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不起訴不当とは?検察審査会の議決後の再捜査と起訴の可能性を解説

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自社が被害を受けた刑事事件で検察官が不起訴処分を下した場合、その判断に不満を抱くことは自然なことです。このような状況で、検察官の判断の妥当性を国民の視点から審査する「検察審査会」への申立ては、事態を打開する有効な手段となり得ます。この記事では、検察審査会の議決の中でも特に「不起訴不当」が出された後の再捜査プロセス、起訴に至る確率、そして最終的な結論がどうなるのかについて、手続きの流れに沿って詳しく解説します。

目次

検察審査会とは?申立てから議決までの手続き

国民の視点で検察官の不起訴判断を審査する組織の役割

検察審査会は、検察官が独占的に有する起訴の権限(起訴独占主義)が適切に行使されているかを、国民の視点で審査する組織です。刑事事件を裁判にかけるかどうかの判断は検察官に委ねられており、証拠に基づき有罪の確信が得られた場合に起訴します。しかし、犯罪の事実が認められても、様々な事情を考慮して起訴を見送る(起訴便宜主義)こともあります。

このような検察官の不起訴処分に被害者などが納得できない場合に、選挙権を持つ国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、その判断が妥当であったかを非公開で審査します。この制度は、司法に民意を反映させ、検察官の判断の公正性を担保する重要な役割を担っています。

検察審査会に申立てができる人と対象となる事件の範囲

検察審査会への申立ては、誰でも行えるわけではなく、申立人となれる人の範囲や対象となる事件が定められています。

審査を申し立てできる人
  • 犯罪の被害者本人
  • 被害者の配偶者、直系の親族、兄弟姉妹(被害者が死亡した場合など)
  • 犯罪事実を捜査機関に申告し、処罰を求める意思表示をした告訴人
  • 犯罪事実を捜査機関に申告した告発人
審査の対象となる事件・ならない事件
  • 対象となる事件: 検察官が不起訴処分とした、窃盗、詐欺、傷害、交通事故などのほとんどの刑事事件
  • 対象とならない事件: 捜査が継続中の事件、すでに裁判が始まっている事件、内乱に関する罪など一部の特殊な事件

申立書の提出から審査、議決までの具体的なフロー

審査申立てから議決までは、以下の手順で進められます。申立てに際して費用はかかりません。

審査申立てから議決までの流れ
  1. 申立人が、管轄の検察審査会事務局(全国の地方裁判所内などに設置)へ審査申立書を提出します。
  2. くじで選ばれた11人の検察審査員による検察審査会議が非公開で開催されます。
  3. 検察庁から取り寄せた捜査記録などを精査し、不起訴処分の妥当性を審査します。
  4. 必要に応じて、弁護士である審査補助員から助言を受けたり、証人尋問や実地見分を行ったりします。
  5. 審査を尽くした後、審査員の多数決により「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」のいずれかの議決を行います。
  6. 議決の結果が申立人や検察庁に通知され、検察審査会の掲示場にその要旨が7日間掲示されます。

申立ての説得力を高める証拠の整理と意見陳述のポイント

検察審査員に不起訴処分の不当性を理解してもらうためには、客観的な証拠を整理し、論理的な主張を行うことが重要です。

説得力を高めるためのポイント
  • ドライブレコーダーの映像や事故現場の写真など、状況を客観的に示す証拠を提出する。
  • 負傷の程度を示す診断書や、治療経過に関する資料を添付する。
  • 捜査段階で見過ごされた可能性のある目撃者の証言などを新たに収集・提出する。
  • 申立書では、検察官の判断のどの点が不合理であるかを具体的に指摘する。
  • どの証拠が軽視されているのか、あるいは誤って評価されているのかを明確に主張する。

検察審査会の3つの議決:「不起訴不当」「起訴相当」「不起訴相当」の違い

検察審査会が行う議決は、主に「不起訴不当」「起訴相当」「不起訴相当」の3種類に分けられます。それぞれ成立要件や議決後の効力が異なります。

議決の種類 成立要件 議決の効果と検察官の義務
不起訴不当 審査員11人中6人以上の賛成(過半数) 検察官は再捜査・再判断の義務を負うが、再度不起訴でも手続は終了する
起訴相当 審査員11人中8人以上の賛成(特別多数) 検察官は再捜査・再判断の義務を負い、再度不起訴なら再審査へ進む可能性がある
不起訴相当 審査員11人中6人以上の賛成(過半数) 検察官の不起訴処分が妥当とされ、手続は終了する
検察審査会の3つの議決の比較

「不起訴不当」:検察に再度の捜査と慎重な判断を促す議決

「不起訴不当」は、検察官の不起訴処分について、さらに捜査を尽くした上で再度慎重に判断すべき、と結論付ける議決です。この議決は、審査員11人のうち過半数(6人以上)の賛成で成立します。

この議決に強制力はありませんが、通知を受けた検察官は、議決の趣旨を尊重して事件を再捜査する法的義務を負います。しかし、再捜査の結果、検察官が再び不起訴と判断した場合、その判断に対して再度審査を申し立てることはできず、刑事手続きは終了します。

「起訴相当」:起訴を強く求め、強制起訴につながる可能性のある議決

「起訴相当」は、検察官の不起訴処分は誤りであり、起訴して裁判にかけるべきである、という検察審査会の強い意思を示す議決です。成立には、審査員11人のうち3分の2以上にあたる8人以上という特別多数の賛成が必要です。

この議決を受けた検察官は再捜査を行い、再度起訴・不起訴の判断をします。もし検察官が再び不起訴とした場合、事件は2回目の審査(再審査)に進む可能性があります。そこで再び起訴すべきとの議決(起訴議決)がなされると、被疑者は検察官の意思に関わらず強制的に起訴されます。

「不起訴相当」:検察官の不起訴処分を妥当とする議決

「不起訴相当」は、検察官の不起訴処分が妥当であると検察審査会が判断した場合の議決です。この議決は、審査員11人のうち過半数(6人以上)の賛成で成立します。

検察審査会が証拠関係や様々な事情を総合的に検討した結果、検察官の判断を是認したことを意味します。この議決が出されると、その事件に関する審査手続きはすべて終了し、不起訴処分が確定します。これにより、被疑者がその事件で刑事責任を問われることは基本的になくなります。

「不起訴不当」議決後の再捜査プロセスと起訴の可能性

議決を受けた検察庁における再捜査の開始と対応

「不起訴不当」の議決通知を受けた検察庁は、法令に基づき、対象事件の再捜査を開始する義務を負います。議決書には、なぜ不起訴が不当と判断されたのか、どのような捜査が不足しているかといった具体的な意見が記されています。

担当検察官はこれらの指摘を真摯に受け止め、上司の指揮監督のもと、組織として慎重に再検討を進めます。再捜査を終えて処分を決定した際には、その結果と理由を検察審査会に通知しなければならず、議決を無視することは許されません。

再捜査で何が行われるか(証拠の再検討・追加の取調べなど)

再捜査では、議決で指摘された疑問点を解消するため、様々な角度から補充捜査が行われます。

主な再捜査の内容
  • 当初見落としていた証拠や、評価が不十分だった証拠の再検討
  • 被疑者や関係者に対する追加の事情聴取
  • 新たな目撃者の捜索や、防犯カメラ映像などの再解析
  • 専門家による鑑定の再実施
  • 事件現場での実地見分の再実施

再捜査後の検察官による最終判断(起訴または再度不起訴)

再捜査を尽くした結果、検察官は改めて起訴するか、再び不起訴とするかの最終判断を下します。再捜査によって裁判で有罪を立証できるだけの証拠が揃ったと判断されれば、当初の判断を覆して起訴します。

一方、追加の捜査を行っても有罪の確証が得られなかった場合は、検察官は再度不起訴の処分をします。この場合、検察官はその理由を検察審査会に報告し、一連の刑事手続きはすべて終了・確定します。「不起訴不当」の議決に対しては、これ以上の不服申立てはできません。

「不起訴不当」議決を経て起訴に至る確率の実際

統計上、「不起訴不当」や「起訴相当」の議決を経て、検察官が起訴に至る確率は決して高くありません。公表されているデータによれば、議決後に検察官が起訴したケースは全体のおおむね1割程度とされています。これは、検察官が最初の段階で有罪立証のハードルを考慮して厳格に判断しているため、決定的な新証拠がない限り判断を覆すのが難しいことを示しています。

しかし、確率は低くとも、国民の視点による議決がきっかけで重大事件が起訴され、有罪判決に至った事例も存在し、制度の意義は大きいと言えます。

「不起訴不当」議決後、再捜査の過程で被害者側が協力できること

再捜査の段階で、被害者や申立人側が協力することで、検察官の判断に影響を与えられる可能性があります。

被害者側ができる協力の例
  • 事件に関する日記やメモ、録音データなど、未提出の資料を新たに提供する。
  • 検察官からの再度の事情聴取には誠実に応じ、記憶を整理して詳細に供述する。
  • 捜査の進展に役立つ新たな情報を入手した場合、速やかに弁護士を通じて検察官に伝える。
  • 被疑者からの謝罪や示談の状況など、事件後の経緯を正確に報告する。

再捜査後も不起訴となった場合の次の展開と強制起訴制度

2度目の不起訴処分に対する検察審査会の再審査

検察審査会が「起訴相当」と議決したにもかかわらず、検察官が再捜査の末に再び不起訴処分とした場合、または一定期間内に処分をしなかった場合、事件は2度目の審査(再審査)へと進みます。

この再審査は、より厳格な手続きで行われ、必ず弁護士である審査補助員が関与し、法的な観点から審査員をサポートします。検察官の判断が本当に妥当であったかを国民の視点で最終的に判断する、極めて重要な手続きです。

再審査で「起訴相当」となれば強制起訴の手続きへ

再審査の結果、再び審査員11人のうち8人以上の多数決で起訴すべきとの結論(起訴議決)が出されると、その議決には法的な拘束力が生じ、検察官の判断とは無関係に被疑者は強制的に起訴されます。これは、検察官のみが起訴権限を持つ「起訴独占主義」の唯一の例外です。

強制起訴が決定すると、裁判所が選任した指定弁護士が検察官の役割を担い、刑事裁判の公判を維持します。これにより、検察が起訴を見送った事件であっても、国民の判断によって公開の法廷で真実を明らかにする道が開かれます。

不起訴不当に関するよくある質問

検察審査会への申立てに費用はかかりますか?

申立て自体に費用は一切かかりません。検察審査会事務局への相談も無料です。ただし、申立書の作成や証拠収集などを弁護士に依頼した場合の弁護士費用は、自己負担となります。

申立てにあたり、弁護士への依頼は必須なのでしょうか?

弁護士への依頼は法律上の義務ではありません。申立人ご自身で手続きを進めることも可能です。しかし、不起訴処分の理由には法的な論点が含まれることが多く、説得力のある主張を行うためには刑事手続きに関する専門知識が不可欠です。そのため、起訴の可能性を高めるには、弁護士に依頼することが強く推奨されます。

「不起訴不当」後の再捜査には、どのくらいの期間がかかりますか?

事件の複雑さにもよりますが、一般的には数か月から半年程度の期間を要することが多いです。関係者の再聴取や証拠の再検討など、慎重な捜査が求められるため、一定の時間が必要となります。

再捜査の結果、再び不起訴になった場合、もう争うことはできないのでしょうか?

議決の種類によって異なります。 「不起訴不当」の議決後に検察官が再び不起訴とした場合、その事件について再度審査を申し立てることはできず、刑事手続きは確定的に終了します。一方、「起訴相当」の議決後に再び不起訴となった場合は、2度目の審査(再審査)に進み、強制起訴に至る可能性があります。

まとめ:不起訴不当の議決を理解し、次の行動に備える

本記事では、検察審査会の「不起訴不当」議決後の手続きを中心に解説しました。検察審査会は、検察官の不起訴処分に対して国民の視点から再考を促す重要な制度です。「不起訴不当」の議決は検察官に再捜査を義務付けますが、その後の最終判断は再び検察官に委ねられ、再度不起訴となれば手続きは終了します。一方で、より起訴を強く求める「起訴相当」議決の場合は、強制起訴に至る道も残されています。統計上の起訴率は低いものの、議決の意義を正しく理解し、再捜査の過程で新たな証拠を提供するなど、取りうる手段を尽くすことが重要です。不起訴処分に不服がある場合は、これらの手続きを念頭に置き、弁護士などの専門家と連携しながら最善の対応を検討することが求められます。

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