンクになる、という現実を踏まえ、誰が最大のレンダーになるかを早期に見立てます。
  • 銀行が求める情報開示は、決算書だけでなく勘定明細や試算表・資金繰り表など期中管理に及ぶため、経営管理の粒度を融資目線に合わせます。
  • 融資契約では、決裁から実行までの前提変化があると実行停止・減額があり得るため、前提条件の管理(手続の履践、担保設定、同意取得)を工程表で持ちます。

加えて、が示すとおり、買収案件は一度動き出すと止めづらいという実務的な課題があります。したがって、買収・売却・非公開化いずれでも、撤退判断のゲート(何が起きたら止めるか)を事前に定義しておくことが、コンプライアンスと資本政策の両面で重要になります。

よくある質問

東芝のTOB・非公開化はいつ完了したのですか?

TBJHによる公開買付けは2023年9月に成立し、その後、2023年11月22日の臨時株主総会で株式併合等が承認可決されました。所定の手続を経て、2023年12月20日に東京証券取引所および名古屋証券取引所で上場廃止となり、スクイーズアウトにより1株あたり4,620円の金銭交付を経て全株式の取得が完了しました。

あわせて、TOBは買付期間・株数・価格を一般に告知し、不特定多数の株主から市場外で株式を買い集める制度で、経営権の移転が一部株主に不意打ちにならないようにする趣旨がある点も、手続の位置付けとして押さえておくと理解が整理しやすいです。

銀行はLBO融資でどの指標を重視しますか?

金融機関は、キャッシュフローの安定性と返済確実性を中心に、DSCR(返済前フリーキャッシュフロー÷元利金返済額)やレバレッジ倍率等を確認します。

また、にあるとおり、融資判断に必要な情報は決算書の提出だけに限られず、勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)や、期中の試算表・資金繰り表など、定期的な報告・説明が求められることがあります。LBOでは、これらの資料が「事業計画の前提が実在するか」を検証する材料になるため、準備の有無が審査の体感難易度を大きく左右します。

東芝の事例は中堅企業の事業承継にも参考になりますか?

参考になります。東芝ほどの規模でなくても、TOB(株式公開買付)やスクイーズアウトの考え方、LBO型の資金調達、事業売却による選択と集中は、設計思想としては応用可能です。

にあるとおり、MBOを進める際は、経営陣が潤沢な資金を持っているとは限らず、銀行融資や投資ファンドを組み合わせることが一般的です。その際、資金調達を優先しすぎると支配権構成が変わるだけになり得るため、事業承継の目的(誰が、どの期間、どの事業を、どう引き継ぐか)と資本政策をセットで設計することが実務上のポイントになります。

東芝のM&Aの判断に必要な要点

東芝のM&Aの展望を自社検討に転用する際は、まず「非公開化で説明責任の相手が株主からスポンサー/レンダーへ移る」点を前提に、再編スピードと規律の置き換え(少数株主対応の減少と、コベナンツ・担保等の制約の増加)を整理します。次に、事業売却は金額の大小ではなく、売却後に返済・成長投資へ資金をどう配分し、DSCR等の返済可能性の説明と矛盾しないかで評価軸をそろえることが重要です。実務の次アクションとしては、検討初期から登記事項証明書、直近3決算期分の決算書・税務申告書控え、月次試算表、少なくとも1か月分程度の日繰りの資金繰り表を用意し、銀行が求める「勘定明細レベル」の説明に落とし込みます。あわせて、2023年8月開始の1株4,620円TOBのように、条件提示と手続の確実性が意思決定を前に進める局面があるため、撤退判断のゲート(何が起きたら止めるか)も工程表で管理します。個別案件では、法務・財務・金融機関対応が絡むため、最終的な設計や判断は専門家に相談する前提で進めるのが安全です。



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