人事労務

是正・改善報告書の記入例|欄ごとの書き方と期限内提出の進め方

経営リスクナビ編集部

是正・改善報告書(是正報告書)の提出期限が迫るなか、労働基準監督署から受けた是正勧告書(指導票を含む)に対して、どの欄に何を書けばよいか分からず手が止まりやすい局面です。対応が曖昧なまま提出すると、追加照会や再提出につながり、監督官とのやり取りが長引くほか、社内の再発防止策も形だけになりかねません。押さえるべきは、指摘事項との一対一対応、客観資料の添付、そして将来民事訴訟法第226条の手続等で説明を求められても整合が崩れない書き方です。以下では、是正報告書の判断材料として各欄の書き方と記入例を示します。

是正・改善報告書の位置づけ

是正勧告書との関係と報告の目的

是正・改善報告書(以下「是正報告書」といいます)は、労働基準監督官の臨検監督等を受けて交付された是正勧告書または指導票に対し、企業側が講じた是正内容・改善内容を、所轄の労働基準監督署長等へ提出して説明するための回答文書です。

是正勧告書は労働基準法の違反(例:36協定違反等)が認められる場合に交付され、違反が認められない場合でも行政運用として指導票が交付されることがあります。いずれの場合も、企業としては「何を・いつまでに・どう是正したか(または改善予定か)」を、是正報告書で示すことになります。

また、労災事故が絡むケースでは、是正勧告書等が後日、民事訴訟で証拠化され得る点に注意が必要です。被災労働者が損害賠償請求訴訟を提起した場合、文書送付嘱託の申立て(民事訴訟法第226条)により、提出先である労基署長から裁判所へ是正勧告書等が送付され、安全配慮義務違反を基礎づける証拠として用いられることがあります。したがって、是正報告書は「とりあえず提出する書類」ではなく、後日の説明可能性も見据えて、事実と根拠資料に基づき、簡潔かつ整合的に作成する必要があります。

様式第24号等の全体像と記載欄

是正報告書は、労基署から交付される用紙(様式第24号等)や労働局等の公開様式をベースに作成する運用が多く、法令上「全国一律でこれ」と定まった単一様式があるというより、是正勧告書・指導票の指摘事項と対比できる体裁で整えることが重視されます。

典型的な記載欄(実務での見え方)
  • 宛名:所轄労働基準監督署長(または労働基準監督署長等)
  • 提出年月日:実際の提出日
  • 事業場情報:臨検を受けた事業場の名称・所在地(本社ではなく対象事業場単位)
  • 事業主情報:会社名、代表者職氏名、押印欄(運用上、代表者印が求められることが多い)
  • 一覧欄(対比欄):違反法条項、違反事実(是正勧告書から転記)、是正期日(是正勧告書から転記)、是正年月日、是正状況(企業回答)
  • 添付欄:是正状況を裏づける資料の名称

指導票に対する提出書面は「改善報告書」とされることもありますが、実務上は「指摘に対する回答として、是正内容を記載し提出する」という点で共通します。なお、用語が似ていても、会社法上の法定書類は「監査報告」と呼ばれる(会社法第437条、会社法第442条等)ため、社内文書の題名や保存分類で混同しないよう整理しておくと運用ミスを減らせます。

是正報告書の書き方

各記入欄の意味と書き方の基本

是正報告書は、是正勧告書・指導票に記載された指摘事項をそのまま正確に受け止め、企業側の対応を客観的事実と証拠で示すことが基本です。「反省しています」「今後気を付けます」だけでは、違反状態の解消や改善の実施が読み取れず、追加照会・再提出につながりやすくなります。

欄ごとの実務上の書き方(要点)
  • 宛名欄:交付元の所轄労働基準監督署長名を記載します。
  • 提出年月日:窓口持参日または投函日など、実際に提出する日付に合わせます。
  • 事業場欄:指摘を受けた「事業場単位」で記載し、店舗・工場・営業所など所在地まで明確にします。
  • 代表者職氏名欄:代表権者の職氏名を記載し、押印は所轄の指示・様式に従います。
  • 違反法条項欄:是正勧告書の条文表記を改変せず転記します(例:労働基準法第15条、労働基準法第37条、労働基準法第89条など)。
  • 違反事項欄:是正勧告書・指導票の文言を基本的にそのまま転記し、表現を言い換えて矮小化しないようにします。
  • 是正年月日欄:是正措置が「完了した日」を、日付として特定して記載します。
  • 是正状況欄:いつ、誰が、何を、どの資料に基づき、どのように是正したかを、後日説明可能な粒度で書きます。

労災事故を起点に是正勧告書が交付される場面もあるため、記載内容は「行政対応」だけでなく、将来の民事手続での説明(民事訴訟法第226条の文書送付嘱託等)を意識し、事実・根拠・添付資料の対応関係を崩さないことが重要です。

指摘事項と報告内容の対応付け方

是正報告書では、是正勧告書(または指導票)の指摘事項ごとに一対一で回答を作るのが基本です。監督官は原則として指摘順に確認するため、対応関係が曖昧だと、追加説明の要請や再臨検につながりやすくなります。

対応付けの実務手順
  1. 是正勧告書(指導票)の指摘事項を、条文・項目順のまま一覧化します。
  2. 各項目について、是正期日(勧告書記載)と、自社の是正年月日(完了日)を切り分けます。
  3. 是正状況は「実施済みの事実」と「根拠となる添付資料名」をセットで書きます。
  4. 一つの指摘に複数の対策がある場合は、再発防止策も含めて同一項目内で完結させます。
  5. 指摘文言の改変や論点ずらしを避け、求められた是正に対する直接回答にします。

とくに安全衛生(労災事故を含む)に関連する指摘は、後日の損害賠償局面で「会社が何を認識し、何を改善したか」が争点化し得るため、社内の意思決定記録・教育実施記録等も含め、整合が取れるように整理して記載します。

添付資料の考え方と具体例

添付資料は、是正状況欄で述べた対応が「実際に実施された」ことを、第三者(監督官)に客観的に示すための裏付けです。文章だけで完結させようとすると、事実確認ができず追加提出になりがちです。

指摘類型別の添付資料例
  • 36協定・時間外管理:受付印のある協定届控え、過半数代表者の選出記録、直近の勤怠集計表
  • 割増賃金:再計算明細、賃金台帳写し、振込明細、通帳写し(振込の客観資料として)
  • 労働条件明示:労働条件通知書の写し、受領確認書面
  • 就業規則:受付印のある就業規則届控え、意見書写し、周知記録
  • 健康診断:受診証明、医師意見が記載された個人票控え、事後措置の決定記録

なお、労災保険の手続では、労基署長から報告や文書提出を求められる場合がある旨の定めがあるため、事故対応と是正対応が並行する場面では、提出書類の整合(日時・対象者・事実関係)も意識しておくと実務上の混乱を減らせます。

是正済みと改善予定が混在するときの書き分け基準と記載順序

是正期日までに完了した事項と、期日時点で未完了の改善予定が混在する場合は、完了した事実今後の工程(いつまでに何をするか)を明確に分けて記載します。完了と予定が混ざると、監督官から見て「結局是正できていない」と評価されやすくなります。

書き分けの基準(実務)
  • 「是正年月日」欄に日付を書けるもの:完了した是正(証拠添付が可能)
  • 日付が確定できない/未実施のもの:改善計画として工程表・担当者・目標日を明記
  • 一部完了のもの:完了分の範囲(対象者数・対象部署等)と、残対応の予定日を分けて書く

例として、定期健康診断の未実施が指摘される場面では、健診の実施だけでなく、医師意見聴取まで含めて義務となるケースがあり、労働安全衛生法上、異常所見者への意見聴取は「3か月以内」がポイントになります(労働安全衛生法第66条の4)。このように、法令上の期限要素がある指摘では、「受診完了日」と「意見聴取の実施日(3か月以内)」を分けて示し、未完了分はいつ実施するかを具体化して記載します。

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労働時間・36協定の記入例

36協定未届と残業の記入例

36協定(時間外・休日労働に関する協定)の未届や、協定のない時間外労働が問題となった場合は、「協定の適法化(締結・届出)」と「運用の是正(実態として時間外をさせない仕組み)」をセットで記載します。36協定違反など労働基準法違反が認められると是正勧告書が交付され得ます。

是正状況欄の記入例(要素分解)
  • 違反法条項:是正勧告書記載の条文を転記(例:労働基準法第36条関連、労働基準法第32条等)。
  • 協定手続:管理監督者を除いた労働者による民主的手続で過半数代表者を選出し、時間外・休日労働協定を締結しました。
  • 届出:締結した協定届を所轄労基署へ提出し、受付印のある控えを保管しました。
  • 労働時間把握:タイムカード・勤怠システム・PCログ等の客観資料で実労働時間を把握する運用へ切替えました。
  • 再発防止:協定の限度を超える申請は承認しないルールとし、申請・承認権限を明確化しました。
添付資料例
  • 受付印のある36協定届の控え
  • 過半数代表者の選出案内・投票集計等の記録
  • 改善後の直近勤怠実績(一覧)

時間外・休日労働削減の記入例

時間外・休日労働の削減を求められた場合は、「やりました」という宣言ではなく、時間外・休日労働時間に関する実績を出せる管理設計があることを示すのが実務上重要です。にも「時間外・休日労働時間の削減」が論点として挙げられています。

是正状況欄の記入例(書きぶり)
  • 違反事項:是正勧告書に記載された「限度時間超過」「特別条項の運用不備」等の事実を転記します。
  • 管理ルール:残業の事前申請制を厳格化し、無申請残業の取扱い(是正指導・承認フロー)を規程化しました。
  • 業務措置:業務の平準化・担当再配置・会議体の縮減等、実施した施策を列挙します。
  • モニタリング:部門長へ月次の時間外実績を通知し、閾値到達前に是正できる運用に変更しました。
添付資料例
  • 改善後の勤務実績一覧(時間外・休日の集計が分かるもの)
  • 申請ルールの通達文・規程改定の新旧対照

過半数代表者の選び直しが必要なケースと報告書への反映方法

過半数代表者の選出が不適切(使用者指名、管理監督者の選任、選出目的の不開示等)であった場合は、協定の前提が崩れるため、是正報告書では「再選出の手続」と「新協定の再締結・再届出」を時系列で示します。

報告書への反映手順(再選出ケース)
  1. 違反事項欄に「適正な過半数代表者との協定締結ができていなかった」旨を、是正勧告書どおり転記します。
  2. 是正状況欄に「36協定締結の目的」を明示して立候補を募ったことを記載します。
  3. 投票等の民主的手続により、管理監督者を除く労働者の過半数の支持を得た代表者を選出した経緯を記載します。
  4. 新代表者と労使協議し、新たに締結した36協定を所轄労基署へ再届出した事実を記載します。
添付資料例
  • 選出の案内文書(目的明示が分かるもの)
  • 投票結果・集計結果等の記録
  • 受付印のある新36協定届の控え

労働条件・賃金の記入例

労働条件の書面明示の記入例

労働条件の書面明示の不備は、採用・雇入れ時点の基本統制の問題として見られやすいため、是正報告書では「法定記載事項を満たした様式へ整備したこと」と「未交付者への再交付を完了したこと」を分けて書きます。

労働条件明示義務は労働基準法第15条に根拠があり、就業の場所に関する事項等が問題となります。テレワークについて、場所が特定される場合はその場所を明示する必要があり、特定できない場合は自宅・サテライトオフィス等の「可能な場所」を明示することが望ましいとされています(労働基準法施行規則5条1項1の3号の考え方)。

是正状況欄の記入例(労働条件通知書)
  • 違反事項:雇入れ時に労働条件を書面交付で明示していなかった旨を転記します。
  • 様式整備:就業場所(テレワークを含む)・業務内容等の明示欄を含むひな形へ改定しました。
  • 再交付:既雇用の未交付者へ説明のうえ書面を再交付し、受領確認を取得しました。
  • 再発防止:採用決裁フローに「交付・受領確認」を組み込み、交付漏れが起きない運用に変更しました。
添付資料例
  • 改定後の労働条件通知書(様式)写し
  • 受領確認書面(押印・署名等)

割増賃金未払いの記入例

割増賃金未払い(いわゆる賃金不払残業)は、過去に遡った是正が必要になりやすく、是正状況欄では「再集計の方法」「不足額の算定根拠」「支払完了の証拠」をセットで提示します。

割増賃金は労働基準法第37条に基づくため、条文の指摘がある場合は是正勧告書の記載をそのまま転記し、算定の前提を勝手に変更しないことが重要です。

是正状況欄の記入例(未払い清算)
  • 再集計:タイムカードやPCアクセスログ等の客観資料に基づき、対象者全員の実労働時間を再計算しました。
  • 算定根拠:就業規則の賃金規程・賃金台帳の支給項目に照らし、割増基礎の取扱いを整理しました。
  • 支払:算出した未払い割増賃金を、対象者の指定口座へ振込で支給しました。
  • 再発防止:勤怠の締め処理・承認ルールを見直し、締め後修正の統制(理由記録・承認者固定)を導入しました。
添付資料例
  • 不払い額の再計算明細
  • 支給後の賃金台帳写し
  • 銀行振込明細および通帳写し(支払の客観資料)

不足賃金の遡及支払いで金額差異が出たときに確認すべき計算資料

不足賃金の遡及支払いで、社内の当初算定と監督官の見解の間で金額差異が生じた場合は、原因を「資料」「ルール」「計算」へ分解して検証し、その結果を是正状況欄に簡潔に記載します。

差異が出たときに確認する計算資料(例)
  • 勤怠原資料:タイムカード原本、入退館記録、PCログ等
  • 賃金資料:賃金台帳、給与明細、支給控除一覧
  • ルール資料:就業規則の賃金規程、労働条件通知書
  • 計算資料:当初計算書、修正後再計算明細、端数処理の根拠

是正状況欄には、例えば「当初は特定手当を割増基礎から除外していたが、賃金規程の定義に照らし除外できないと整理し、再計算した」など、差異の原因と修正方針を明示します。添付では、修正前後の計算書を並べた比較表を付け、監督官が追える形にすると確認が短時間で済みやすくなります。

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就業規則・健康診断の記入例

就業規則の作成届出周知の記入例

就業規則の未作成・未届出・未周知は、どれか一つだけ対応しても是正完了になりにくいため、「作成→意見聴取→届出→周知」を一連で記載します。

根拠条文として、就業規則の作成・届出義務は労働基準法第89条、周知は労働基準法第106条が中心となるため、是正勧告書の記載に沿って転記します。

是正状況欄の記入例(就業規則)
  • 作成:法令に準拠した就業規則を作成しました。
  • 意見聴取:過半数代表者から意見書を取得しました。
  • 届出:意見書を添付して所轄労基署へ届出し、受付印のある控えを保管しました。
  • 周知:グループウェア掲載・備付け等により、労働者が常時閲覧できる状態にしました。
添付資料例
  • 受付印のある就業規則届の控え
  • 意見書写し
  • 周知記録(掲載日が分かる画面印刷、備付け写真等)

定期健康診断と医師意見の記入例

定期健康診断の指摘では、受診させるだけでなく、異常所見者に対する医師の意見聴取と、その意見を踏まえた就業上の措置までがセットで確認されやすい領域です。

根拠条文として、定期健康診断は労働安全衛生法第66条、異常所見者に関する医師の意見聴取は労働安全衛生法第66条の4で、のとおり3か月以内の意見聴取がポイントです。

是正状況欄の記入例(健診・医師意見)
  • 受診:対象労働者全員の定期健康診断を実施(受診完了)しました。
  • 意見聴取:異常所見者について、医師(産業医等)の意見を3か月以内に聴取し、個人票の意見欄へ記載しました。
  • 事後措置:医師意見に基づき、労働時間短縮や就業場所変更等の措置を決定・実施しました。
添付資料例
  • 受診証明(受診日が分かるもの)
  • 医師意見が記載された個人票の控え
  • 事後措置の決定記録(個人情報の取扱いに留意し必要最小限で)

常時10人未満・10人以上で対応が分かれる就業規則是正の線引き

就業規則の届出義務は「企業全体」ではなく「事業場単位」で、常時10人以上かどうかで判断します(労働基準法第89条)。にも「常時10人以上の従業員を雇用する場合は作成し届出が必要」とあるため、是正報告書では人数カウントの根拠を示すと説明が通りやすくなります。

是正状況欄に入れるとよい整理ポイント
  • 事業場単位の人数:パート・アルバイト・契約社員等を含めた常時使用労働者数を確認しました。
  • 義務発生時点:常時10人以上に達した時点を特定し、以後の届出が必要であることを踏まえて作成・届出しました。
  • 適用範囲:複数拠点がある場合、独立性の有無や適用単位を整理し、規程の適用範囲を明記しました。
添付資料例
  • 事業場ごとの労働者名簿写し(人数根拠)
  • 受付印のある就業規則届の控え

提出と改善の実務

提出期限と提出方法その後の流れ

是正報告書は、是正勧告書・指導票に記載された提出期限(是正期日)までに、所轄の労働基準監督署へ提出します。提出が遅れると、監督官側の事実確認が厳格化しやすく、追加報告や再臨検の契機になり得ます。

提出実務の手順(控え管理まで)
  1. 是正勧告書の各指摘について、是正年月日と添付資料を確定します。
  2. 是正報告書を作成し、是正勧告書の条文・事実の転記誤りがないか突合します。
  3. 添付資料を「指摘項目ごと」に並べ替え、見出し(資料番号等)を付けます。
  4. 署窓口へ持参して受付印を受けるか、配達記録が残る方法で郵送し、発送証明を保管します。
  5. 提出後に照会が来た場合に備え、提出物一式の控えを社内で保存します。

提出後、内容と証拠が明確であれば指導は一区切りとなることが多い一方、記載が曖昧な場合は追加資料の提出や再臨検が行われ得ます。労災事故が絡む案件では、労災保険手続の文書提出要請と並行することもあるため、提出した文書の整合性(日時・対象者・措置内容)は特に崩さないよう管理します。

表現の工夫とNGな書き方

是正報告書の文章は、監督官が「事実確認」をするための文章です。自己弁護や感情的な表現は避け、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)で短く書き切ります。

NGになりやすい表現例
  • 「今後注意します」「善処します」など、是正完了の事実が読み取れない表現
  • 「監督官の指摘は誤解です」など、対立を助長しやすい表現(事実関係の訂正が必要なら根拠資料とともに冷静に記載)
  • 事実と異なる内容の記載(虚偽の改善報告)

虚偽の報告は、行政対応として致命的なだけでなく、労災事故が絡むケースでは、後日の民事手続で不利な事情として扱われるおそれもあります(文書送付嘱託(民事訴訟法第226条)により提出文書が証拠化され得るため)。

実務上の「書き方の型」
  • 「〇年〇月〇日、〇〇(担当部署)が、〇〇(資料)に基づき、〇〇を実施した」
  • 「是正年月日:〇年〇月〇日(支払完了日/届出日/運用開始日など、完了の定義をそろえる)」
  • 「添付資料:賃金台帳写し、受付印のある届出控え、投票集計結果、個人票控え等」

提出前に経営者・人事・法務で誰が何を確認するかの社内チェック順

提出前チェックは、「転記の正確性」「是正の事実」「証拠の整合」を段階的に潰すのが目的です。特に労災事故が関連する是正では、提出文書が将来の紛争で証拠として扱われ得るため(民事訴訟法第226条)、社内の説明可能性まで含めて確認します。

社内チェックの順序(役割分担)
  1. 現場・人事労務:是正勧告書の全項目について、転記誤りがないか、是正年月日が特定できているか、添付資料が項目ごとに揃っているかを確認します。
  2. 法務・社労士・弁護士等:条文の当てはめ(例:労働基準法第15条、労働基準法第37条、労働基準法第89条、労働安全衛生法第66条の4)が不自然でないか、虚偽・誤記・論点ずれがないか、再発防止策が実運用に落ちるかを確認します。
  3. 経営者:是正内容が経営判断と整合しているか、再発防止に必要な権限・予算・人員配置が裏付けられるかを確認し、最終的に押印・提出を承認します。

よくある質問

是正・改善報告書は手書きでもよいですか?

手書きでも問題ありません。提出媒体や作成方法自体が本質ではなく、是正勧告書・指導票に対する回答として、事実の正確性客観資料による裏付けがあるかが実務上の評価ポイントです。

ただし、後日の照会対応や社内保管、添付資料との突合、そして労災事故が絡む場合に文書が証拠化され得る点(文書送付嘱託:民事訴訟法第226条)を踏まえると、読みやすさ・修正履歴・控え管理の観点から、PC作成を選ぶ企業も多いです。

期限までに是正を完了できない場合はどうしますか?

期限までに完了できない場合は、無断で超過せず、期日前に所轄の担当監督官へ連絡し、進捗と見込みを説明します。特に安全衛生関連では、法令上「3か月以内」など期限要素が絡む指摘(例:異常所見者への医師意見聴取(労働安全衛生法第66条の4))もあるため、遅延理由と代替工程を具体化することが重要です。

実務対応(未完了時)
  1. 期限前に、完了済み項目と未完了項目を切り分け、監督官へ進捗を説明します。
  2. 未完了項目について、遅延の合理的理由と完了見込み日、工程(担当者・実施日)を提示します。
  3. 完了済み分は是正報告書として先に提出し、未完了分は中間報告として別途追補提出する運用を相談します。
  4. 合意した期日までに残項目を完了し、証拠資料を添えて最終報告します。

取引先向け是正報告書に流用できますか?

労基署向けの是正報告書をそのまま取引先向けに流用するのは避けた方が安全です。労基署向けは条文違反の是正と証拠提示に特化しており、労災事故が絡む場合には、当該文書が後日、訴訟で証拠として扱われ得ること(文書送付嘱託:民事訴訟法第226条)も踏まえると、開示範囲のコントロールが重要になります。

取引先向けは、相手の目的(供給安定、ガバナンス、再発防止体制等)に合わせて、個人情報・機密情報を整理し、必要な範囲で再構成して作成するのが実務的です。

是正・改善報告書への対応で次にすべきこと

是正・改善報告書は、是正勧告書・指導票の指摘を一対一で受け、是正年月日(完了日)と添付資料で「実施済みの事実」を示すことが実務の基本です。記載が抽象的だと追加照会や再提出につながりやすいため、5W1Hで簡潔に書き切り、指摘項目ごとに証拠を並べ替えて突合できる状態に整えます。安全衛生を含む案件では、民事訴訟法第226条の手続等で文書が証拠化され得る点も踏まえ、事実・根拠・添付資料の対応関係を崩さない運用が重要です。未完了の改善が残る場合は、完了分と工程(担当者・目標日)を切り分け、期日前に所轄へ相談する判断軸を持つと混乱を減らせます。個別の事案では、法務・社労士・弁護士等と役割分担し、条文転記(例:労働安全衛生法第66条の4の3か月以内など)や記載内容の整合を最終確認したうえで提出してください。



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